山桜 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

寺に勤めている。

 

坊主である。

 

今の寺には20年近く居る。

 

坊主の仕事は、一掃除、二勤行である。

 

掃除は日常の大部分をしめる。

 

その中で、墓掃除はなかなかしんどい。

 

小さな町寺だが、1人で掃除をするとなれば広い。

 

とはいうものの、墓掃除では自然をかんじることができる。

 

四季の移り変わりが肌でわかる。

 

今の都会は、コンクリートとアスファルトで囲まれている。

 

どこでも冷暖房が完備されている。

 

自然は少ない。

 

だから、その部分では味わいのある仕事と言える。

 

例えば春はどうか。

 

墓場の片隅に石の椅子が置いてある。

 

その前にヤマザクラがある。

 

お彼岸頃になると、つぼみがふくらみはじめる。

 

(そろそろ暖かくなってくるな)

 

やがて白い花が咲く。

 

同時に葉も茂ってくる。

 

緑と白のコントラストが綺麗である。

 

ヤマザクラが花開く少し前、墓所のあちこちでムラサキハナナが咲き乱れる。

 

背丈は30センチ程だ。

 

紫色の小さな花を咲かせる。

 

同じ頃、カタバミも可愛らしい姿をみせる。

 

やはり花は小さい。

 

ただし、こちらは黄色の花である。

 

シャガも美しい。

 

背丈は50センチくらいである。

 

白地の花に青い斑点と黄色の線模様が入っている。

 

墓の間にある落ち葉を竹の細い棒でかきだす。

 

するとその隙間に芋虫がはっていることがある。

 

(蝶になるのだろうか、それとも蛾だろうか)

 

緑色のものもいれば、茶色や黒色のものもいる。

 

夕方になれば、ブヨがでてくる。

 

うっかり短パンなどで掃除をしていると刺されてしまう。

 

どういうわけか、足下のみを刺してくる。

 

刺されたところには急いで薬を塗る。

 

刺された部分から少し血を抜き、そこへ薬を染みこませる。

 

これを怠ると夜は痒くて仕方がない。

 

(あと何度桜をみることができるだろうか)

 

50代になり、花を眺めてはそんなことを考えるようになった。

 

(掃除が面倒だから木を切っちゃいたいよ)

 

若い頃に思っていたことである。

 

年を重ね、花や虫の見え方がかわってきた。

 

自然の営みは毎年同じはずである。

 

ならば、かわったのは自分となる。

 

(さて来年は何を感じるだろうか)

 

それは今考えてもみてもわかるまい。

 

 

お釈迦様のお言葉です。

 

『汚れた見解をあらかじめ設け、つくりなし、偏重して、自分のうちにのみ勝れた実りがあると見る人は、ゆらぐものにたよる不安に執着しているのである』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P177】

   

ありがとうございました。