「村上喜剣」CD起こしのその2
この作品は題名からして、余り期待はしていなかった
私が今まで耳にしてこなかった、お話
だが、通して話を聞くと
まことに素晴らしい作品であることが分かった
今まで演じてきた中で、なかった味わい
それは町人言葉で、赤穂義士の義挙をたたえること
大石内蔵助のすばらしさは、いやというほど知っているが
それは歴史的事実の中で、見聞きしてきたこと
これを町人言葉で語らせると
思わず感動で身体が痺れる
こみ上げそうになる思いがある
特に後半
大工の八五郎によって
己の取った愚行と
大石の義挙
知らしめされる場面
ここは、国本武春節の絶好調
私の口演ではそうはいくまいが
この作品の良さを少しでもお伝えすることが
できるようになれば、嬉しい
今回は、京都で大石に別れてから
1年近くを旅で過ごして
再び江戸に舞い戻った喜剣が
大工の八五郎たちと
出くわす場面までの顛末
丁度山場の前の、繋ぎの部分でとでも言うべきか・・・
「節」部分が多いので
如何にお客様を飽きさせず
分かりやすく伝えるかが、難しいだろう
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〽 なにを言うても張り合いのない、
薩摩の武士の鉄拳を、受けて見よと固めた
拳でちょうと打つ。
「おっ、はっははははー、いやー、これは乱暴
・・」
〽 お手は痛みは致さぬか
何を小癪な犬侍。これを喰らえと小鉢に盛りし
タコ肴、足に挟んで、ぐっと大石の鼻の先。
「おほっほっほっほー、いやいや、これは、
これは、何より大好物」
〽 手を出して、足をいただくタコ肴
〽 魂抜けたか内蔵助、言葉交わすも汚らわし
い、畳を蹴ってい出て行く、後見送りて大石
が、真心表に現れて、喜剣先生嬉しいや、明
けて言われぬ胸の内、分かる時節も来るならん
〽 喜剣は宿に帰られて、もはや京地に用無しと、
急いで下る江戸の地の、四川七街、八百八町。
しかも天下のお膝元、名所古跡を見物為し、
松坂町の吉良の屋敷の様子を見て、道を転じて
日光参詣、あれから急ぐ奥州仙台五十七人が
六十五万石、伊達の太守の城下に来れば、さんさ
時雨か、茅野の雨か、音もせできて濡れかかる。
わずか離れた日本三景の粋で名高い松島見物、
かの有名な瑞巌寺。政宗英傑物語も、船で帰りが
塩釜参詣、塩釜回廊に白菊植えて、波を尽くして
便り聞く、いたるところのご供養や、人情風俗
忠臣義士、少し説風もよく調べて、これが故郷への
土産ぞ、あれから出羽へ志す、出羽で庄内、秋田家、
最上、山が一つで越後に変わる、越路新潟船着く港、
弘法大師の七不思議、長岡城下も過ぎまして、越後、
玉原、あごおり、柏崎、さあさ参らんしょうかよ、
米山の薬師、一つは身のため主の為。
前はなにおう青海原、遥か彼方は佐渡島、ちょいと
行かりょか行かりょか佐渡へ、佐渡は四十九里波の上、
黄金花散る離れ島。かの上杉が用心堅固な春日山、黒姫
根越しで帰るは信州信濃の善光寺参詣、戒壇巡りて吉脈
受けて、荒くれ男が随喜の涙の川中島の古戦場、上田、
小諸もはや過ぎて、坂東一の鬼武者と人に言われた熊谷
が、髪を丸めたれんしょうぼう、よい八丁の畷を過ぎて、
中山道を一直線、再び江戸まで引き返す。
〽 時は元禄十六年、時は四月の半ばころ、昨日今日桜の花
の咲いたるも、今はたちまち色香を失い、濡れて色増す藤
の花、菖蒲の花の咲いたるも、今日か明日かという時節、
空に一声ホトトギス。
江戸を横切り高輪まで参りました村上、見晴らしの良い茶屋
の床几に腰を下ろし、茶を飲みながら四方の風景に見とれて
いる。前は名代の品川湾、見渡す限りに安房上総。
するとそこに、そろいの衣装を身に纏うて、どやどやッと
入ってまいりました三十人ばかりが・・
「いやーーっ、いや、いやー、婆さん悪かったな。預けといた
物を貰いに来たぜ」
「おや、まあー、お早い御参詣でしたなあ。もうお帰りです
かな」
「なあにー、えへーっ、いやー、これからが大切だ。これから
品川なんだー。えーっ、可愛いのが待っているからなあ」
「おやおや、それはまた、お楽しみなことで」
物珍しげに見ていた喜剣・・・
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物語の山場は、次回のその3で・・・
前回その1の訂正箇所が二つ
四条の繩手 → 四条の畷
浮き大臣 → 浮き大尽