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「チェリまほ」から見た
「おっさんずラブ」の功罪
(ドラマ感想)

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2022年

=ドラマ&映画の世界において、今や「BL作品」は当たり前のように取り扱われ、その数もかつてないほど充実している。



その中でも、
僕にとって一際輝く「第1位」は
紛れも無く「チェリまほ」なのだけれど、それ以前に心を揺さぶられ、そして非常にがっかりさせられたドラマが「おっさんずラブ」なのである。

そして、
この「おっさんずラブ」の果たした功績は大きい。
現在の「BL作品」の著しい台頭にこの作品が寄与した事実は、誰もが認めざるを得ないであろう。

みなさんは、
いわゆる「パイロット版」をご覧になっただろうか?
厳密に言えばこれは「試作品」ではないが、ファンの間でこう称される事が多い最初の作品──。

つまり、
2016年12月深夜にテレ朝で放送された「年の瀬恋愛ドラマ」と題された単発ドラマのオムニバス──その第3夜として放送されたのが、最初の「おっさんずラブ」だった。

1時間枠
=つまりドラマは正味45分ほどの短編だった。
僕はこれを良く覚えている。
ゲイとして生きている僕は活字の海の中でも取り分け「ゲイ」とか「男同士」とかの単語が目に入る。
目敏く番組表の中からこのドラマを見付け、予約を入れた。

時はまだ、
「チェリまほ」どころか「きのう何食べた?」すら存在しない頃だ。
おそらくこれの制作陣は、いくら「深夜枠」とは言え、このドラマの放送には相当な覚悟が要ったのではないか?

その後にたどった、このシリーズの変遷の是非はとにかく、まずはここでこれを放送した事こそが、このドラマの大いなる「功」だ。
結果、これがあったからこそ、
「きのう何食べた?」そして「チェリまほ」が続いたと僕には思える。

この短編ドラマで主演「田中圭」の相手役を演じたのが「落合モトキ」だった。
僕は結構、この落合モトキと言う俳優を評価している。
中々に奥深く、真に迫った演技を観せる俳優だと認識している。
──と言うのは、やはりこの作品で「同性愛者」と言う、僕にとっては正にリアルな役柄を過不足無く、自然に観せてくれた事に起因する。
これ以降、僕はこの落合モトキと言う俳優を、他の作品でもことさら意識して観るようになった。

「同性愛者をリアルに描く」と言うことに関しては多種多様な意見もあろう。
ただ僕が言いたいのは、この単発ドラマが現れるまでに描かれてきた同性愛者と言う存在が、どれだけステレオ・タイプに扱われてきたか、と言うこと。

つまりそれはストーリーの中の
「お笑い担当役」だったり、スナックを経営する訳知り顔の「ママ役」だったり、或いはその特異で倒錯した精神を動機とした「犯人役」であったりと言う事でしか、作品への登場意義が見出だされずにいた、と言うことだ。
どれを取っても世間一般から見た「典型」であり「特殊」であり、普通の人が描かれない。
(↑…スナックのママが普通ではないのか!と突っ込まれそうだが、あえてそこは通す。なぜならドラマのエッセンスとしてあまりにも多く登場する代表的役柄だから)

それを加味して言えば、
落合モトキが演じた「同性愛者」はまさに普通の社会人だった。
その流れは「きのう何食べた?」や「チェリまほ」に踏襲される。
これもこのドラマによる大いなる「功」だ。

田中圭は「同性愛を受け入れる」と言う点では硬さも見える仕上りだったが、それはそれで役柄にマッチした好演だった。

そしてもう一人のキーパーソン
=つまり吉田鋼太郎の事だ。
彼の存在の是非は、
「このドラマをどう言う立ち位置で観るか」によって大きく別れる。
これについては後に語る事となるから、ここでは流す。
ただ、この最初の単発ドラマにおいては、あそこまで行き過ぎた
「怪演」には至っていなかった、とだけ言っておきたい。

「同性愛」を真摯に真面目に描いて、果たして社会から受け入れられるのか?と言う制作側の不安については、その後「チェリまほ」が王道のラブ・ストーリーで「それは受け入れられる!」と見事に証明した。

然るにこのドラマを制作した当時、まだまだ「お笑い担当」は必要だ!と考えられた事に関しては、仕方の無い事だとの考えも僕には同意できる。

ただ一言。
あの「怪演」は両刃之剣だった。
あれを「善し」とするか「悪し」とするかによって、このドラマの評価は大きく別れる──。

この単発ドラマが好評を得た。
テレ朝はさすがにキー局だけあって、商機にも敏感だった。
そして2018年、連続ドラマとして「おっさんずラブ」は甦った。
(これが後にシーズン1と称される連続ドラマである。以降、便宜上ここでもシーズン1と称する)

この「シーズン1」の放送を知った時、僕は直ぐに単発のドラマを思い出した。
それほど、かつて放送された短編ドラマの印象が強かったのだ。
ただ、田中圭の相手役が林遣都となっている。
僕は落合モトキを好意的に観ていたので「え?」とも感じたが、林遣都がまた良かった。

僕は林遣都のフリークではないので詳細は語れないが、妙に「ゲイ役」の多い俳優である。
それが場馴れしているのかどうかは分からないが、田中圭と林遣都のやり取りは中々に絶妙な切なさを醸し出し、当事者の僕から観ても好感の持てるラブ・ストーリーを描いてくれた。

ただ、
主演の田中圭演じるダメ男振りが強調され、吉田鋼太郎の怪演は益々オーバーになっていた。
先にも書いたが、「同性愛を真摯に真面目に描いて、果たして社会に受け入れられるのか?」と言う制作側の不安から、コメディ路線が強調された結果と思う。

田中圭のダメ男振りは、まあ、
「だから林遣都は放っておけなかったんだろな」と思わせる効果もあった。
女性視聴者の母性本能をくすぐる事にもなっただろう。

然るに吉田鋼太郎のあの怪演は、ファンの評価を真っ二つにハッキリと分けた。
あれを「愉快」と感じるか「不愉快」と感じるかによって、このドラマの評価を大きく分ける結果となった。

僕は「自分がゲイだ」と言う立ち位置から観て、明らかに「不愉快」を感じた。
少しも面白いとは思わない。
随分昔に「と〇ね〇ず」がネタにした「保〇田〇毛〇」を思い出させる。

が、しかし、あれを「愉快」と感じる人も多いのだろう。
人の感じ方は十人十色=正解はない=それを僕は否定しない。
ただ、大勢がどちらに向かったかは歴然としている。
つまり、お笑いと怪演をどんどん過剰にした結果、あのドラマは
「シーズン2」をもって立ち消えてしまった。
それが結論だと僕は思う。

実は、ファンを魅了して増やした功労者は林遣都だったと僕は分析している。
田中圭が主演ではあるが、林遣都こそが「チェリまほ」での町田君のポジションだったと思っている。

もしもの話だ、「チェリまほ」で
ドラマの「シーズン2」を制作するとしたら、町田君を切るか?
あり得ないだろう!
安達の相手役を他の俳優に変えるなんて、町田ファンは激怒するに違いない!
な、なんと、
それをテレ朝はやってしまった!

残したのは吉田鋼太郎の怪演だった。
確かにこのドラマの象徴であり、(それが愉快と思う人達からの)笑いは取っていたけれど、
「ラブ・ロマンス」を求めたファンはごっそりと退場した。

テレ朝のコンセプトは、
この大人気シリーズを長続きさせるには、寅さんのマドンナのように田中圭の相手役を毎回変えて、色々と動かしても最後は吉田鋼太郎と結ばれれてファンを笑わせる、と言う方針だったとネットで見たときは、誰がこんな頭の悪い企画を?!と驚愕した。

結局「シーズン2」の悪評でその後の「シーズン3」は頓挫した。

話を「シーズン1」の直後に戻すが、「おっさんずラブ」は映画でもしくじった。
田中圭と林遣都とのラブ・ロマンスの続きを観たくて映画館にまで来たファンが見せられたのは
「誘拐事件」と「爆破アクション」と「吉田鋼太郎の乙女チックをさらに大袈裟にしたお笑いショー」だった。
サウナでのシーンはあまりのバカらしさに観るにたえない。

ゲイは完全に笑い者にされた。
テレ朝に多様性の時代を察知する事の出来るまともな(発言力のある)スタッフがいれば、あのシリーズは違った発展も有り得たと思う。
田中圭と林遣都のコンビを定着させ、「お笑いキャラ」こそ毎回替えれば良かったのだ。
やることが逆だった。

ここで僕の反省=語っているうち、想定以上に熱くなってしまった。すみません。

実は僕は、
あの作品に期待していたところも大きかった。
後にチェリのような素晴らしいドラマが始まるなんて知らなかった僕は、多少のコメディでも構わないから、主演二人のラブが見れる「シーズン1」を好意的に見ていたのだ。

ところが、ところが、
映画と続編の向かった先は、結局ベタで安定のコメディでしかなかった。
同性愛を真摯に描くことを、結果として制作側自体が信じていなかったのだと、僕は感じる。

「おっさんずラブ」を離脱した多くのファンが「きのう何食べた?」。
そして「チェリまほ」に流れて来た可能性は大きい。
特に林遣都のファンは丸々「チェリまほ」に鞍替えしたのではないか?

この記事を書くに当たって、久し振りにネットで「おっさんずラブ」を検索してみた。
現状はあれほど多かった否定論が姿を消し、吉田鋼太郎ファンの肯定派が頑張っている印象だ。

今、
映画「チェリまほ THE MOVIE」を受けて僕達ファンは絶賛盛り上がり中だが、この恩恵の影には、少なからず「おっさんずラブ」の功罪が影響している。
そして時代は動き、今度は「チェリまほ」が後発の作品に与える影響も多大であろう。

ただ、
僕はいま黙って続編映画への感謝と喜びを享受したい。

 以上、この続きを感想④として次回にまとめたい。


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次の感想④

《続》「チェリまほから見たおっさんずラブの功罪」はこちら↓ 



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 前回上げた感想はこちらから


2022/4/16付 感想②

「チェリまほ THE MOVIE」

ネタバレ感想=ご用心!↓



2022/4/9付 感想①
「チェリまほ THE MOVIE」
を観た!(舞台挨拶生中継付)↓


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