まず最初に、科学博物館のところでちと書き忘れたことを。

といって、どうでもいいことではあるんですが、実は昼飯のことです。


上野のミュージアム・クォーター(という言い方するのかな・・・)のあたりは、

あれこれの見ものの関係で、行けば一日!みたいな過ごし方をするわけですが、

結構昼飯の調達が思うに任せないような。


上野公園の丘の上から繁華な辺りまで下っていけば、

それこそお食事処に事欠かないとは知りつつも、この上り下りを厭うと

それこそ美術館や博物館に併設されたレストランにでも入るほかないことにもなろうかと。


で、このときにも科学博物館のレストランに入ってメニューを見たところ、

「こりゃあ、きっと子供向けのウケ狙いなんだろうな」と思いつつも、

ついついそうした一品を頼んでしまうのでありますよ。


恐竜の足型ハンバーグ@国立科学博物館レストラン


題して「恐竜の足型ハンバーグ」・・・。

いささかの話題性はありましょうけれど、食したところの正直な感想はといえば、

スキー場のレストハウス並みと言って、お分かりになる人は想像がつくことでありましょう。

とまれ、お気をつけ遊ばせ…と申し上げておこうかと。


さて長い前置きはともかくも、黒田記念館ヒカリ展@国立科学博物館 と見て廻って、

上野ついでにもうひとつというお話。

国立西洋美術館のフェルディナント・ホドラー展が折しも会期終了となるところでしたので、

まあ、見ておくにしくはなしということで。


フェルディナント・ホドラー展@国立西洋美術館


しかしながら、そもそもホドラーというスイスの画家の名前を初めて聞いたのでありますが、

展覧会としては日本とスイスの国交樹立150年を記念するものとあっては

スイスとしてお国自慢的作家を登場させたというところでしょうか。

どうやらスイスでは国民画家と目されているのがフェルディナント・ホドラーであるということで。


とまれ、そのフェルディナント・ホドラーの芸術をより近づくためのキーワードが「リズム」であるらしく、

作品のタイトルにも「オイリュトミー」というものがあったり、

ホドラーに影響を与えた音楽家によるリトミックの実践風景の写真があったり。


こうなりますと神智学とかルドルフ・シュタイナーあたりとの近しさはどうなの…と思えてくるところですが、

個人的にはホドラー作品の注目点はもっぱら風景画なのでありました。


たとえばですが、本展の主催にNHKが名を連ねているせいか、

大河ドラマ「軍師官兵衛」が終わったときとか、

時折CMが無いはずのNHKで「しっかり宣伝しているじゃん」というところに出くわすことしばし。


そこで取り上げられていたのが、

フライヤーにも使われている「ミューレンから見たユングフラウ山」でありまして、

実景の写真が徐々にホドラー作品に移行していく映像になっていたわけです。


スイス・アルプスの景観は何度か実際に目にしたことはありますけれど、

およそあそこまで賑々しい多彩な色合いではなかろうと思いつつも、

あの岩肌を(しかも写真とは違う画家の目というフィルターを通して)写しだすとなると、

「う~ん、ありかもしれん…」と思えてもきたものですから。


そうした見方でもって改めてホドラーの風景画を眺めやってみますと、

やはり独特な岩肌の描き方にどうしても目が留まると同時に、

ホドラーの特徴にリズムがあることを考え合わせると「雲」の描き方もまた

相当に独特であって、作品ごとに異なるリズムが感じられるような気もしてくるのですね。


フェルディナント・ホドラー「トゥーン湖とニーセン山」(部分)


では、見るべきは風景画なのか…となりますと、そうとばかりも言えないのでして、

ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ を敬愛していたからでもありましょうか、

ホドラーは大きな壁画作品を手がけているという。


スイス国立博物館やチューリヒ美術館というスイス国内のみならず、

イエナ大学やハノーファー市庁舎にも作品が残されているとなれば、

スイスの国民画家はどうやらドイツ語圏ではかなり知られた作家であったことでしょう。

(ちなみにホドラー自身はベルンの生まれ、ドイツ語圏ですな)


そこには数人から群集までさまざまながら、人物が描かれているのでして、

残念ながら壁画自体は出展されるはずもないわけですが、そうした人物を描くという点で見れば、

例えば展示作では「恍惚とした女」あたりのインパクトはなかなかに忘れがたいものがある。


フェルディナント・ホドラー「恍惚とした女」(部分)



となれば、大画面の壁画そのものを見てみたいと思うではありませんか。

さて、どうしたものか。

これまた「いつしか…」と心覚えしておくことにいたしましょうかね。