と、武蔵野美術大学美術館 に足を運んだときには
こちらにも立ち寄ってみるというのが民俗資料室ギャラリー でありまして、
このたびは「しめかざり―祈りと形―」という展示が開催中なのでありました。
お正月の門口を飾る「しめ飾り」ですけれど、
フライヤーの写真ではずいぶんと凝った捻りでできていると見えるものの、
「しめ飾りってもっと賑々しいものなのでは…」と思うところです。
エビやみかん(の模型)が載っていたり、紅白のひらひらが垂れていたり。
まあおめでたものですから本来はそうであるものの、
そのとおりに展示してしまうと土台になっている藁細工の妙が分かりづらいであろうと、
このときばかりは化粧を落としてすっぴん勝負の「しめ飾り」たちなのでありました。
ところで、「しめ飾り」のルーツが神社で見かける「しめ縄」にあることは想定内でありましょう。
縄を張った向こうとこっちで聖と俗の世界が分かれるという境界線の印である「しめ縄」です。
これをお正月に招じ入れる歳神様のいる内と外に分ける境界として、
神社でもないのに縄を張ったのがだんだんと飾りを賑やかに独自路線をたどったのが
「しめ飾り」でありましょう。
「しめ飾り」という言葉自体、江戸期のものと言いますから、それまでの戦国の世とも違って
正月の華やかを競い合うような余裕が江戸期には生まれたてなことでしょうか。
という「しめ飾り」ですが、お正月に迎えた歳神様がやがてお帰りになるころ、
しめ飾りは「どんど焼き」で燃やされて使命を終える。
まあ、毎年新たな心持ちで歳神様を迎えるのに
「しめ飾り」の使い回しはあり得ないことだったのわけですね。
今でも正月の玄関先には「しめ飾り」のさがる家は多く見られますけれど、
こうした神事的要素でもって飾るというより、正月らしい風物てな受け止め方かもしれません。
と、「しめ飾り」は役目を終えると燃やされるべく作られていますから、
これをコレクションするというのは簡単ではないようす。
そうした点で全国から特徴ある「しめ飾り」を集めて展示するというのはレアもののようで。
とりわけ、稲藁から作り出されたさまざまな造形を見ますと、
工夫に工夫を凝らした成果なのだなと思うわけで、
おそらくは農民が編み出した技術かとも思いますが、大したものだなと思うところでして。
シンプルに「しめ縄」の発展系といったふうなものがあるかと思えば、
こんな凝った造作もあるのですよね。
もちろん形作られるのは縁起もので、上は鶴をかたどったものでありますね。
「鶴は千年」、長寿のしるしというわけです。
下は米俵を積んだ宝船ということになりましょうか。
米俵だけでも「五穀豊穣」を示しておりましょうに、それが宝船に載っているとなれば、
めでたいめでたい代物ということでありましょう。
とまあ、昔の人にとっては願いを込めたものであるからこそ、
手をかけ、ひまをかけて瑞兆を作り上げて飾ったわけですが、
今は効果があろうはずもないく「科学的」に分かっていると言いますか。
昔の人の素朴さをしみじみ思う「しめ飾り」なのでありました。