「不朽の名作の虚構と真実」⑥大山~奥出雲ツーリング【へっツー日誌】 | Jinkhairのバイカーへの道

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こちらは香川県坂出市にある理容室「Jinkhair(ジンクヘアー)」のブログです。店主が好きな「80年代HR&HMのアルバム紹介、ライブレポ」や「カメラ」「バイク」のことなど、日々の出来事などを気ままに書いております。

湯野神社を後にした私は国道432号線を三成まで戻り、今度は国道314号線を更に南に進む。

八川駅に到着。

何度か紹介したが、この駅舎は本浦親子が流浪の旅の末、たどり着いた亀高駅の代役として使われている。

これを見てみると千代吉がもたれかかった地蔵堂が現在では跡形もなくなくなっている。

何も理由もなく撤去するのは考えにくいので、もしかしたらこれは映画のセットなのかも知れないと先人はブログで書かれている。

 

そして手前には「八川そば」という蕎麦屋がある。

ここは亀高駅の蕎麦屋とは違ってちゃんと独立した店舗であり、店内もそれなりの広さがある。

 

亀高駅で割子そばを食べてそう時間も経っていないのでそれほど腹は減ってないが、せっかくなのでここでも蕎麦を食べて行くことにする。

割子そばは冷たい蕎麦だったが、今度は温かい蕎麦を食べようと「月見そば」を注文。

 

麺が結構多い!

全部食べきれなかった!

 

八川駅もこれまでの駅と同じような無人駅である。

中は入らず外から撮影しただけでこの地を去ることにする。

 

これで私の「砂の器聖地巡り」は終了である。

実は撮影に使われた場所はもっとあって、先人には何度もこの周辺に訪れて細やかに周られたり、この奥出雲だけではなく、秋田、東京、大阪、伊勢など映画の舞台になった場所ほぼすべてを訪れている熱心な方もいらっしゃる。

それらの方に比べれば私などほんの上澄みを掬ったくらいに過ぎないのだが、私はこれで十分だと思った。

 

考えてみると「聖地巡り」とは何だろう?

「スラムダンク」も「砂の器」も創作された物語であり、実際にそこで起こった出来事を記録したものではない。

それにも増して映画の撮影においては「出雲八代駅」「八川駅」「亀嵩駅」として撮ったり、セットを組んだり、それらしく見えるように様々な工夫、悪く言えば「虚構」を含んでいることは事実である。

更にアニメに関しては何をいわんや、ということになる。

だからその「ロケ地」を見たからどうなの?

と言われれば、的確に言い返す言葉が見つからない。

強いて言えばその作品に思い入れのある人間の「自己満足」に他ならないのかもしれない。

 

私は今回の「聖地巡り」をするに際し、映画を改めて何度も見返してみた。

これまで何度も何度も見て出演者のセリフをも覚えてしまうほど繰り返し、繰り返し何度も見た映画を再び…。

 

映画は国鉄蒲田操車場で男性の撲殺死体が発見され、殺人事件として、ベテラン刑事の今西刑事(丹波哲郎)と若手刑事の吉村刑事(森田健作)らが捜査に乗り出すところから始まる。

当初、被害者の身元が判明せず捜査は難航するが、その後被害者の養子の申し出より被害者は元巡査の三木謙一(緒形拳)であることが判明した。

しかしその三木が発した「東北弁のカメダ」がネックとなり再び捜査は暗礁に乗り上げる。

映画は序盤、中盤、推理小説ならではの謎解きと今西刑事らの地道な捜査の場面が淡々と続く。

しかし、捜査が大詰めを迎え、最後の捜査会議が開かれるところから雰囲気はガラッと変わる。

捜査会議の様子と本浦親子の流浪の旅のシーンが代わる代わる映し出され、それに加えて和賀英良(加藤剛)の奏でるピアノ交響曲「宿命」が物語を大団円に導く。

あぁ!この映像、音楽のすばらしさ!

今では失われた日本の原風景、その美しい四季の風景をバックに悲劇の父子が彷徨うあまりにも過酷で悲しくも美しい放浪の旅、

一体何故三木は殺害されたのか?和賀は一体何を思ったのか?

映画はそれを観る者に問いかけてくる。

 

今西刑事の持ってきた写真をしげしげと見つめ、やがてそれが誰なのかを悟った時、年老いた千代吉からはその隠しようもない激情が溢れ出る。

「う、うぁぁぁぁぅぅぅ~!あぁぁぁぁああ~!」

千代吉の絞り出すような叫び!

「そ、そ、そんなしとっ!知らねぇっ!」

この物語をよりシリアスに、重い意味を持たせた加藤嘉の渾身の演技だ!

そして一言のセリフもないのにそのまなざしで圧倒的な存在感を示した本浦秀夫役の春日和秀君。

この映画に関わった人の殆どが鬼籍に入ってしまった。

今、主な出演者で存命なのは千葉県の知事になった森田健作氏とこの春日秀和君だけであろう。

ちなみに春日秀和君は15歳で俳優を引退し、現在は輸入車専門のディーラーを経営しているそうだ。

 

映画は「虚構」である。

しかしそれを生み出すために原作者、プロデューサー、脚本家、監督、出演者はもちろん、カメラマン、音声、編集、美術、エキストラ、その他大勢の人たちが素晴らしい作品を作ろうと努力した結果、以降数十年も語り継がれるような不朽の名作が誕生した。

それは紛れもない「事実」である。

 

 

昨年行われた「砂の器」のシネマコンサートのダイジェストがご覧になれます。「YouTubeで見る」をclickしてYouTubeでご覧ください。

 

昨年この「砂の器」のシネマコンサートが各地で行われた事でわかるように、まだまだこの映画は根強い人気を持ち、評価も高い。

日本映画と言えば最近はアニメばかりがクローズアップされるが、50年前これ程の映画が撮られた事を若い人にも知ってもらいたい。

 

あぁ!また観たくなってきたなぁ~(笑)

                   終わり