雪を越えて | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

山形に定期的に行く。

 

出張である。

 

私は寺に勤めている。

 

山形でもお寺の儀式のお手伝いをする。

 

春、秋、冬の年3回お世話になる。

 

各季節、感じ入るものがある。

 

春は紅秀峰や佐藤錦の花が綺麗に咲いている。

 

秋は田園が黄金色に染まり美しい。

 

その中でも冬は衝撃を受ける。

 

東京育ちには考えられない光景が広がる。

 

とにかく雪一色なのである。

 

もちろん、そこで生活する方々の日常にも感心してしまう。

 

まず、驚くのは雪道の運転である。

 

私は絶対に降雪時には運転しないことにしている。

 

東京でも雪が降ることがある。

 

以前、運転を試みた。

 

そうしたところ、家をでるところで、早速スリップしそうになったのだ。

 

ところが、山形の人たちは、普段とあまり変らないように運転している。

 

私にはそうみえる。


とても上手なのだ。

 

もちろん、道路には雪が積もっている。

 

「スリップしないんですか」

 

同乗している際、怖くなり思わずたずね。

 

「大丈夫だよ」

 

しかし、あっさりとした返事である。

 

全く意に介していない。

 

次はエンジン式除雪機である。

 

どこのお寺さんにも置いてある。

 

「おはようございます」

 

宿からお手伝いのお寺へ到着する。

 

「今、住職は雪かきしているから、中で待ってて」

 

すると、奥さまからはそう言われる。

 

「おまたせ」

 

しばらくすると住職さんが戻ってくる。

 

外は極寒なのに、汗だくになっている。

 

冬の朝は除雪から始まるそうだ。

 

さらに、暖房機が凄かった。

 

山形の冬はエアコンだと少々物足りないらしい。

 

確かにどのお堂にも大きな石油ストーブが設えてある。

 

しかも、二台三台と置いてある。

 

タンクには20リットルの燃料が入る。

 

それが二日から三日で無くなってしまうらしい。

 

客間の暖房機に至っては燃料タンクが屋外にある。

 

しかも200リットルも入る。

 

暖房機に直結していると教えてくれた。

 

そして、なにより感服することがある。

 

冬場は、毎日肌をさすような寒さである。

 

にもかかわらず皆さん明るくおおらかなのである。

 

考えてみれば、これほど厳しい環境を毎年乗り越えているのである。

 

少々のことでは心が揺れ動かないのかもしれない。

 

 

お釈迦さまのお言葉です。

 

『病にかかり、飢えに襲われても、また寒冷や酷暑をも耐え忍ぶべきである。かの〈家なき人〉は、たといそれらに襲われることがいろいろ多くても、勇気をたもって、堅固に努力をなすべきである』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P207】

 

ありがとうございました。