さて、メヘレンの旧市街をもうひと巡りと思うところながら、

ふと気付けば聖ロンバウツ大聖堂 や隣接するマルクト広場 の辺りには

さまざまなモニュメントや彫像があるもので、その辺に目を向けてみることに。


イエス像@聖ロンバウツ大聖堂


まあ、大聖堂の庭にイエス像があるのは何の不思議もありませんし、

こちらも単純に教会のそばだからと思ってしまうところが、解説を読むと話は些か違って…。


Gedenkteken boerenkrijg@聖ロンバウツ大聖堂


「Gedenkteken boerenkrijg」とは「農民戦争記念碑」とでもいうことになりましょうか。

1798年、革命下のフランス軍がメヘレンに侵攻、これに抵抗した農民勢力がいたのだそうで。

こうした中、フランスへの反逆罪で41名が処刑され、穴をほった中に投げ込まれたという、

その集団墓地が2010年の発掘調査で大聖堂の庭から発見されたということなのですね。


フランス革命ばかりではありませんけれど、理想を掲げることは良しとして

その理想を実現するためには犠牲を厭わぬと盲信的に突き進むようなことは

あってはならんことですよねえ。


Rik Wouters「Nel」

もうひとつ、大聖堂近くにあるのがこの彫刻。「Nel」というタイトルの意味はちと不明ながら、

作者フォーヴィスムの画家としても知られるリク・ワウテルス。

絵の方はアントウェルペンの美術館や日本でもベルギー作家を取り上げた展覧会で

作品は見たことがありますなあ。


と、今度はマルクト広場方面に目を転じてみることに。まずは、先日の写真では

聖ロンバウツ大聖堂の手前に小さく見えていただけのマルグリット・ドートリッシュ の像を改めて。


マルグリット・ドートリッシュの像


これはこれで実に凛々しい姿なのですが、実はこの像を遠目に離れて

眺めやるかのようにあるのがこちらの像なのですね。


マーガレット・オブ・ヨークの像


マルグリットの育ての親であるマーガレット・オブ・ヨークの像。

養母とはいえ、市民に愛されたマルグリットが自慢でもあるとともに、

常に目を注いでおきたい心配さを隠せないといったところでありましょうか(全くの想像ですが)。


と、マルクト広場を取り囲む建物群はかつての市民の繁栄の証しでもあったりするわけで、

職業別に「ああ、なるほど」という飾りが屋根のてっぺんにのっかっていることがありますね。

これなど肉屋さん、あるいはその同業組合の建物なのでしょう。

昔のものとはいえなかなかにリアルな造形です。



ところで、先のリク・ワウテルスはメヘレン生まれなのですが、

どうやら芸術家グループの仲間でもうひとり、エルネスト・ワイナンツという人もご当地出身。

作品はマルクト広場近くと別の場所(ヤン教会そば)で見かけました。




いずれも「母(Moeder)」をタイトルに持っていますので、

家族の姿を写したりが得意なのかと思ったところが、後から知ってみれば

メヘレン駅前にこちらの像もまたワイナンツの作であるということなのですなあ。



駅前に鉄兜の胸像とはどうした云われかと思うところながら、

これがベルギー国王アルベール1世を写したものとなりますと、

その姿の意味も偲べようかというものです。


20世紀初頭の激動期に在位(1909-1934)したアルベール1世は

大国に挟まれたベルギーにあって第一次大戦のときにもドイツの圧力に屈しなかった国王と、

国民の記憶に刻み込まれているそうでありますから。


とまあ、なんでもかんでも盛り込んでしまった話になりましたが、

通りすがりに見かけた彫像などにも当然ながら様々な意味や意図があるわけで、

これも町を知る手掛かりということになりましょうね。


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