炽道
Falling Into You 全26話

監督:伊峥(苍兰诀・大宋少年志)

原作:twentine(点燃我,温暖你)


あらすじはコチラから



個人的に感じ入ることが多い作品だったため

今回の感想はお堅くて長いです(※当方比)

ネタバレはしていないつもりですが

多少は内容に触れますのでご注意下さい



感想

いわゆる年の差恋愛ドラマは

昔からたくさん作られていて

男性の年が上のものに関しては

好きな作品がたくさんあるのに

女性が上(=姐弟恋)となると

最後まで試聴できることすら稀で

いつしか姐弟恋モノに

謎の苦手意識を持つようになっていた私


劇中で、男主の母親が

女主との関係を反対する理由の一つに

八歳の年齢差を挙げるのですが


〈あなたと旦那さんの間にも

八歳の年の差があるじゃないですか〉


と言う女主に、母親はこう答えます



夫は男で、あなたは女よ

一緒にしないで 


すると女主は、こう切り返すのです



何が違うのですか?


そう、何が違うんだろう?

いち視聴者の、女の私からしても

男が上の作品だと好ましく思えることが多いのに

女が上だとそうじゃない…いや、違う

好ましく感じさせる

内容のドラマがいかに少ないか

それこそが苦手意識を生んでいた原因なんだと

このドラマを見終わって、私は悟りました(大げさ?)


男主を演じた王安宇の良さについて

TOKOがエモいだのキスが最高だのと

さんざん熱く語ってはきましたが

(その節は、お付き合いありがとうございましたw)

(本当にエモくて最高ですよ(ಡωಡ) )



実のところ、私にとって

男主の良し悪しはさほど重要じゃない

そのドラマを好きになるきっかけの

一つではあるけれど、それが全てではない


女主がどう描かれるか

好ましく思えるかどうか

のほうが、姐弟恋モノでは特に

最重要案件だと思っている


その意味で、私にとって本作は

文句なし!最高!完璧!な

姐弟恋ドラマだった

と言わざるをえない


成り下がらない女主

男性が年上の年の差恋愛ものにおいて

男は、強く賢く頼りがいがあり

年下の恋人を守り、導く…

そんな役柄が多いのに

女が年上となるとそうではない

 

設定からしても

なにかしら問題を抱える年上女性を

年下の男性が恋愛指南したり

自尊心を回復させたりする物語が

昔も今もとても多い(嫌いじゃないけどね?)


たとえそうじゃなくても

最初は強く賢く見えた女主が

次第に弱さや可愛らしさを垣間見せてきて

いつのまにか男が守ってやりたいと思う

可愛らしい女に成り下がってしまう

そんな姐弟恋モノが本当に多くて

正直、辟易している


可愛い女、守られる女を否定してるわけじゃない

ただ、男性との関係を対等

あるいは男性を上位にするために

女を成り下がらせてる気がして

見るに忍びない、いたたまれない気持ちに

させられることがとても多かった



その点、炽道の女主・罗娜は

八歳年下の恋人ができても

けして成り下がりはしない


彼女はいつも強く賢く凛々しく潔く

アスリートである恋人の歩む道を

明るく照らし、導き続けた



彼女は、恋愛のために何かを投げ出したり

諦めたりすることはしない

彼の歩調に合わせるべく

後ろに下がったりもしない

一歩二歩進んだ高みから歩みを見守り

自分のいる場所へ、恋人を引き上げようとする



年の差を過剰に気にしたり

負い目を感じたりすることもない

むしろ恋人より見識が広いことを

幸いにすら思っている(ように見える)


常に自信に満ち溢れている彼女は

ジャージ姿だって充分に美しかった



彼女は結局、最後まで可愛らしい女に

成り下がることはなかったし

恋人である段宇成も

あなたのために強くなりたい、とか

あなたを守れる男になりたい、などと

陳腐な台詞をついに言わなかった

代わりに彼はこう言った


〈あなたの誇りになる〉


そして、こうも言った 


〈あなたの胸に住んでいる少女を

俺の前では隠さなくたっていいんだよ〉




幼稚で子供な男主

初登場時、男主である段宇成は高校生で

最終話の時点でもまだ学生だ


劇中の大人たちが彼を

小子(坊主)とか臭小子(クソガキ)などと呼ぶように

段宇成は本当に幼稚で子供だ


しかしこの幼稚な子供は

自分が子供であることを隠さない

年上の女性の恋人になった後も

変に背伸びをしたりしない


素直に喜怒哀楽や愛情を表現し

度々彼女に甘えたり寄りかかったりする

彼女の懐で泣いたりもする

それが逆に、彼の度量の大きさを感じさせた



彼には、好きなものを好きと言える

まっすぐでひたむきな心と

それを手に入れるためなら

どんな努力も厭わない勇気がある


そして、努力すれば夢は叶う

情熱は才能を凌駕する、と

本気で信じている正真正銘のガキだ



けれど、そのガキの真摯さに

周りの大人たちは胸を打たれ

ついには彼を認めざるをえなくなる


周囲をも明るく照らすような

太陽のような魅力が、彼には確かにある



女主のキャラクターが最も重要と先述したが

とはいえ、この男主を愛せないと

物語の魅力は半減してしまうと思う


この作品は、ただのラブストーリーではなく

いち少年の成長譚でも大いにあったからだ



一味違う脇役たち

炽道は、主役二人の競技人生と

その恋愛を主に描いたドラマだ


私はこのドラマがとても好きだが

そう強く感じた瞬間が二度あった



戴玉霞は、宇成と同じ陸上部員で

お世辞にも美形でないし

スタイルが良いわけではない


アジアドラマにおいて、この種の女性は

美しい女主の添え物にされることが多く

たいがいがお笑い要員だったりする


しかしこの戴玉霞は

国を代表する一流のアスリートで

四つ年下の青年に恋をする女性でもある


姐弟恋の女主の多くは

美しい女優が演じているので

内容がいかに現実に沿ったものであっても

どこか非現実的に思えるところがある


女主の罗娜はとても好ましいが

それでも、これは金晨のような女性だから

成立するドラマだな、と何度も思った


けれど戴玉霞は、金晨演じる罗娜とは違い

想い人より四つ年上であることや

彼よりデキる女であることに負い目を感じている

このドラマは、そんな彼女の恋の行方にも

スポットライトを当てている


劇中で、戴玉霞と罗娜が

こんな密談を交わす場面がある



年下のオトコっていいですよね

思いやりがあるし



従順だし



若いから体力もあるし


これは、金晨のようにイケてる女が

彼女を相手に交わす会話だからこそ意味がある

カフェだかバーだかではなく、合宿中の宿舎で

トレーニングウェアに身を包み

こっそり交わす会話だからこそ意義がある


顔を見合わせてクスクス笑う二人の姿を見て

私はとても嬉しくなったし

このドラマが好きだな、と感じた


同じような感覚に陥ったエピソードがもう一つ



過去記事では一度も触れていないが(ごめんなさいw)

このドラマにも二番手が存在する

それが、迟嘉演じる吴泽だ

ちなみに彼は、同監督作品の苍兰诀にて

云中君を演じた俳優さんでもある


姐弟恋における二番手は、男主とは真逆の

大人の男の代名詞として描かれることが多い

しかしこの吴泽は

単に年だけ食ったような普通の男性だ


彼は、罗娜とは違って

コーチという職にいまいち情熱を見出せず

無為に日々を過ごしているように見える

それは恋愛面でも同じで

密かに好意を寄せている彼女に

強くアプローチをすることもない



主役二人が恋人同士になった時

当然、この味のある二番手は今後

時々顔を出してドラマに風味を添えるだけの

役割になるのだろうと思った

だが、吴泽の人生は、突如動き始める


彼の情熱が目覚めた、とある瞬間を見て

腐ってもコーチだったんだな

お飾りの二番手じゃないんだな、と

感動めいた感情が沸き起こったし

彼の男泣きには、共に涙した

そして泣きながら

このドラマが好きだなと再び思った



力のある製作陣

ドラマの感想を綴るとき

いくつかあるイメージポスターの中から

自分の中での印象により近いものを

選ぶように心がけているのだが

今回ばかりはとても迷った


男主を中心にして描かれる

アスリートたちのドラマとしてなら

以下のようなイメージだが



ラブストーリーとしてならこうだ



青春スポ根と激甘なラブストーリー

まるで雰囲気が違う二つのメインストーリーは

どちらに比重を置くこともなく調和が取れていて

製作陣の力量を感じたし

斬新なカメラワークや焦らすような演出の

ラブシーンでは、特にそれを感じさせられた


このドラマが

どれほど原作に忠実に作られているのか

改変されているのかはわからないが

ドラマを仕立て上げたのが

この製作陣であることに変わりはない


元来の姐弟恋モノとは違い

女が強くてもいい、男が弱くてもいい

と言ってくれているような

このドラマを指揮したのが

女性ではなく男性であることがとても嬉しい


とはいえ、細部に渡って完璧だったかと

問われるとけしてそうではない


たとえばこのドラマは

2015年からの数年間を描いているのだが

ノスタルジックさを打ち出すためか

画面は常にモヤがかかったようになっていて

正直、見にくく思うことが何度もあった

これは視聴者から、かなり批判されたようだ


他にも言及したい点は二、三あるが

それを含めても、このドラマを好ましく思うのは

私が女主の視点に立てる年齢であることが

(だいぶ年上ではあるが)

大いに関係しているのかもしれない



もっと若い世代の視聴者には

女主が、若い男をたぶらかすババァに

見えたかもしれないし

上の世代の視聴者には

教え子に手を出す不埒な指導者に

見えたかもしれない

そうなると、とても見ていられないだろう


けれど、もし私が十代の頃に

このドラマを見ていたとしても

罗娜のような女性になりたいと憧れたろうし

宇成のような男性に出会って

愛されることを夢見ただろうと思う


(もし自分の息子が将来

罗娜のような女性を連れてきたら

手放しで彼を賞賛したいが

こればかりは何とも言えない笑)


人の好みは千差万別で

皆が自分と同じような感想を抱くとは

けして思ってはいない


けれど、多くの人にこの物語を見てほしいし

多くの人にこの物語を好きになってほしいと

心から願わずにはいられない


素敵なドラマに出会えてよかった…

ありがとう!!


(ここまでお付き合いくださった

皆さんにも、ありがとう!)