三度目の種まき | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

庭の木が少しずつ減ってきた。

 

虫がついた。

 

奇病にかかった。

 

崖が崩れた。

 

理由は色々ある。

 

庭の鬱蒼とした感じは薄れてきた。

 

それはそれでよいのかもしれない。

 

ただ、どことなく寂しい感じはする。

 

もう少し植物があった方が落ち着くように思える。

 

そこで、今年の五月頃小さな花が咲く草花の種を撒いてみることにした。

 

再び植樹することも考えてみた。

 

しかし、大袈裟になると費用も手間も沢山かかる。

 

まずは一人で出来ることから始めるのがよい。

 

理想は、いずれの季節にも少しずつ花が咲いている庭だ。

 

ただし、大きな花ではない。

 

小さな花がそっと咲いている雰囲気がいい。

 

早速、それぞれの季節に咲く草花を調べてみた。

 

ところが、花はわかったものの、その種を手に入れるのが案外難しい。

 

植物のことは全く詳しくない。

 

今まで園芸を行ったこともない。

 

とうぜん、そんな者に上手く準備ができるわけがないですよね。

 

それでも、調べていくと「花の種ミックス」なるものをみつけた。

 

初めから凝ってしまうと、すぐに挫折してしまうかもしれない。

 

気軽にできるものの方が、素人には続けられることもある。

 

そう考えて、「ミックス」を数袋取り寄せた。

 

次は、土を耕さなければいけない。

 

日当たりの良い場所の雑草を丁寧に抜き取る。

 

物置から大きめのスコップと鎌を引っ張り出してきて耕す。

 

その後、袋の説明書を読みながら間隔を空けて種を撒く。

 

水をかける。

 

まずは完了だ。

 

以後は毎日欠かさず水やりをした。

 

朝晩の山門開閉のついでに行えば丁度いい。

 

二ヶ月くらいすると葉が育ってきた。

 

「もうすぐ花が咲くのかな」

 

とてもワクワクしてくる。

 

そんな折、庭の櫻に虫がついていることに気がついた。

 

下にフンが落ちてくるのでわかる。

 

急いで植木屋さんに来てもらう。

 

「いるね。わかった。じゃあ、どうせだから庭の掃除もしておくね」

 

有り難いことである。

 

数時間後、目の前の状況に驚いた。

 

「えっ?」

 

私の育てていた草花が全てなくなっていたのだ。

 

植木屋さんが除草の流れで全てカットしてしまったようである。

 

確かに、植木屋さんには何も伝えていなかった。

 

草花を守る囲いもしていなかった。

 

私が悪いのだ。

 

悲しいことではあるが、当然の結果である。

 

数日後、気をとりなおして再び種を撒いた。

 

「今度こそ」と考えて、囲いも施した。

 

さらに二ヶ月後、今度は柿を取り除いてもらうために植木屋さんをお願いした。

 

カラスやハクビシンがやってきて食い散らかしていくからだ。

 

前回は失敗したが、今回は囲いがすでにしてある。

 

種まきをした草の葉を切られることはない。

 

間違いなくそう考えていた。

 

しかし……。

 

再び葉がなくなっていた。

 

「あと少しで花が咲きそうだったのに」

 

もう種を撒く気力はなかった。

 

水やりもやめることにした。

 

さて、20日後くらいであろうか。

 

何の期待もなしに種をまいた場所を観てみた。

 

「うわー」

 

なんと、不思議なことに一輪だけ花が咲いているではないか。

 

紫色の小さくて綺麗な花だった。

 

うれしかった。

 

「やっぱり色々な花が咲いているところをみてみたい」

 

もう一度種をまく気持ちになってきた。

 

次は絶対に植木屋さんに事情を説明するぞ。

 

 

お釈迦さまの教えに、以下の言葉があります。

 

『他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたこととしなかったこととだけを見よ。うるわしくあでやかに咲く花でも、香りのないものがありように、善くとかれたことばでも、それを実行しない人には実りがない』

 

【岩波文庫 ブッタの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P17】

ありがとうございました。