信じるか否かではない。
信じていたゞかなくとも壹向にかまわぬ。
併し、これは吾が體驗した眞實として吾に刻まれてゐる物語である。
これまでの生涯で參度 吾はその町に行つたのだ。
最初は拾歳の秋であつた。

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大人たちから行つてはいけないと云はれたどぶ川を貳つ超えた場所に
何故に吾は足を向けたのか理由は忘れた。
きつとやりきれないことでもあつたのだらう。

貳つ目のどぶ川を超えると背の高い雜草の向かうからなにやら樂しさうな
喧騷が聞こえた。ふらふらと雜草の間にある小道を吾は進んだ。
そこには葦簀張りの小屋に燒き鳥やら縁日でよく見る屋臺のやうな小屋がひしめき合い
小さな小屋の前では樂器演奏に合わせて詩ひ踊る人たちがいた。
吾が知つてゐる服裝ではなくみんな薄着・・・といふか南國の人の服裝のやうであつた。

遠慮がちに見ているとひとりのおじさんと目が合った。
「おっ!土師の出の坊やぢゃないか。よくここまで来れたな。ここは来たくてもこれない
 坊やはまだ解らんだろうがここに選ばれた業を背負った者しかたどり着けないんだ。
 ここは今を底抜けに楽しむ場所だ。楽しむことだけを考えて遊んでいけばいい。」

そこにも吾と同い年くらゐの童子たちがいて。
さつそく仲良くなり壹緒に屋臺の物を食べたり踊つたりして時間を忘れて遊んだ。
向かうから若い女が吾たちに聲をかける。
東洋人でも西洋人でもない美しい女であつた。
「晝ご飯を要したからお食べなさひ。」
さきほどのおじさんやたくさんの大人に混じつて食べた。
壹人の老人が吾を見て柔和な笑顏で云つた。
「土師の出の坊や。ここでは出自や持つてるか持つていないかなんぞ何の意味も成さぬのだ。
 坊やが土師の出だつてそれが何なのだ。さうさな。土師は代替えを作る者、死を祭る者だ。つくりしそれでもことを成さぬ時
 自らが代替えとなつて人柱にさえなる。祈りの者だ。併し、ある者はそこから出たいがゆゑ學問を志し寢食さえ惜しんで打ち込んだ
 やがて彼は今では學問の神として崇められてをる。始まりは終わりに向かうスタアト地點でしかない。終わりに向かう過程で
 在る物は好んでそこに安住しあるものは成りたい者を目指す。正解、不正解はない。坊やも選擇の時が來たら誰におもねることなく
 その時の自分に從うのだ。」
童子の吾には難しいことを彼は目を細めて云ふのであつた。

樂しい時間はあつといふ間に過ぎ日が傾いてきた。
そろそろ歸ると周りに云ふと「さうかい。また逢えたらいいね。」と美しい女が云う。
さうして背の高い雜草の小道までみんなで送つてくれてた。
禮を云おうと振り返ると手を振る大人、童子
みんな猫の目をしてゐた。
家に歸りつきまた明日行つてみやうと夜が明けるのを待つた。
翌日、學校から趨つて歸りどぶ川を貳つ超えた。
背の高い雜草の傍には小道があつた。

わくわくして小道を進む
行きついた場所には荒れた空き地があるだけであつた。

吾が貳囘目にそこにたどり着くのはそれから伍年後の事であつた。

 

 

 

當時、札幌では保北光線のあたりは田舍とみなされてね。
あれは1984年ころだつたと思ふ。
帝都の御店に入り札幌に轉勤といふ形で戻つてきた。御店の寮が北漆條東壱零丁目くらゐにあつてね。ん?「おまいさんもそこに?」
いや。吾はその御店の壹課といふ配屬で生意氣にもマンシヨンをあてがわれていたんだ。
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寮に住む同期から「寮のそばに札〇會館てえ ポルノ活動寫眞專門會館があつてよ。そ此後ろのハアモニカ飮み屋會館にいい店見つけたから來いよ」と誘いが入る。
吾は當時、會社からあてがわれた北伍條西弐捌丁目のマンシヨンに住んでいたんだ。當時は東豐線もなくあつちこつちやりくりして行つてね。
K子といふ店だつた。そこに吾より漆才は年上と思ふH美さんがいた。當時。絶大な人氣の松田某のコピーのやうなね。
仲良くなつて「毎日、來たら飮み題はいらないから。ご飯も下で私のつけで食べて、」とかね。
いつぱしの燕ですわ。ある日、K子ママに「Jちやん。H美はね。察してゐると思ふけど。年季があけたら出てくる旦那がゐるんだよ。」つてね。
吾も氣づいていた。併し吾もだう此まとわりついて何かから拔け出さうと考へてゐるときであつたんだ。
(續く)

 

 

ご同輩の中には覺えてゐる向きもあるであらう?
「ちび陸ラアメン」
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バイト先の調理パン屋で哀れを裝い食パン壹斤をいたゞく。
その足でスウパーに向かいちび陸ラアメンを購入する。
おつとそのまゞ食べてはいけない。
これには流儀がある。
吾が把握してゐる流儀は肆つほどだが吾が行う流儀を紹介したい。
おもむろに壹個の乾麺を取り出し洋天パンでゆでる。
乾麺が柔らかくなつたら水氣を切りそこに適量のサラダ油を注ぎ炒める。
役目が付いたらウスタアソヲスをぶつこむ。
さうしてこれまた壹斤を適當にちぎつた食パンで食す。
「スウプがボクるのではないか?」
いやいやわざと殘すのだ。
やがて來る殘金壱弐零圓の日の爲に。
パンだけはバイト先で手に入る。
スウプはその時に湯で溶いてちぎつたパンを浸して食すのだ。
これで壱弐食は賄えるといふわけだ。
次囘は壹斤のパンの食し方にも觸れやうぞ。