思いがけずも長くなってしまったシュルレアリスム@横浜美術館 のお話。
解説展示にあった「11の標語」をたどりながら作品を見て回ったことを振り返りましたが、
パシャパシャと写真に収めたものの、これまでで触れてられなかった作品を落ち穂拾いしておこうかと。
展示解説の最初のところで「シュルレアリスムは抽象ではない」とあって、
そこから思い巡らせば「ふむふむ、なるほど…」とは思ったですが、
このロベルト・マッタの作品あたりを目の前にすると「うむぅ」と揺らぎますなあ。
タイトルが「コンポジション」と言われると思い出すのはカンディンスキー で、
見た目の印象も近いような。抽象か具象か、単純には割り切れないのでしょうなあ。
こちらはイヴ・タンギーの作品。
ダリを思わせるふうですが、ダリよりは癖がなく「ああ、シュール!」という印象にぴったりかと。
タイトル付けもダリが妙に哲学的っぽさを醸すに対して詩的な感じを受けますね。
ちなみにこの作品のタイトルは「風のアルファベット」です。
と、いかにもシュールなというイメージで、日本人による作品をひとつ。
浜田知明による版画でタイトルは「愛の歌」です。
浜田作品は、しばらく前になりますが、神奈川県立近代美術館・葉山館で展覧会を見、
自らの戦争体験をもとに描いた「初年兵哀歌」のシリーズなどが印象に残っておりますが、
こちらはまた全く異なる世界。こういう方向でも描いていたのですなあ。
と、シュルレアリスムは絵画作品ばかりでないというところから、こんな作品を。
マン・レイが作った「不滅のオブジェ」(これがタイトル)です。
片目があるだけで「プロビデンスの目」を思い出させるのは欧米方面ではなおのことでしょうか。
しかも三角形と組み合わされることが多い中で、メトロノームは形がまさに三角形でもある。
となれば「やっぱり」と思うところでして、そうした潜み(というにははっきりしてますが)ゆえの
「不滅のオブジェ」というわけですなあ。
ただ、メトロノーム=聴覚と目=視覚との兼ね合いの中に意図を探ることもできそうですね。
これはいかにもエルンストなデカルコマニー全開の一作。
「少女が見た湖の夢」を描いたと言われると
「どういう夢であったか」と具象的な手掛かりを探してしまうところかと。
実際、模糊とした中にいろいろと形が見出せたりもする(見出せた気になる)ものですから
ひとり合点しそうですけれど、そうした読み解き方を試みること自体
エルンストの術中にはまったと考えるべきでありましょうか。
作品のベースにあるのは偶然ですから。
というふうに、するめを味わうにも似たシュルレアリスムと対峙するお楽しみですが、
さすがにこの辺で。
そうそう、最後の最後にこれもシュルレアリスム作品というのかなとは思うも、
ポートレート写真としてお気に入りの一枚を。
マン・レイが撮った「ヴェールをして座るキキ」、これを締めくくりといたしましょう。