碓氷 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

群馬県の松井田に行った。

 

仕事で向かうのなら着物で行くこととなる。

 

寺に勤めているからだ。

 

坊主なのである。

 

今回は野暮用である。

 

だから、半袖短パン姿だ。

 

朝5時に東京を出発した。

 

関越自動車道をゆっくりと走る。

 

1時間程運転していると山がみえてきた。

 

そのまましばらく進み上信越道へ入る。

 

半時間すると、岩山があらわれてきた。

 

(これが妙義山か)

 

鋭く切り立った山肌である。

 

格好いい。

 

人を寄せ付けないような気高さも感じる。

 

松井田妙義で高速道路を降りた。

 

早速用事にとりかかる。

 

要件は昼前には終わった。

 

(後は帰るだけだ)

 

とはいうものの、ここまで来たのだ。

 

すぐに戻るのではもったいない。

 

(そうだ)

 

軽井沢の近くに両墓制の墓所があるはずだ。

 

何かの本で読んだ記憶があった。

 

松井田ならば、碓氷峠を越えれば軽井沢である。

 

(よし、越えてみよう)

 

難所で有名な峠である。

 

一度は通ってみたい。

 

運転には自信はない。

 

だが、迷わず決断した。

 

「磔(はりつけ)河原」

 

やがて、身の引き締まる案内板がでてきた。

 

「碓氷関所跡」

 

(そうだったのか)

 

納得である。

 

「これより碓氷峠」

 

標識があった。

 

いよいよだ。

 

「カーブ1」

 

右手に立て札があった。

 

(いくつのカーブがあるのかな)

 

「カーブ12」

 

(いいねぇ!)

 

だんだんと峠の感じが出てきた。

 

「カーブ45」

 

(まずいな……)

 

細くて曲折ばかりの道である。

 

「カーブ119」

 

(いつまで続くんだ……)

 

不安になってきた。

 

「カーブ162」

 

(どうなっているんだ……)

 

昔のひとは、よくぞ歩いて越えられたものである。

 

「カーブ184」

 

軽井沢町の案内もあった。

 

ようやく直線道路となった。

 

(ふぅ~)

 

なんとか無事に越えられた。

 

想像をはるかに上回る険しい峠だった。

 

古の人のたくましさを、ひしひしと感じた。

 

(そういえば……)

 

昼ご飯を食べていなかった。

 

それどころではなかった。

 

(コンビニの菓子パンにしよう)

 

甘いパンと缶コーヒーは大好物である。

 

それに、軽井沢はお洒落なお店ばかりである。

 

自分のような者には敷居が高すぎる。

 

 

お釈迦さまの教えです。

 

『「尊師さま。この心なるものは、静め安定しがたいものです。」

 (「カーマダよ」と、尊師は言われた。)

〔尊師いわく、―〕

「かれらは、静め安定しがたいものを、静め安定した。かれらは、諸々の感官の安らぎ静まるのを、楽しんでいる。かれらは死神の網を断ち切って、聖者(立派な人々)として歩む、カーマダよ。」

〔カーマダいわく、―〕

「この道は、行きがたく、険しいのです。聖者たちは、行きがたき、険しい道をも進んで行きます。聖者ならざる人々は、険しい道において、頭を下にして倒れます。聖者の道は平らかです。聖者は険しい道においても平らやかに歩むからです。」』

 

【岩波文庫 ブッタ・神々との対話 中村元先生訳P114】

 

ありがとうございました。