群馬県立近代美術館 は高崎市とはいえ駅からかなり離れておりましたので、
ひとつ手前の倉賀野駅からレンタサイクル利用で往復しましたけれど、
高崎駅近くの美術館として東口にひとつ、西口にもひとつあるのでして。


東口の方は先に訪ねたタワー美術館 で、今度は西口側にある高崎市美術館 のお話。
こちらでは「愛のなかの女性たち」という展覧会が開かれておりました。
(会期は11月18日までで既に終了しておりますが…)


「愛のなかの女性たち」展@高崎市美術館


美術の世界で女性像は永遠のテーマでもありましょうから、
企画としては大いにあり得るものと言えましょうね。
フライヤーにある紹介文を少々引用してみます。

今回の展覧会では、「母と子と」「恋人のいる風景」「愛と死の聖女たち」などをキーワードとして、女性をテーマとする作品群を読み解いていきます。…さまざまな国と時代の芸術家たちが生み出した女性をめぐるイメジェリーを紹介します。

かようなことを聞けば「面白そうではないの?」と思うところながら、
実際に見て廻った印象としては些かまとまりを欠いた感じがあり、企画倒れかも…と。

フライヤーではムンク の「マドンナ」が大きく取扱われていたこともあり、
先ほどのキーワードでは「愛と死の聖女たち」といった側面に期待しすぎていたかもです。
ちなみに「マドンナ」は展示替えでもはやありませんでしたし。


ということですので、展覧会企画に乗った話というよりは、
いくつかの作品との関わりで紹介されていた「言葉」を留めておこうかと思っておりまして。
まずはフェルナン・レジェが制作した「サーカス」というシリーズもののリトグラフでは
レジェのこんな言葉が紹介されていたのですね。

サーカスほど丸いものはない。………サーカスに行きたまえ!君の幾何学的な窓を抜け出して、活動する円形たちの国に入るのだ。

レジェにとって「エネルギーみなぎる円形運動は興味の尽きないパフォーマンス」だったようで、
その円形運動の極致をサーカスに見ていたようでありますね。


ですが、知る限りにおいてレジェの作品がかく言うほどに動的な印象が無いのはどうしたことか。
「興味の尽きない」という関心の向くところをキャンバスに写し取るといった
分かりやすいものでは無かったのかも。それが反って面白いといいますか。


一方で同じくサーカスを題材にしたものとしては
マティス の「ジャズ」(こちらは先に県立近代美術館でも見ましたけれど)の方が
シンプルに「動的」な
印象を受けるかなと思うところですし、

たまたルオーもサーカスに関心が高いですが、ルオーの場合には

躍動感といった動的なところではなくして、サーカスの演者たちの心のうちに
目が向いていたのでしょうから、実にそれぞれですなあ。


次には2点ほど作品のあったオーギュスト・ロダン が、
芸術を志す若い人々に向けたとされる言葉。ちと長いですが、やはり引用を。

真実でありなさい、若い人々よ。しかしそれは平凡に正確でありなさい、ということを意味してはいません。低次元の正確さというものがあります。写真とか型取りされた石膏複製がそれです。芸術は内在的な真実がともなってこそ始まるのです。

おっと、写真を全否定?!とも思えるところながら、時代が時代ということでしょうか。
写真が単に光学的に「写し取る」(ただそれだけの)ものとして捉えられていたからであって、
対比そのものよりも「内在的な真実」の存在なくしては芸術たらんということが眼目なわけですし。


ただ、もそっと考えてみますとロダンなればこそ「その後の写真の脅威」を感じ取っていたのかも。

単に写し取る以上の存在になる可能性を見通して「そっちにばかり流れてはいけんよ」というふうに。


そんな勝手な想像はともかくとして、もう一人はこれまで全く知らなかった作家、

ソニア・ドローネーという抽象画家に関するエピソードでして、

岡本太郎がフランスにソニア・ドローネーを訪ねて自作を見せたときの思い出話です。

「なぜ、あなたは、こんな具象的なものを!」
そのきつい態度に、ははーんと思った。ウクライナ生まれの彼女、気性も強く、女親分の風格がある。そして絶対に具象的なものを許さなかった。

あの岡本太郎が一瞬たじろぐほどの調子でもあったのでしょうかね。

それほどまでにドローネーの抽象への思いは強かったということでもあるかなと思い、

岡本のコメントはドローネーの人となりを想像させるに十分と言いますか。


ですが、4点ほど展示されていたドローネー作品を見る限り、

岡本作品(どんなだったかは分かりませんけれど)を「こんな具象!」と切って捨てるほどに

自らの作品が究極の抽象画みたいなものかといえば、今からみればでもありますけれど、

さほどでもないような。それだけになおのこと面白く感じた話でありましたよ。


ということで、ところどころに面白みを見つけることができて、

結果的にはなりよりの高崎市美術館の企画展なのでありました。


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