海浜墓地 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

幕張の近くで法要をお勤めした。

 

(せっかくだから)

 

読経後は寺に戻るだけである。

 

ここまで来たのだ。

 

ならば千葉の海を眺めなくてはもったいない。

 

京葉道路、千葉街道、東関東自動車道と順に横切る。

 

海岸沿いの道に突き当たったならば右折する。

 

(どこかに車をとめられるところはないか)

 

進行方向左側に意識を向ける。

 

しばらく進むと小さな案内板がめにとまった。

 

「習志野市海浜霊園」と書かれていた。

 

(どんなところなのだろう)

 

気にかかる。

 

さっそく駐車場に車をとめた。

 

小さな橋を渡り入口に向かう。

 

(いいにおいだ)

 

あたりに漂う潮の香りが心地よい。

 

そのまま霊園にお邪魔する。

 

綺麗に区画されている墓地だった。

 

比較的最近に開かれたようにも感じられた。

 

霊園内を少々歩いてみる。

 

各お家の思いがこめられた墓石を拝見する。

 

(あれっ?)

 

すると、あるお墓の竿石が目にとまった。

 

アルファベットが刻まれていたのだ。

 

(キリスト教徒のお宅なのだな)

 

ゆえに、一瞬、そうおもった。

 

ところが、脇に目を向けると卒塔婆が建っている。

 

仏教徒のお宅だったのである。

 

(頭がかたいな……)

 

私の考えは凝り固まっていたようだ。

 

さらに奥へと進む。

 

波の音がはっきりときこえてきた。

 

最も海に近い場所へ行く。

 

そこは合葬墓となっていた。

 

美しくデザインされた立派な墓所だった。

 

その先は海だ。

 

テトラポットに波があたる。

 

砕けてしぶきとなる。

 

それが風にのりこちらまで飛んでくる。

 

まさに海浜霊園である。

 

夕方になれば海越しに西へ沈む夕日がみえるのかもしれない。

 

西の彼方に沈む太陽をみることは、往生浄土をかなえる修行の一つである。

 

ご先祖さまを偲び、西方極楽浄土に思いをはせる。

 

娑婆を生きる我々には大切な行いだ。

 

各地には素晴らしい聖域が多数ある。

 

こちらも、とても素敵な霊域であった。

 

 

金峯山の巫女さまが詠まれた歌のご紹介です。

 

『十万億の国々は 海山隔てて遠けれど 心の道だになほければ つとめて到るとこそ聞け』〈この世から十万億の国々を過ぎて致極楽浄土は、海山を隔てて遠いけれども、心の道さえ正しくて、仏事に励めばすぐ翌朝にでも行き着けると聞いている〉

 

【角川文庫 ビギナーズクラシックス日本の古典 梁塵秘抄 後白河院・植木朝子編P46】

 

ありがとうございました。