ある程度予想はしておりましたですが、やっぱりの内容といいますか。
国立西洋美術館 で開催中なのはボルドー展であって、

ボルドー美術館展ではありませんですかねえ。


「美と陶酔の都へ」とありますように、ボルドーという町の魅力を歴史的なところを踏まえつつ
紹介しようというのが眼目でありましょう、このボルドー展は。


ボルドー展@国立西洋美術館


ボルドーのあるフランス南西部。辺りはアキテーヌ地方と呼ばれますけれど、
ここのアキテーヌ公女と縁組した相手が何と!イギリス国王に即位することになり、
結果ヨーロッパ大陸における大きな領土をイギリスが領有することとなって、
百年戦争の争いに大きく関わるわけですが、それは後の話。


展示は何と25,000年前にも遡る遺物から始まるのですね。

そもアキテーヌ地方には古い古い遺跡があれこれ見つかっていて、
中でも世界史の教科書には必ず掲載されている「ラスコーの洞窟壁画」というのも
このエリアにあるという。


とまれ、25,000年前の遺物ということですが、何より「ほお~」と思いますのは
「角を持つヴィーナス(ローセルのヴィーナス)」でありましょうか。


「角を持つヴィーナス」(本展フライヤーより部分)


見るからに豊穣を願うためのものと思われますけれど、
造型的には日本の土偶なんかとも類似が窺われるものの、
ともすると土偶が「宇宙人?」てなふうでもあるのに対して、
こちらはかなり「人」然としているではありませんか。


以前、長野県の尖石縄文考古館 で見た「縄文のビーナス」と呼ばれている国宝の土偶は
およそ5,000年前のものだそうですから、それよりさらに2万年も前とは
口あんぐりになってしまうところでありますよ。


ところで、記述された歴史としてたどれるのは古代ローマのガリア征服後のようです。
紀元1世紀の初めにブルディガラという町が建設されたということでして、
無理無理読めば「ボルドー」に繋がる言葉だなとは思うところかと。


一帯はローマの属州アクイタニア(これもアキテーヌですね)で、その首都であったそうな。
そして肝心なのは、その頃はすでにワイン生産が開始されていたというのですね。
2世紀後半に作られたとされる「家族の石碑」にはぶどうを持っている姿が見てとれます。

まさにワインのボルドー、その面目躍如たる歴史ではありませんか。


ちと時代は飛んで、先の話のようにアキテーヌ地方が英国領になったのは1154年ですが、
これによってボルドーは大陸からイギリスへ向けた物資の輸出港として賑わい、
ワイン産業がますます発展することにもなったのそうす。


アガサ・クリスティーなんかでもそうですけれど、英国ミステリー小説を読んでいて、
よく「クラレット」と呼ばれるワインが出てきますけれど、
このクラレットがすなわちボルドー産の赤ワインのことであって、
これに「クラレット」という呼び名が定着していることなども
英国とボルドーとの関わりを偲ぶよすがになるのではないでしょうか。


と、すこしは展示作品にも触れることにして、
繁栄のボルドーにあって大司教を務めたフランソワ・ド・スルディス枢機卿の姿を
ベルニーニが胸像にとどめた作品、これは見事なものでありますね。


ベルニーニ「フランソワ・ド・スルディス枢機卿の胸像」(Wikipediaより部分)


衣装の浅い彫りも見事ですし、
対抗宗教改革を展開した人物だけに、決意みなぎる厳しく精悍な顔つき、目付きは
あたかも獲物を狙う猛禽類でもあろうかという具合なのですから。


ちなみに本展の目玉作品は、フライヤーにも大きく扱われていますように

ドラクロワの「ライオン狩り」であるようで。


火災によって上部三分の一が失われてしまった作品ながら、
「どうよ!」の迫力だというわけですが、個人的にはこの作品、
どうも最近話題のダ・ヴィンチ 作「アンギアーリの戦い」を思い出してしまうのですな。

躍動のあまり?どこが誰の手足か分からないくらいのくんずほぐれずのあたりでしょうか。


ところでところで、

ボルドーの3Mと言われるのがモンテーニュ、モンテスキュー、モーリヤックだそうですが、
それぞれの生家はシャトーを所有しているのだとか。
やっぱりワインとは切っても切れない縁にあるのがボルドーですね。


あれこれの展示を見ていて「ボルドーにも行ってみたいね」と思ってしまうところながら、
来年2016年には新しい施設、ワイン文明博物館というのができるらしい…となると、
訪ねるなら来年以降がよろしいようで。