寺に勤めている。
坊主である。
坊主の前は、テニスコーチをしていた。
テニスは今も続けている。
週に一度、趣味として継続している。
「スポーツの秋」
そう言われるだけのことはある。
テニスをするにも清々しい季節である。
しかし、他の季節はそうはいかない。
春は花粉が鬱陶しい。
眼はかゆく、鼻水はとまらない。
冬は寒い。
身体は硬直する。
ラケットを持つ指先は、乾燥でアカギレになる。
なかでも夏は一番厄介である。
暑さはかなりこたえる。
しかし、最も面倒なのは日焼けである。
太陽光だけではなく、コートからの照り返しも存外うける。
2時間もいれば、すぐに黒く日焼けしてしまう。
「健康的ですね」
通常はそう言われるであろう。
ところが、坊主が過剰に日焼けしていると具合が悪い。
(ゴルフ好きの遊び人なのかな)
そんなふうに誤解されやしないかと心配になる。
擦り傷などの怪我も気にかかる。
ネット際におとされる。
頭のうえを抜かれる。
現在、50才である。
(追いかけなくてもいいか)
だから、諦めても問題ない。
だが、性分がそれを許さない。
どんなボールでも全力で追いかけないと気が済まない。
一方で身体能力は衰えてきている。
足のもつれが多くなった。
転倒する回数も増えた。
手、肘、膝などに傷がたえない。
ときには、フェンスに激突して毛のない頭部を傷にすることもある。
日常ではできないはずの創痕である。
「お坊さん、どうしたんですか」
お客さんからきかれることも、しばしばある。もちろん、正直に答えてもよい。
しかし、
(遊びすぎだよ)
そう誤解されるのは勘弁だ。
そこで、いずれの場合にも返答をきめていた。
「草むしりをしていて日焼けしました」
「掃き掃除をしていて木にぶつけました」
いずれも無難な答えだと自負していた。
ところが、
「そんなのばれてるよ」
先日、テニス仲間の友人にこの作戦を話してみたところ、そう言われた。
まずい。
これでは、「嘘も方便」ではなく「法螺を吹く」になってしまう。
坊主にあるまじき行いだ。
今後は事実を正直に答えた方がよいようである。
お釈迦さまのお言葉です。
『称讃してくれる愚者と、非難してくれる賢者とでは、愚者の発する称讃よりも、賢者の発する非難のほうがすぐれている』
【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P240】
ありがとうございました。