作成中のC55、長期間の加工になっていることと、蒸気機関車ならではの複雑な造形の影響もあってかなり見た目がよろしくない。
キットを開封した時の真鍮のキラキラとした輝きはどこへ。
この見た目のよろしく無さの理由をよくよく観察してみると
いくつかの種類がありそう。
たかが模型、されど模型。せっかくなのでこの汚れの正体と解決策少し科学的・化学的視点を込みで調べてみた。
●汚れの正体
1.真鍮自体の黄ばみ
真鍮という素材は手の油や、空気中の酸素の影響で自然とくすみが出る
2.さらに進んだ黒ずみ
黄ばみがさらに進むと黒ずみに進化
3.赤変色
真鍮は銅が約7割と亜鉛が約3割の2種の金属でできているらしい。
半田で加熱をしすぎた時は、銅の酸化が進んで赤色に。
又、強力な酸で洗浄すると、亜鉛が溶け出して銅の赤色に。
4.白よごれ(?)
これは真鍮自体の反応というよりも洗浄時に使用した洗剤(石鹸)や、水道水の中のカルシウム成分の残渣
5.真っ黒な固着状汚れ
黒は黒でも表面の変色にとどまらず若干の凹凸感があるもの。
ハンダ付け時に使用したフラックスや、周囲に付着していた汚れの焦付き
6.緑青
流石に模型加工の短期間で発生するものではないが、中古模型などでは発生し得る、銅の錆。緑青。
ちなみに昔は緑青は人体に対して有毒とされていたが、今では無害なんだそうで。
別に緑青の成分が変わったわけではないのだけど、そういうものらしい。
ちなみに⇩が洗浄前の状況。白、赤、黄ばみ、黒。汚れのオンパレードの様な。
●次に汚れ除去と、洗浄について
真鍮の輝きを取り戻すための最高の方法をはなにかというと、”表面を研磨”すること。
白も赤も黄色も黒も、基本的には真鍮の表層部の非常に浅い部分もしくは表面上で発生する化学反応なので表面を研磨する程度で元の”金色の地肌”に戻すことができる。
ただし、今回は、配管などの入り組んだ模型が対象であり研磨は難易度が高い。
今回は洗浄による加工途中の模型のリフレッシュと、自身のモチベーションUPを目的として、色々と調べて洗浄実施した後の状態が↓
元通りの金色の地肌というわけにはいかないが、全体的な黒ずみ、白汚れは大分軽減された感じはする。洗浄を何回か繰り返すともう少し黒ずみも除去できるのかもしれないが、今回の目的は”金ピカに戻すこと”ではないので、今日のところはこれでよしとしておこうと思う。
日々の加工後にここまで丁寧な洗浄を毎回行う必要はないが、定期的に実施することでさらにきれいな状態を保つこともできると思われる。
以下、今後の参考のために、実施した洗浄の方法と使用したものを順に整理
洗浄は以下の6ステップで実施。
Step1 中性洗剤+温水洗浄
Step2 クエン酸温水洗浄
Step3 薬液洗浄(チオグリコール系)
Step4 重曹水洗浄
Step5 IPA洗浄
Step6 温風乾燥
詳細は以下。
Step1 中性洗剤+温水洗浄
用意するもの:台所用中性洗剤(食器洗剤でもよし。マジックリンだとなおよし?)
目的:フラックス残渣、油、白残り除去
手順:洗面器に50度くらいのお湯を準備。
台所用中性洗剤を少量投入
真鍮製の模型を浸漬して、柔らかいブラシ(絵の具ブラシでよいかと)で全体を軽くこする。
洗浄後は流水できれいに洗剤成分を流しておく。
この段階では真鍮地肌の色合いに大きな変化はなし。白い汚れは濡れると見えなくなる。
Step2 クエン酸温水洗浄
用意するもの:クエン酸(100均で売っているものでOK)
目的:軽い黒ずみ除去、白い金属塩除去(フラックスや、サンポール洗浄に含まれている塩酸系成分とが真鍮と反応して生成されたもの)
手順:こちらも洗面器に50度くらいのお湯を準備。
クエン酸を投入(濃度は3〜5%程度=100ccあたりクエン酸を小さじ1〜2杯程度)
真鍮製の模型を浸漬して、柔らかいブラシ(絵の具ブラシでよいかと)で全体を軽くこする。これだけで全体が明るくなった感触あり。
洗浄後は流水で成分を流しておく。
Step3 薬液洗浄(チオグリコール系)
ここで登場の薬品洗浄
用意するもの:チオグリコール酸アンモニウム系洗浄剤
つまりは:マッハ模型のブラスクリーンだったり、ブラスケアだったり、Amazonでみつかる錆取り剤
目的:まだ残る黒ずみ、酸化物の除去
手順:チオ系洗浄剤は中性であり、取り扱いは容易(≒安全)ではあるが、パーマ液の主成分であり、匂いは若干気になるので、よく換気のできる環境での作業をおすすめ。
このチオ系洗浄剤は、酸化被膜を優先的に除去する効果が高いものではあるが、ベースの真鍮、ハンダにもわずかながら侵食する効果はあるらしい。
原液につけてしまう方法もあるようだが、使用後の液の保管(何回か再利用はできる)も面倒なので、今回はAmazonで購入のジェル状洗浄剤を水で5倍程度に薄めたものを筆塗りしてみた。
使い捨てではあるが、粘り気のある洗浄剤を筆塗りにすることで使用量は抑えることができると期待。
1分ほどで表面の黒ずみが徐々に明るくなり、模型から滴り落ちる液は黒色に変色していくのがわかる。
数分程度筆でこすり洗をしたら、再度流水でよく洗う
Step4 重曹水洗浄
用意するもの:重曹(これも100均で入手可能)
目的:Step3までの酸系の洗浄後の中和作業。
手順:洗面器などに薄い重曹水を作る。100mあたり小さじ1〜2杯でOK.
模型を浸漬させて1〜2分ほど筆で細部をこするように洗浄
終了したら、これまで同様流水でよくすすぐ。
酸系の洗浄剤が残留しても白い粉上の汚れが発生するが、重曹が残っても同じように白い汚れになって残る可能性があるので、重曹洗浄はあくまで薄め+よく水洗するといいらしい。
Step5 IPA洗浄
用意するもの:IPA,エタノール(消毒用エタノールなどで)
目的:水残りの防止、乾燥促進、白残り防止
手順:手順4で水洗を完了した模型は軽く水を切っておく
IPAを容器に10~20cc程度取り出し、筆で模型全体になじませるようにかける。特に配管の間や、隙間などに行き渡るようにする。
目視では確認できないが、純度の高いアルコールが、隙間に残留していた水分を追い出してくれる。
Step6温風洗浄
用意するもの;ドライヤー
目的:IPA,水の除去、乾燥
手順:ドライヤの温風を当てて、模型の表面を乾かすだけ。
前後、左右、裏表、まんべんなく温風を当てて十分に乾かすこと。
水だけのときに比べるとIPA洗浄を行った場合は、水切れの速さ、乾燥の速さがかなり改善する。
今回の洗浄で、白汚れはだいぶ改善。黒汚れも軽減。あいにく赤色変色はベースの真鍮の脱亜鉛によるものなので薬液洗浄では改善しないことは確認できた。
これまでに何度かサンポール洗浄を行っておりその影響が大きいのかもしれない。
なお、金色地肌に戻すor維持することが目的ではなく、塗装作業前の洗浄+下地鳴らしとしては上記の洗浄を行えば十分なのではないかと想定中。
(白汚れは塗膜剥がれの原因になるようだが、多少の黒、赤変色は塗装には影響は無いらしい。)