丈にとっての力石徹は、憎たらしいライバルではあったが、実はそれ以上に、丈を一人の男として認め、本気でぶつかってきてくれる、本当の意味での「ともだち」だった。
丈は、力石が死んで、もう逢えなくなって、ようやくそのことに気づいたのだった。
丈はその後、力石の“想い”に応えるかのように、より強いボクサーへと成長していく――。
さて、28日、安倍晋三が辞意を表明した。
表向きの理由は体調の悪化だが、もうずいぶん前から、経済雑誌「ZAITEN」(財界展望新社)などが安倍政権が末期的な状況であることを伝えていたから、さほど驚きはしなかった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20200830/16/jiroumaru/56/cc/j/o1097061714811978644.jpg?caw=800)
【KyodoNews】
安倍首相が辞意表明 体調悪化、職務継続困難
晋三の辞意表明を受けて、沖縄県知事の玉城デニーさんの記者会見。
【琉球新報】
安倍首相辞意に玉城沖縄県知事「大変驚いている」
流石に、玉城デニーさんは紳士である。
安倍晋三に対しては、何かと思うところがあるだろうに、それは措いておいて、「1日も早い健康回復を願う」と述べた。
矢吹丈と力石徹は、ライバル同士ではあったが、同時にお互いを一個の人間として認め合った仲でもあった。
玉城デニーさんは、安倍晋三を一個の人間として認めていればこそ、常に対話を要求してきたのだろう。しかし、晋三の方では玉城さんをはじめ沖縄の人たちをどう思っていたのだろう。
いや、沖縄の人たちだけでなく、自分のオトモダチ(アベ友)以外の人たちを、一個の人間として認めていなかったのではあるまいか。
沖縄の多くの人たちが米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対していたにもかかわらず、晋三がその民意にきちんと向き合うことはついに無かったのだ。
ところで8月29日付の「琉球新報」は、中国の共産党系の新聞が晋三について、「日中関係の改善に努力した」と評価しており、晋三の辞任表明を受け、中国は「日本を味方に引き入れ、日米を分断するべきだ」と主張しているという、中国国営通信、新華社の報道を紹介している。
晋三が「日中関係の改善に努力した」というのは、中国側の報道機関が報じているのだから事実なのだろう。
ならば、辺野古への米軍基地移設は何のためなのだ? 中国からの侵略に備えるためとされているが、日中関係が改善されれば、その必要は無くなるはずではないか。
けっきょく、晋三は、中国を本気で脅威だとは考えていないのだ。
百歩譲って、沖縄に米軍がいるおかげで、日中関係の改善が可能になったのだとしても、辺野古はダメだろう。
ジャーナリストの渡辺 豪さんが2017年4月18日に発表した記事によれば、米軍は有事の際は辺野古なんか無視して、那覇空港を使うと言っているのだという。
もう多くの人が知っていることだが、辺野古の海底には軟弱地盤があって、そこに基地なんか造ろうとしても、半永久的に完成しない。
辺野古への基地移設は、日米が普天間返還合意した1996年当時の官房長官だった梶山清六が決め、そのまま梶山を師と仰ぐ現在の官房長官・菅義偉に引き継がれたのだ。
渡辺豪さんの当該記事↓
「使えない」辺野古新基地と幻の代替案
https://www.businessinsider.jp/post-19525
もともと晋三の周りには、菅義偉をはじめロクな人間がいないが、「安倍最側近」を自認する首相補佐官兼秘書官の今井尚哉は、文部科学省の頭越しに全国の学校の一斉休校を決めたり、国民への現金給付をめぐる補正予算組み換え騒動で大ヒンシュクを買った。
その今井尚哉に首相秘書官に抜擢された「官邸の金正恩」こと佐伯耕三は、思い付きで全世帯へのアベノマスクの配布を進めたり、晋三が人気歌手の星野源さんと勝手にコラボしたステイホーム動画をネット配信し、国民感情を思いっきり逆撫でして、これまた大ヒンシュクを買った。
今井と佐伯は経済産業省(経産省)の出身だが、戦後最長政権を裏で操ってきたのが、その経産省なのである。
経産省経済産業政策局長と内閣官房日本経済再生総合事務局の仕切り役を兼ねる、やはり経産省出身の新原浩朗は、新型コロナウイルス対策をめぐる利権を経産省で独占しようと、持続化給付金や観光奨励策「Go To キャンペーン」事業で他の省庁を排斥しようとしたものの、電通と経産省の癒着ぶりが報道されたものだから、方針撤回せざるを得なくなった。
以上、「ZAITEN」9月号が伝えてくれている事柄です。同号には他にも興味深いことがたくさん書いてありますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
さて、同じ「ZAITEN」の先月発売された8月号は、「さらば! 安倍晋三」と題した特集記事を組み、30人の著名人からの晋三への退場勧告を載せている。
その中の、作家の島田雅彦さんの言葉を紹介しましょう。
島田さんは、晋三がなかなか辞めなかった理由をこう説明しています。
(以下、引用)
その理由は明らかで、これはプーチンや習近平にも共通していることですが、単純に「辞めたら逮捕される」からです。まぁ周囲から持ち上げられて独裁者になると、途端に合法と非合法というものの区別がつかなくなるのでしょう。警察、検察、マスメディアまで自分のコントロール下に置いてまで自分の犯罪を一切不問にしようとしました。安倍が首相を辞めた時にはきちんと立件されて起訴、有罪にならなければ、厳密な意味では日本には国民主権の民主主義は機能していないということになります。
(引用、終わり)
さあ、ついに晋三が辞めることになった。
矢吹丈と力石徹は、損得勘定を超えた友情で結ばれていたが、損得勘定だけで結ばれたアベ友たちは、晋三が辞めた後どうするのだろう。
「アベ友たちの明日はどっちだ?」
(↑藤岡重慶さんの声で)