税事務所調査 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

税事務所の調査があった。

 

寺の状況を確かめるらしい。

 

お2人が約束の時間にいらした。

 

「よろしくお願い致します」

 

身分証を提示し、ご挨拶下さった。

 

「どうぞ、おあがり下さい」

 

こちらは、会計書類の写しなどを提出する。

 

後ろめたいことは、もちろんない。

 

しかしながら、なんだか緊張する。

 

時折、車の運転中、パトカーが真後ろに来ることがある。

 

(なんだなんだ)

 

何もしていないが平静ではいられない。

 

ソワソワしてしまう。

 

(堂々としいればいいんだよ)

 

やましいことはないのだから、それでいい。

 

だが、かえって不自然なような気もする。

 

その時の感覚と似ている。

 

「こちらです」

 

本堂、寺務室、客間、控え室、台所、倉庫、便所などの立ち入りが始まる。

 

(全部開けておこう)

 

どこもかしこも、扉を開いておいた。

 

手間を省けるようにするためである。

 

また、調査に前向きであることを示す意図も込めていた。

 

「おそらく30分で終わります」

 

所要時間だ。

 

(そんなにかけるのか……)

 

小さな町寺である。

 

一回りするだけなら20秒程しかかからない。

 

その広さを30分もかけて調べる。

 

くどいようだが、後ろめたいことはない。

 

しかし、神経は張り詰めてくる。

 

「客間に衣がおいてありますが、只今、干しておりまして」

 

口の中が乾きながら説明をくわえる。

 

(何をみているのだろうか)

 

そのようなことを知る必要はない。

 

それは、わかっている。

 

だが、気にかかる。

 

「では、これで終わります」

 

予定よりも早かった。

 

15分くらいで終了した。

 

(ふぅ~)

 

お二人がお戻りになった。

 

少し落ち着いた。

 

(調査結果はどうだったんだろう)

 

確認するのを忘れてしまった。

 

パトカーが後ろに付いた際、まれに停車を求められることがある。

 

「トランクも開けてもらえますか」

 

そう指示されたこともある。

 

「刃物は持っていませんか」

 

こんなことをきかれたこともある。

 

(えっ……)

 

凡人が、このような質問をうけるとかなり動揺する。

 

調査員からは驚くような質問をうけなかった。

 

そして今のところ、その後の連絡もない。

 

「決まりにしたがって運営できている」

 

そのように理解しておくことにしよう。

 

 

お釈迦さまのお言葉です。

 

『およそ苦しみが起るのは、すべて動揺を縁として起る。諸々の動揺が消滅するならば、もはや苦しみの生ずることもない』

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P167】

 

ありがとうございました。