ということで、フライブルク最後の訪問先であるアウグスティナー博物館へ。
大聖堂
からは旧市街の路地を抜けて程なく到着でありますよ。
ところでその旧市街の路地ですけれど、
こんなような細い水路がそこここに通っているのですなあ。
「Bächle」(ベッヒレ)と呼ばれるそうですが、
作曲家のバッハ
の名は直訳すると小川さんになるように「Bach」は小さい川のことながら、
接尾辞「-le」が付いて(ついでに母音がウムラウトになって)さらに小さいことを表している。
「小さな小川」と日本語で言ったら変ですが、意味としてはそういうことですね。
とまれ、そのような黒い森に発するせせらぎのある石畳道を抜けていきますと、
アウグスティナー広場(Augustinerplatz)に出、博物館は目の前ということになります。
解説によりますと、この博物館もまた修道院発祥であると。
アウグスティノ修道会の僧院として建てられ、天井を支える骨組みは14世紀のものと
フライブルクでは大聖堂と並んで古い建造物ということであるそうな。
入り口あたりだけではそうとは知れませんけれどね。
ただ、そうしたオリジンでもあるためか、
入ってすぐのホールはすぐにも教会堂の雰囲気を感じさせるようでもありますよ。
されど宗教美術ばかりではありませんで、
訪ねたときには特別展のコーナーが二つ設けられていたのですね。
ひとつはフライブルク出身の画家フランツ・クサーヴァー・ホッホ(1869-1916)の没後100年展。
一般にはあまり知られていない画家ではないか(自分としては初耳で)と思いますけれど、
くせがなく、飽きの来ない風景を描いて、壁に飾るには邪魔にならずにうってつけかなと。
展覧会の説明には「バルビゾン派に影響を受けた風景画とアールヌーボー様式の版画は、
いずれもメランコリックな雰囲気を漂わせる」とありましたですが、
ここではふたつほど挙げておくとします。
もうひとつの特別展はオランダのモダン作品を集めたもので、
淡い点描で心地よい作風だった時代のヤン・トーロップ(1858-1928)に出会えて「おお!」と。
そこここでお目にかかれる作家ではないでしょうけれど、
絵に興味を持ち始めた頃には見に行った点描派展以来気になっておるものですから。
他にはウィレム・バスティアン・トーレン(1856-1928)の繋船柱を描いた作品もいいですなあ。
オランダだけに海景画の伝統の延長に、これだけで詩情を醸す作品が生まれてくるのでしょうか。
もうひとつ、空気感で味わう風景画と言いましょうか、
どうもオランダ語の名前をどうカタカナに置き換えたらよいのか判然としない
Jan Voerman(1857-1941)の「ハッテムの風景」をご覧くださいまし。
オランダ北部、かつてハンザ同盟都市であったハッセムは
画家が亡くなるまで住まった町のようですが、本作は代表作でもあるのか、
オランダ語版Wikipediaにも画像引用されておりますよ。
(そちらの画像で大きくご覧になると、かの空気感をひとしおかと)
ところで、コレクション展と思しき展示からも2点ほどピックアップしておきますね。
ひとつはオディロン・ルドン (1840-1916)が描いたポピーの花の絵。
いかにもルドンらしく、ポピーの花が何だか隠花植物であるかのように見えてくる。
あやかしの具象(?)を描いた人らしいですよねえ。
最後はポール・ゴーギャン (1848-1903)が描いた「ヴォージラールの教会」。
1881年作ですので、まだブルターニュへ出向く以前だけにゴーギャンらしさはまだまだかと。
ともすると、牛島憲之かと思ってしまうような雰囲気で、
牛島作品と同じ静謐さを感じたものでありますよ。
てな具合にちと足早にひと回りしたアウグスティナー博物館でしたけれど、
ドイツ政観HPには「中世の彫刻や絵画、バロック美術、19世紀の絵画といった、
市のコレクション」や「グラフィック・アートや応用芸術、日常文化のコレクションも所蔵」と
記載されていることからして、どうも見落としがあったような気がしてならない。
ま、どこの美術館でもそのコレクションの全てを一度で見切ることなど不可能ですので、
とりあえずはあれこれの見ものを見たということで良しとしておくといたしましょう。