自販機 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

中央線の国分寺駅での出来事だ。

 

中央特快から快速に乗り換えようとホームに出た。

 

発車までには少し時間がある。

 

喉が渇いていたのでホームの自販機へお金を入れた。

 

ボタンを押す。

 

 「ガチャン」

 

コーヒーが落ちてきた。

 

ところが、一つではなかった。

 

次から次へと落ちてくるではないか。

 

妙なことした覚えはない。

 

間違いなく機械の故障である。

 

「なにしてんだ」

 

それなのに、周りの人の視線は冷たい。

 

不思議なもの見るような目をする。

 

慌てて出入り口の蓋は抑えた。

 

取り敢えず缶コーヒーが転がり出ることは防いだ。

 

しかし、このまま放置しておくわけにもいかない。

 

運良く駅員さんが通りかかった。

 

「すみません」

 

恥ずかしながらも大きな声で呼び止めた。

 

事情を話すと、有り難いことに私の話を信じてくれた。

 

やり取りを終えるとまもなく発車時間となった。

 

あわてて列車に飛び乗る。

 

ほっとして座席にこしかける。

 

「あっ」

 

しばらくしてコーヒーを忘れたことに気がついた。

 

もう手遅れだった。

 

逆もあった。

 

場所は羽田空港の近くの公園だ。

 

ランニングをしたので喉が渇いていた。

 

スポーツドリンクを買うために自販機へお金を入れた。

 

ボタンを押す。

 

 「……」

 

落ちてこない。

 

おかしい。

 

お金も戻ってこない。

 

故障に違いない。

 

「電話した方がいい」

 

一瞬、そう考えた。

 

ところが、喉がとても渇いていた。

 

自販機の会社へ連絡するのが面倒だった。

 

そこで、再びお金を入れてみた。

 

やはり出てこない。

 

警報器がなるのはこまる。

 

だから、軽めにたたいた。

 

変化なし。 

 

仕方なしに「お客さま相談センター」の番号を押した。

 

ひとしきり説明をすると驚きの返答がきた。

 

「そちらへ行けるのは、今から3時間後になります。お待ち頂けますか」

 

ジュース一本にそんなに待てるわけがない。

 

落胆のあまり、つい返金の提案までも断ってしまった。

 

「あーあ」

 

再び電話するのも恥ずかしい。

 

後悔しても、手遅れだ。

 

 

お釈迦様の御教えに、以下のお言葉があります。

 

『心が安住することなく、正しい真理を知らず、信念が汚されたならば、さとりの智慧は全からず』

 

【岩波文庫 ブッダの真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P15】

 

 

ありがとうございました。