タイミングにもよったのか、思いのほか得られるものの無かったギエルシュ博物館
でしたですが、
続いて足を向けたリービークハウスでは逆の意味で思いのほかの収穫であった…というお話の、
そのリービークハウスのコレクションをご紹介申し上げようかと。
館内に足を踏み入れて、まず最初はエジプト・ギリシア・ローマのコーナーでありました。
このボートを漕ぐ人物のレリーフは紀元前1330年のものなのだそうで。
しばらく前にボルドー展@国立西洋美術館
で見た「ローセルのヴィーナス」が
25,000年前のレリーフということで「ほぉ~!」と思ったですが、
さすがにその頃より技術的な進歩は窺えるところながら、
ボートの人物像とその後のレリーフ事情を考えますと、技術的な進歩というのは
ゆったり進んだのだなぁと思うところです(現代に近付くほど加速度がつきますが)。
左はいかにもギリシア風、右はポンペイ
の遺跡からでも発掘されそうなモザイク画などいいつつ、
端折りながら進めませんと大変なことになりますので、
唐突に中世へと進みますけれど、ここもなかなか芳醇なコーナーでしたなあ。
右側は1290年頃の作という「聖アンナと聖母子」像です。
本来的にキリストこそ信仰の対象であったはずが、後にその母マリアが讃えられるようになり、
さらにはマリアの母アンナも崇敬の対象となって、この三者をひとまとまりに描き出すことも
三位一体の表象と考えられたようで。
それにしても、この極端にデフォルメされた聖アンナの大きさは
おそらくは作り手(もしくは像を求めた者)の聖アンナ信仰の深さを表しているのでしょうね。
この「四人の教父」像は15世紀末頃にヴォルムス
で制作されたものとのこと。
個性豊かでユーモラスな印象は、時間も場所も全く違う平櫛田中の作品を
ちと思い出したりしたですよ。
さてさて、どんどん時代は過ぎ去りルネサンス以降のコーナーへと進んで参りますが、
ここで取り分け見入った作品に出くわしました。
これもいわゆる彫刻の類いとされるのか分からないテラコッタ製であるということです。
1506年頃の作品で、作者はアンドレア・デッラ・ロッビア。
恥ずかしながらその名を聞いたことはありませんでしたが、
日本語Wikipediaでも項目が立っているくらいですから、著名なのでありましょう。
「聖母被昇天」の場面を細かく緻密に描き出して、実にきれいな作品でありました。
この「ジャン=ジャック・ルソーの胸像」の作者ジャン=アントワーヌ・ウードンも
これまた有名らしく、同時代の啓蒙思想家や政治家などの胸像を多数制作しておるそうな。
まだまだ彫刻の世界は知らないことばかりでありますよ。
と、時代は近代に入ってきてますが、このふたつ女性像、表現としては対極かなとも。
左側はロダン
の師であったこともあるアルベール=エルネスト・カリエ=ベルーズの作品。
1874年のパリで制作された、いかにも世紀末に近付いてるさまが浮かぶようですねえ。
右の方はルソー像を作ったウードン作ですので19世紀初めですが、
啓蒙思想家と多く関わったウードンだからなのか、
上目に未来を眺めやるような凛とした気品が感じられるところかと。
これは覗いた部屋の順番でたまたまちと時間が巻戻りますが、
これもテラコッタ製で17世紀半ばの作品ですね。
よもや単なる母子とは思われませんので、聖母子でありましょうけれど、
これほどまでに真正面から向き合っているのは珍しくないですか?
という具合に(といっても、作品としてはほんのごく一部で)巡って歩いたですが、
最後にいかにも彫刻らしい?全身像を。
ロレンツォ・バルトリーニの「ヴィーナス」です。
さきほどのカリエ=ベルーズの女性像は露骨に胸部を強調してしまっていて顔も上向き、
なにやら自己陶酔でもあろうかと思えてきたりするところですけれど、
こちらはライティングも演出のうちかと思いますが、うつむき加減なところへ陰が重なって、
床しさとも感じられるような。エロスの描き方は奥が深いものがありますですね。
すごいコレクションと大言壮語したわりには写真がうまくいっておらず、
あまり真価が伝わらなかったやに思いますが、
美術に関心おありの方がうっかり?フランクフルトに来てしまったときには、
シュテーデル美術館
(ゲーテハウス
を2番手にするかはお好みで)に次いで
リービークハウスを訪ねたら如何と思いましたですよ。