高崎から帰ってきましたので、早速にもその話に取り掛かろうかと思うわけですが、
秩父の話 が残りわずかですので、そちらをささっと片付けてからにしようかと。




さて秩父での第2日目のお話であります。
この日もまた方々を訪ね歩くようなことはなく(いつもと旅の傾向が全く違いますが…)、

一点突破で現地発着のツアーに参加したのでして。
その名も「和メープルエコツアー in 秩父」というものでありました。


「和メープルエコツアー in 秩父」


メープルシロップはてっきりカナダの専売特許でもあろうかと思ってましたですが、
秩父でも作っており、「和メープル」とはその商標でもあろうかと。


全部で129種あるというカエデの仲間のうち日本には27種(北米は10種と)があり、
秩父には21種も自生しているそうな。


ですが、カナダでメープルシロップ(になる樹液)を採取しているサトウカエデは
日本古来種には入っていないようですので、「メープルシロップったって?」と思うところながら、
カエデの仲間であれば結構採れちゃうようなのですなあ(と、ツアーが始まってから聞いた話)。


とまれ、これまた秩父の山林を有効に、しかも自然な形で利用したメープルシロップ作りとは?

このあたりを垣間見るべく、西武秩父駅に朝9時集合してマイクロバスに乗り込み、

まずは大滝村というところに向かったのでした。


道の駅大滝温泉で途中休憩


今では(吉田元気村 のある吉田町同様に)秩父市と合併してますので大滝村とは旧名ですが、
バスの中でも説明によれば、この地域に小学生7人、中学生1人というのが象徴するように

人口は減少し、残った人たちの高齢化率は高く、地域社会を成り立たせるには

厳しい状況にあるようすなのですなあ。


元より耕地面積は狭いですから林業に携わる人が多かったにしても、
高齢化してきますときつい作業はできなくなってきますし、
間伐などの作業を委託すれば当然に費用もかかってしまうので、山は荒れていってしまう。


と、「ちゃんと間伐したりしないと、山が荒れる」てな言い方は耳にするも、
自然林は人の手が入らないから自然林なのであって、そうしたところで間伐なんぞしなくても
森は生きているではないかと思ったりしたものの、要するに植林など人の手を入れたところは
責任を持って?その後も人の手を入れていかないと「山が荒れる」ということなのだろうと
今さらながらに思いついたのでありました。


カエデ交じりの山林


それはともかくたどりついたのはカエデ交じりの山林、樹液を採取している現場であります。
商品としてのメープルシロップがとろぉ~りとしているものですから、
もしかしてマレーシアあたりでのゴムの木栽培にも似た感じで採取するのであろうか…てなことを
漠然とイメージしてしまいそうなところながら、全然違いましたなあ。


カエデ樹液の採取


木にぶっすりと管を差し込み、つないだホースを通ってきた樹液をポリタンクで受けるという、
実に現実的な方法といいますか(ついフランクフルト芸術協会で見た展示 を思い出す…)。


言われてみればなるほどですが、樹液自体は完全に水のような液体であって、
それを煮詰めていくことでメープルシロップになり、さらに煮詰めればメープルシュガーになる。
最初からとろっとしているわけではないのでありました(笑)。


カエデの樹液が滴り落ちる…


実際に管のところに手を出してみれば、ぽたぽたと滴る樹液は全く水のよう。
お勧めに従い舐めてみますと、「甘いでしょ」と言われれば確かにそんな気にもなる仄かな甘み。
ここでまた気付くことは、今のご時勢、甘いものを得るのに不自由しない時代になっていて、
とことん甘いものに慣れきってしまっているから、それを感じる感覚が乏しくなっているのだろうなと。


ところで、カエデの樹液採取というのはまさに今の時期限定のもののようですね。
春の芽吹きに向けて、根から枝葉の先まで養分を樹液に乗せて送ってやる時期なのだそうで。
言わば「三寒四温」という微妙な温度変化を感じ取ったカエデが樹液を送り出す。
春の兆しは目や耳に頼らなくとも確実に感じ取れるというわけですね。


暖冬傾向である上に、この日はどんどん気温の上がった日で

木々の周りに雪はほんの僅かでしたが、いつもならこの時期に根元は雪で埋まっているそうな。
そして、そんな時でも樹木が春の兆しを感じとって活動を開始すると
体温(樹温?)が上がるので、根元の周囲だけは雪が融けるのだと言います。
種類によっては何千年も生きる樹木の不思議には古老の知恵のようなものを感じましたですよ。


とまあ、ひとしきりの説明を受けながらカエデを含む山林を見て廻った後は

秩父市の中心街に戻って、地場産メープルシロップを使ったランチを食すことに。


百年の森メープルランチメニュー


多少無理して使ってる?てな気がしないでもないですが、
見事にメープルシロップを使用したコース料理が待っておりました。
独特の風味を活かすもの、隠し味にするもの、いろいろで量的にもたっぷりいただいたなあと。


鶏もも肉のグリル レモンメープルソース


これとは別にお菓子の類いには大いに利用されているようでして、

秩父の土産物屋で買えるものはたくさんあるようです。


「和メープル」は山に囲まれた秩父という土地柄ならではの、

ひとつの好循環の例のようにも思いましたが、
土地土地の自然と向き合うところから生み出せる何かがあるとは、

どこの土地にも言えるのではないでしょうか。
それを見つけ出すことがそもそも難しいとしても。


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