チバユウスケのこと | 日々のこと

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女には2つの頭がある。
ひとつは天に近いほう、もうひとつは土に近いほう。案外、上のほうがいつも役に立たない。

気持ち悪がられる虫がいて、
誰かに押し付けずに引き受けた腐ったものを沈めて
混ぜた先に。
何か豊かなものが実ればいいのに。

ミッシェルのチバが死んでしまった。

最初に彼らを生でみたのは
2000年より前
本当に世界の終わりの頃だった。
ゲットアップルーシーの発売頃だったと思う。

今はもうない四国のレオマワールドで
サニーデーサービスやホフディランや山崎まさよしに混じって彼らはいた。
チケット代は確か2600円くらいだった。

学生でお金もなかったので、
夜のフェリーに乗り
もちろんCDから直接聞くウォークマン(今みたいに手ぶらのイヤホンはないのね)で
一晩中、世界の終わりを聞きながら
踊り狂いながら、海を渡ったのだ。
若い女が一人きりでフェリーの看板でぶらぶらしてるんだから頭おかしくみえたにちがいない。


ミッシェルガンエレファントの出番の直前で
当時アイドルみたいだった山崎まさよしファンが
まじもんのセロリをにゅっと取り出し、
ひとしきり振り終わった後、彼女たちが一気にガサっといなくなり、
(マジで!超ラッキー!!)

とばかりに、
ものすごく!!!立ち見席だったため、前でみれた。
もう至近距離で、もちろんギュウギュウじゃない状態で拝めたんだから贅沢な時代だ。

真っ黒いスーツ、
マッチ棒のようなほそいほそい体、
いでたちからして他のバンドと異なる何かがあった。

チバユウスケは
ちっちゃい顔でモデルみたいだったし
アベはほんとに線画のような細さだった。

後光がさしていた。
命が燦々と音と一緒に輝いてみえた。

本当に死んだなんて信じられない。

世界の終わりより終わったような気持ちで
仕事帰り、サラリーマンとギャアギャアわめく観光客と
重い重いパスタの山みたいにかきわけかきわけて歩いていたら
なぜか泣けてきた。

歩きながらしれっとなんの声も出せずに
涙だけ流れて流れてマスクの上に溜まっていく。

チバユウスケの歌声は
ずっと、青い海の向こう側にあって
そのまま届かない場所にいってしまった、
唯一無二の声。

かなしい。
ただただかなしい。