ということで、カールスルーエの美術館
の別館オランジェリーにやってきました。
大きな(ことのほか天井が高い)空間に20世紀絵画
がたっぷり詰まっておりましたですよ。
まずはヴラマンク(1876-1958)が描いた城のある風景(1906年)ですけれど、
目にする機会が多い雪景色の、それが必ずしも純白でない、
土にもまみれたリアルな世界の激しい黒、灰、白であったりするさまとは
大いに異なる明るい色彩。これもまたヴラマンクですなあ。
続いてロベール・ドローネー(1885-1941)が描くとこうなってしまうエッフェル塔(1909/10年)。
抽象画家として知られるドローネーも若い頃にはキュビスムを試していたのですな。
昔、少年雑誌の付録に付いてきた厚紙を切り抜いて組み立てる塔の平面図みたいだなと
思ったりしましたですよ。
お次はエミール・ノルデ(1867-1956)。
家と教会のある風景(1916年)を描いていますけれど、やはり主役は空でしょうなあ。
こういう色遣いで空を描き出すというのも稀ではないかと思うところながら、
一天俄かに掻き曇り…といったときに、退場を強いられつつある陽光が
雲の向こうから存在感を主張している場面としてありそうな光景ではありませんか。
こちらはキルヒナー
(1880-1938)のダンスを踊る女性像(1910/20年)。
キルヒナーは2015年に北ドイツ
でたぁくさん見てきましたですが、
色彩はいかにもであるものの、この作品のように楽しそうな姿が描かれていることには
いささかびっくり。よほどに心身の状況が良かったんでしょうかね。
さて、これまたいかにもパウル・クレー(1879-1940)な線で描かれた作品(1924年)は
川にまつわる建築風景。
川、建築、絵画…こういう三題噺からは大いに空想が膨らむところでありますよ。
(個人的な趣味志向ですけれど)
空想が膨らむという点ではこのファイニンガー
(1871-1956)の描いた世界は刺激的ですね。
といっても静かな刺激ですけれど、不条理世界への入り口でもあるかのようです。
こういう世界になってきますと、うってつけの人がマグリット
(1898-1967)でありましょう。
対象のひとつひとつははっきり描くも、その不似合いな取り合わせが見る者を揺さぶりますけれど、
1927年のこの作品の頃はそうしたスタイルの確立前でしょうか。
ただ「見えない味付け」というタイトル付けはマグリットですよねえ。
最後にはほっとでいる一枚を。
ここへ来て個人的関心急上昇のココシュカ(1886-1980)、
シャモニーからのモンブランを描いた作品(1927)です。
刺激的な作品も楽しからずやなのですが、そればかりだと草臥れてしまいますので、
こうした雄大な山を描いた作品を前にすると「ああ、一服の清涼剤」てな気がしたものでありますよ。
と、カールスルーエ美術館別館のオランジェリーでお目にかかれる20世紀絵画の一端。
誰気兼ねなく好きなように見て回れる空間(つまりは他に来場者がいない…)は
最高の贅沢をしたなと。なかなかそういう環境には恵まれませんものね。