定期券 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

寺の最寄り駅から地下鉄に乗ろうとしたときだ。

 

中学生が自動券売機で定期券を購入していた。

 

「ではパネルをタッチして下さい」

 

駅員さんが手順を説明していた。

 

「今時は普通の駅で定期券が買えるのか!」

 

寺の最寄り駅は一路線しかない小さな駅である。

 

だから驚いた。

 

私が学生の頃は、大きな駅に行かないと購入できなかった。

 

例えば大手町駅とか日比谷駅とかだ。

 

定期券自体も今とは違う。

 

その中学生のものはパスモに記録されるようだ。

 

私が初めて購入した定期券は紙製だった。

 

それからまもなく薄いプラスチックカード状のものになった。

 

通学時は制服なので心配ない。

 

しかし、休日、遊びに出かけるときは注意が必要だった。

 

ズボンに定期券を入れたまま洗濯してしまうと、大金が水の泡になってしまうからだ。

 

プラスチックに変わり安心したことを覚えている。

 

最近の学生は、キセルの意味を知っているだろうか?

 

もしかするとその単語自体を知らないかもしれない。

 

本当のキセルは煙管(きせる)である。

 

タバコを吸うための道具だ。

 

ストロー状の筒で、両端が金属でできている。

 

中間は竹など、金属以外の素材だ。

 

だからこれにちなんで、運賃を中抜して乗車することをキセルとよんでいた。

 

もちろんそんなことを行ってはいけない。

 

不正行為である。

 

もっとも今は全て機械制御されているのでズルはできないであろう。

 

近頃の学生は伝言板も知らないはずだ。

 

駅の改札付近に置かれていた、一メートル四方くらいの黒板である。

 

メッセージが書けるようになっていた。

 

「T・Aへ。会場へ先にいくよ。R・A」

 

大概は、待ち合わせの時間に来なかった人への知らせが書かれていた。

 

「友人は伝言板を見るだろうか?」

 

「イニシャルだけでも自分の素性がばれるかもしれない」

 

そんなことを考えていた私は、一度も使ったことはないが……。

 

冷水機も知らないであろう。

 

大概、ホームの中頃に設置されていた。

 

ボタンを押せば冷たい水が飲めるのである。

 

夏の暑い日の部活帰りにはとても助けられた。

 

お小遣いがなくても冷え冷えの水が飲めたのだ。

 

定期購入の光景から、色々と昔のことが連想された。

 

私が学生の頃は、今程便利な社会ではなかった。

 

しかし、それはそれで楽しい思い出です。

 

 

お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。

 

『古いものを喜んではならない。また新しいものに魅惑されてはならない。滅びゆくものを悲しんではならない。牽引する者(妄執)にとらわれてはならない』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P204】

 

ありがとうございました。