便利な世の中になって
海を越えても日帰りができるようになりました。
あなたに連絡を差し上げたのは案内をしてほしいからです。
他の血の者にも言ってはおりません。
今日 わたしがここにいるのはあなたの他には亭主しかおりません。
わたしという人間個人が最後に顔を見てお礼と伝えておきたかったことがあるのです。
それが済んだらまっすぐにわたしは帰りますゆえに
そうですか。
では案内いたしますがわたしは外で待っております。
そのほうがあなたの趣旨に沿える
だってあなたは公式にはここにはいないのですから。
存分にどうぞ
30分だった。
彼女は外に出てきた。
あれから随分立ちますがあなたは変わっていませんね。
わたしが言うのも傲慢ですがそのままでいらっしゃってくれれば嬉しいです。
一枚の絵として。
あなたが坂の多いあの街にわたしが住んでいた時に来てくれて
坂に照らす夕日の中 バイクに跨って帰って行ったのを強烈に覚えておりますよ
もう、ここで結構ですよ。
お手間かけました。
どうぞあなたはあなたを全うしてくださるよう。
そうして駅の改札を抜けて
その3時間の出来事が吾も幻燈のように覚えている。