傘 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

小学生が歩いていた。

 

傘を引きずっていた。

 

案の上、先端の丸い部分は削れていた。

 

懐かしくなった。

 

傘を持っていても使わないときがある。

 

帰りにはやんでしまった。

 

前の日に学校に忘れてきた。

 

そんなときは、ズルズルと引きずって歩く。

 

先端は削られていく。

 

傘の思い出……。

 

激しい雨のときは出来ない。

 

しかし、たいした降りでないときできる。

 

「バッ」とひっくり返して歩くのだ。

 

オチョコにして雨をためる。

 

雨がたまってくれば、「ビシャッ」とこぼす。

 

「うぉー」とか「すっげー」とかと叫ぶ。

 

皆で騒ぐ。

 

雨樋から水が溢れているところがある。

 

そこはスペシャルスポットだ。

 

「おりゃー」

 

みつけるなり気合いを入れて一気に雨水を溜める。

 

初めは慎重に溜めていく。

 

が、だんだん調子に乗ってくる。

 

案の上、誰かが大失敗をする。

 

濡れになる。

 

ここでお開きとなる。

 

ゴルフスイングもある。

 

チャンバラもある。

 

しかし、これらが盛り上がることはあまりない。

 

大概まもなく強制終了となる。

 

「傘を振り回したら危ないじゃないか」

 

「喧嘩になるからやめろ」

 

そんなふうに大人に注意されるからだ。

 

傘の巻き取りの上手い子がいた。

 

ちょっとしたヒーローだった。

 

しまう際、多くの子はグチャグチャにしか巻けない。

 

しかし、1人か2人はシャープに巻ける子がいる。

 

その子が巻くと感動する。

 

「おぉー、カッコ巻きだ」

 

 カッコ巻きとは、かっこいい巻き方の略称だ。

 

折りたたみ傘までも綺麗に巻ける子がいた。

 

こうなると「神」扱だ。

 

ただし、いたのは女神だけだ。

 

男で出来る奴がいるわけない。

 

マンホールの蓋の穴に先端を刺すこともした。

 

道中、マンホールは次々とやってくる。 

 

マンホールには底が空いていない穴もあった。

 

そういう所では、たまった汚れをほじくりかえした。

 

昔の記憶が甦る。

 

懐かしさが増す。

 

おもわず、近くのマンホールを探してしまった。

 

「やめておこう」

 

穴にさし込むのは直前でやめた。

 

抜ききる前に歩き始めたことを思い出したのだ。

 

この年で傘を曲げてしまうの恥ずかしい。

 

 

お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。

 

『矢でも、とらえかたを誤ると、手のひらを切るように、修行者の行も、誤っておこなうと、地獄にひきずりおろす』

 

【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P194】

 

ありがとうございました。