海のものと、山のものと、小さいひとと。 -155ページ目

帰郷、漁港の街へ

 

海のものと、山のものと、小さいひとと。


 もうすぐ旦那さんのお父さんのお誕生日。こんな折にでも親孝行をと旦那さんの実家になおくんを連れて3人でお泊りをさせていただくことにしました。


 海育ちの旦那さんと山育ちの私の間に生まれたなおくんには、海育ちの祖父母と山育ちの祖父母がいます。私たちが実家に帰る度、海に帰れば浜めぐり、山に帰れば野山めぐり、お散歩が大のお気に入りで、祖父母に抱かれるや否や【靴】のサインで「お外に連れてって!」と催促します。

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なおくんの【靴】のサインは両手をグーにして横に揃え、親指どうしをチョンチョンとくっつけたり離したりします。

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 山育ちの私にとっては海の暮らしは見るものすべてが新鮮で非常に興味深く感じます。日差しが暖かく久しぶりに過ごしやすい休日、歩いてすぐの浜に、旦那さんとなおくんと三人で海を見に出かけました。沖には何隻かの漁船、威勢よく水飛沫をあげながらこちらに向かってきます。漁を終え、私たちが遊んでいる浜のすぐ先の漁港に帰ってきました。砂浜で遊んでいたなおくんも、見つけた小瓶を握りしめたまま顔を上げて、【船】のサインで大喜びです。

「なおくん、お船たくさん帰って来たねぇ。大漁だといいね」と私。

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なおくんの【船】のサインは親指を上にして両手の先を付けて三角を作り、船の舳先を表します。

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 漁にも様々な方法があるそうですが、その一つに定置網漁があります。海に仕掛け網を張り、魚が入るのを待って網ごと魚を引き上げる漁の方法です。網の調整が難しく、魚が入りすぎても引き上げる際に魚の重さで網が上がりません。それならばと網を調整すると今度は逆に魚が入らなくなってしまうこともあるのだとか。海流や風向きにも影響を受けやすく、仕掛けた網にどれだけ魚を入れてどれだけ逃がすか、天気と海と魚相手の知恵比べ、、徹底した管理が必要なのだと知り驚きました。


 さて、旦那さんのお母さんはお料理が上手で、新鮮な海の幸がずらっと並ぶ食卓は豪華絢爛、民宿のごちそうかと思うぐらいです。中でも地元消費が中心のあまり流通しない「うつぼ」や「さめ」、「真珠の貝柱」などの郷土料理は珍味です。

 山育ちの私は「うつぼ」が食べられることさえ知りませんでした。伊勢えび漁の際に同じ網にひっかかってあがるそうで干物にするのがご当地流、地元の人たちは、それを「うなぎ」と呼んでいます。「ぎょっ」とする皮の柄と独特の香りに一度は尻込みしますが、お酒に良く合う絶品で旦那さんの大好物です。


 地元の方言と新鮮な魚、海が見渡せる縁側。耳を澄ますと波の音が聞こえてきます。空にはとんびが悠々と飛んで海がキラキラと光っています。そうか、旦那さんはこんなきれいな景色を見ながら育ったのかと、ちょっとうらやましくなりました。


 我が子に、海育ちの旦那さんからは海の楽しさを、山育ちの私からは野山の楽しさを教えてあげたいと思うのです。