「なんでおまいさんがここに帰って来たかは鳥串刺し屋の息子から聞いてるよ。雪埋町で大立ち回りしたんだって?

 ほら。いけるんだろ?飲みな。これでもしゃぶって。」

狂女は売り物のビールとポリケースから駄菓子のイカの皮を醤油漬けにしたつまみを差し出す。

「そんな顔をしなさんな。ちょいと話に付き合いな。おまいさんも法で守られる最後の年齢だよ。そろそろ

 うまく立ち回りな。そうでないとここいらで吹き溜まってるおまいさんの憎む奴らと一緒になっちまうよ。」

そう言って彼女は缶ビールを一気に飲み干す。

「ここでおきたあれこれはおまいさんの預かり知らぬこと。とにもかくにもそのメンバーがいたからおまいさんは

 ここに出てなんだかんだ楽しんでるのさ。それだけは感謝しな。そうしてね。罰の年季が明けたら一刻も早く出ていきな。

 そうして二度とここに戻りなさんな。たとえ傍観者の立場になろうともだ。事知らずの者がやがておまいさんの立場を

 言い立て戻るように言ってもだ。その者たちこそいち早く傍観者を決め込んですべてを置いて行ったのだから気にすることは

 ないさ。」

彼女は二本目のビールを開ける。

何を言わんとしているのか理解できなかったがその欠片が引っ掛かる。

「雷が降るよ。その時にまた。」

 

それから八年後 女を伴い吾はそこにいた。

代が変わっても同じことが起ころうとしていた。

そこに居た男はそれを察知して二度とそこに訪れることも連絡をすることも辞めた。

彼に雷が降ったのだ。

 

彼の最後の言葉 「あのね ・・・・ いや。もういいか。じゃあ。元気で。」

 

まだ吾もすべてを知らぬ頃であった。

 

 

 哀歌(ブルース)     

作詞 有栖川下種麻呂 作曲 JohnnyCat

 

こぼれ人 あまたおりまして

どっちが天でどっちが地か

どっちが優でどっちが劣か

それだけが暮らしの糧でありました

八月の月の無い夜に 悪魔が来りて言いました

いいかい? 生まれた者は死に向かうだけなんだ

それまでのあれこれはまやかし

その時の様がすべてさ 哀歌は好きだろ?

 

変態奇人 闊歩しておりまして

持つ者が善で持たぬ者が悪か

支配する側かされる側か

それだけが暮らしの娯楽でありました

八月が終わる満月の夜 悪魔が来りて言いました

いいかい? 死ぬまでの時間はまぼろしで

どっちに転ぼうが同じさ

その時の様がすべてさ 哀歌は好きだろ?

 

哀れな女はその変態を憎み続けて死にました

哀れな男は己の役割を憎んで死にました

さあ ほおかむりしていた者たちよ

あなたは何の哀歌を口ずさみ逝くのか

 

櫓人は消え 囃子人もいないその場所は

もう踊る者もいないのは明白で

すべてを知ったとて今更 できることもなく

嗚呼 その時がすべてさ 哀歌は好きだろ?

 

 

あたしの仲間がね。

まあ。みんなこの年まで歌舞化てるバカ者たちさ。

流行り病のせいにしてその裏には大人の利権事情で消えちまった盆をどりを復活させたいってね。

このままじゃここいらの金坊、亀子たちは盆をどりは商業フェスだって認識しちまう。

あれは迎えの祭り いわば仏事だわな。

閑話休題

あたしはね この囃子が聞こえると「哀」だったな。

一発舞台が待っている。

無表情の顔にドンタク面の表情貼り付けてさあ非日常の芝居が始まるってぇわけさ。

演歌の大御所の舞台ぢゃあるまいに。7日間興行はきついわな(笑)

それこそ

八月のブルースを

金坊のころから親しんでいたわけだ。

まっとうに育つわきゃないな。