どうして…… | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

卒塔婆供養のご依頼を沢山受けた。

 

複数のお宅から同日に連絡が入ったので驚いた。


「せめて卒塔婆供養だけでもお勤めしてもらいたい」

 

このような世情なので、地方にお住まいの方はお参り来るが難しい。

 

だけれどもご供養のことが気にかかる。

 

そこでご依頼をいただいた格好である。

 

お気持ちはとてもよくわかる。

 

早速準備にとりかかる。

 

ちょっと悲しいのだが、「卒塔婆」には忘れられない出来事がある。

 

準備をしていると、つい思い出されてしまう。

 

十年以上前ことだ。

 

「卒塔婆(そとうば)とは言いにくいから、塔婆(とうば)でもいいよね」

 

葬儀の後席で参列者のお一人に質問をうけた。

 

無理に厳密になることもない。

 

「大丈夫ですよ」

 

普通に答えた。

 

「でも、なんで卒塔婆なんて言うのだろう」

 

先程の方が再びつぶやいた。

 

「卒塔婆はストゥーパの音写語です。サンスクリット語に漢字を当てたのです」

 

私は授業で教えていただいたことを返答した。

 

すると……。

 

「ストゥーパは、お釈迦様の御遺骨が祀られている塔だ。だからストゥーパと卒塔婆は別に決まっているじゃないか。いい加減なことを言うな」

 

凄い剣幕でお叱りをうけてしまった。

 

「ちょっと、あなた。若いお坊さんなんだから、いじめないでよ」

 

喪主さんにかばっていただく始末だった。

 

とても優しい喪主さんである。

 

でも……。

 

卒塔婆は、ストゥーパを模したものである。

 

仏さまをご供養するために仏塔を建てる。

 

心を込めて仏塔を建てたなら仏さまからご功徳を頂ける。

 

卒塔婆も同じである。

 

通常は、ご功徳を自らが頂きたいと願う。

 

しかし、法要のときは故人さまにご功徳を回し向けていただく。

 

故人さまの増上菩提を願って卒塔婆を建てる。

 

どうしてかばってもらうことになってしまったのか。

 

何で叱られてしまったのだろうか……。

 

気が小さいので、長い間トラウマになっていました。

 

そろそろ墨の用意もできてきた。

 

気を取り直して丁寧にお書きしよう。

 

 

お釈迦様のお弟子さまの御教えに、以下のお言葉がございます。
 

『四つ辻に、修行完成者のストゥーパをつくらなければならない。そこに花輪、または香料、または顔料をささげ、あるいは礼拝をなし、あるいは心を浄めて信ずる人々は、長いあいだ利益を得、また幸福となるであろう』
 

【岩波文庫 ブッダ最後の旅 中村元先生訳p168】

 

 

ありがとうございました。