吉野石膏珠玉のコレクション展「愛と絆」 | Thinking every day, every night

Thinking every day, every night

夢想家"上智まさはる"が人生のさまざまについてうわごとのように語る

日本橋三越で開催された吉野石膏珠玉のコレクション展「愛と絆」を1月末の平日に見てきました。

とっくに終わってしまいましたが、今後の参考のために簡単にご報告しておきます。

 

・名称  :吉野石膏珠玉のコレクション展「愛と絆」  
・会場  :日本橋三越(東京) 新館7階ギャラリー
・会期  :2016年1月20日(水)―2016年2月1日(月)
・開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)

      最終日は17:30まで(入場は17:00まで)
・休館日 :なし
・料金  :一般・大学生 800円 中・高校生 600円

      小学生以下 無料 


日本橋三越の展覧会ページ

吉野石膏株式会社および公益財団法人吉野石膏美術振興財団は、印象派を中心とした世界的に著名な内外の美術作品を多数所有し、これまでにもさまざまな機会にそれら優れた所蔵品の数々を公開してきました。

 

今回の展覧会では、人間の「愛と絆」をテーマに、以下の4部構成で、高山辰雄、マルク・シャガール、そしていわゆる「日本画五山」の作品を展示していました。

 

第Ⅰ部:「五山」 ~東山魁夷, 平山郁夫, 加山又造, 杉山寧, 高山辰雄

第Ⅱ部:「聖家族」 ~高山辰雄

第Ⅲ部:「マルク・シャガール」 ~マルク・シャガール

第Ⅳ部:「ダフニスとクロエ」 ~マルク・シャガール

 

■第Ⅰ部:「五山」

戦後の日本画壇を代表し、日本画の発展に多大な功績を果たした5人の画家。

名前に「山」がつくことから「五山」と称せられますが、1968年以降の所蔵作品17点が展示されていました。

 

年代的には、東山魁夷(1908-1999)、杉山寧(1909-1993)、高山辰雄(1912-2007)がほぼ同時期に学び画壇に登場、その一回り下で後を追ったのが加山又造(1927-2004)、さらにその後に平山郁夫(1930-2009)が続いたという感じでしょうか。

いずれも東京美術学校で学び、文化勲章を受賞しています。

 

日本画はあまり見ないのですが、西洋絵画を立て続けに見た後に日本画を鑑賞すると、何かほっとするんですよね。

2週間の海外出張から帰ってきて食べる日本食のような。

 

 

 東山魁夷「春映」 紙本・着色(1982年)

 

 

 杉山 寧「ネフレト像」 麻布・着色 (1977年)

 

 

 髙山辰雄「白い道」  絹本・着色 (1995年)

 

 

 加山又造「暈」 紙本・着色 (1970年)

 

 

 平山郁夫 「法隆寺」 紙本・着色 (1991年)

 

 

■第Ⅱ部:「聖家族」

「聖家族」は高山辰雄が晩年81歳のときに発表した連作26枚組みの日本画です。

もともとは1976年に制作した16枚の銅版画を出発点とし、友人の作家・井上靖によって名付けられたそうですが、その17年後に発表されたこの26枚の日本画にも時を経て同じタイトルがつけられました。

 

全般に黒一色のデッサンのようにも見えますが、緑青、群緑といった岩絵の具を焼いて作られた顔料を使うことにより、さまざまなニュアンスの黒を作り出しているとのこと。

さらにその上に辰砂を用いたとされる黄褐色の色彩を重ねたり、さらに鮮やかな色彩を添えたりして、豊かな色彩を感じさせるようになっています。

 

家族の連帯・絆を感じさせるのは主題として当然ですが、その中にも人間の魂の孤独というものが、そこはかとなく浮かび上がってきます。

 

 

 高山辰雄「聖家族Ⅶ」 紙本・黒群緑 (1993年)

 

 

 高山辰雄「聖家族Ⅻ」 紙本・黒群緑 (1993年)

 

 

 高山辰雄「聖家族XIX」 紙本・黒群緑 (1993年)

 

■第Ⅲ部:「マルク・シャガール」

マルク・シャガール(1887-1985)の1929年から1979年までの作品10点を展示。

シャガールという画家は本当に「愛」とか「夢」とか「寓意」という言葉がぴったりの画家ですね。

どの作品にも臆面もなく執拗に繰り返し繰り返し、宙を舞いどこか遠くを目指しているような画家自身や男女の寄り添い一体になる姿、鳥などが部品のように散りばめられ、青や赤や緑を貴重とする画調と相まって、独特のメルヘンチックな、しかしどこか避けようのない運命にさらされ続ける生命の危うさみたいなものを感じさせます。

 

 

シャガール「逆さ世界のヴァイオリン弾き」 カンヴァス・油彩(1929年)

 

 

シャガール「バラ色の肘掛け椅子」 カンヴァス・油彩(1930年)

 

 

シャガール「夢」 カンヴァス・油彩(1939-44年)

 

 

シャガール「グランド・パレード」 カンヴァス・油彩(1979年)

 

 

■第Ⅳ部:「ダフニスとクロエ」

シャガールが74歳のときに完成させた版画(リトグラフ)集「ダフニスとクロエ」の版画42点が一挙に公開されていました。

 

「ダフニスとクロエ」は2~3世紀にギリシャの詩人ロンゴスによって書かれた、エーゲ海に浮かぶ美しいレスボス島を舞台とする恋愛譚。

ヤギ飼いに拾われ育てられた男の子ダフニスと羊飼いに拾われ育てられた女の子クロエがやがて恋に落ち、様々な困難に襲われながらもその愛を成就していく物語です。

 

シャガールは1952年に依頼を受けて、実際にギリシャを訪れたりしながら長い年月をかけて、1961年にようやく完成させました。

当初は5色刷りの予定が最終的に20色あまりの多色刷りになりました。

 

作品とシャガールの作風とがまさにぴったりと合致した作品といえるかもしれませんね。

 

なお、各作品のサイズはいずれも縦横30cm~40cm程度の小さなものです。

 

 

シャガール『ダフニスとクロエ』より(1961年)
3.「ドリュアスによるダフニスの発見」 紙・リトグラフ

 


シャガール『ダフニスとクロエ』より(1961年)
16.「フィレータースに果樹園」 紙・リトグラフ

 

 

シャガール『ダフニスとクロエ』より(1961年)
41.「ニンフたちの洞穴での婚礼の祝宴」 紙・リトグラフ

 

 

シャガール『ダフニスとクロエ』より(1961年)
42.「結婚」 紙・リトグラフ

 

 

ちなみに、三島由紀夫の小説『潮騒』はこの「ダフニスとクロエ」の恋愛譚に着想を得ていると言われています。

 

以上です。