最近自分と向き合う時間が作れるようになってきた。作れるようになってきたというか、時間はあった。その時間の中で過去を今と対比するのではなく、あの頃何をやりたかったのかとか、何ができなかったのかとか、当時の心境を知識と経験ある今から見ることができるようになったというか。Twitterの文字数で書く話じゃないのでこっちに書こうと思う。
6弦ベースについて
さっき風呂に入っているときに23年に及ぶジレンマの正体が分かった。
私は2002年、18歳から6弦ベースを使っている。当時はまだフュージョンバンドか変態セッションマンか一部プログレメタルの人しか使っていなかった。5弦ベースですら少し珍しい時代だった。
広い絵だけどご存じYAMAHA RBX6JM TBを使っていた。
まあアクティブEQが私の好みじゃなくて弦ピッチも狭くて色とデザイン以外は私好みじゃなかった笑
けど何本か6弦を使ってきたけど一番思い入れがあったのも事実。
まず基本的な考えとしてなぜ6弦に手を出したのか。
Eより低い音が欲しかった。それでLow-B限は必須だった。でも5弦を使わず6弦にした。
正直いうと5弦ベースは演奏家業を辞めてから買っている。現役時代は使ってないんだ。
4弦か6弦だった。6弦を選んだのはもちろんJohn Myungの影響もあるけれど、「あったら困らないかも」というくらいの感覚でさらにHigh-C弦の増えた6弦を選んだというのが始まり。
6弦ベースは視覚的にただものではない感じがするので当時連日連夜ライブハウスに出ていた私は普通の人と違う楽器を求めていてその中でデザインやブランドとかよりも弦の数が多い、ということに勝るものはないと思っていたのも事実。
ところが6弦ベースを使い始めて困ったことがあった。弦が高価なので維持に困ったという話は散々しているので置いといて、6弦ベースはそのネックの大きさから完璧なフォームじゃないと弾けない。それまで4弦ベースではできていた「ロックな弾き方」が全くできない楽器だった。きちんと構え、きちんと弾く。それ以外を受け入れてくれない。
あと6弦ベース弾きにしか分からないと思うけれどネックが幅広で容積が大きいからなのか弦の振動がすごくタイト。音の立ち上がりもすごく早くて大きく振動させようとしても小さくしか鳴らないので演奏がかっちりしたプロの演奏になってしまう。なので5弦は4弦の感覚の延長で弾けるけど6弦は別の楽器を構えている感覚で挑んでいた。
ジレンマの話だけど、私は6弦ベースを弾くのが好き。振動がピアノのように「トーン」と響く。けれどその音は硬質でクリア。4弦ベースの音域拡張版だと思って使うとバンドアンサンブルに馴染まない。
正確にいうと4弦5弦は他のパートの技量を隠すような懐の深さがあるけれど6弦ベースは丸裸にしてしまう。6弦を使っても大丈夫なバンドで弾く機会がすごく少なかった。メタルの刻みなどをやる時も倍音成分が多く、ミドルに「パカパカ」というようなアタックが出やすい。ギタリストが低音一直線だったりするとメタルらしいレンジが出ない。
でも自分では知っている。音作りの上手いギタリストや音圧と音量と音抜けを両立できるドラムと一緒に演奏するとアンサンブルのうまさは異次元になることを。
私は6弦を使いたい。けれど6弦を使うとギタリストもドラムもバンドに6弦ベーシストがいる想定で音作りや弾き方を変える必要があることを悟った。具体的には普通のギタリストにとっての正解を正解としない、ハイミドルを少しブーストしたギター単体では硬めの音にするとうまく馴染む。けれどギタリストに私が6弦を使いたいから音作りを変えろ、というのはなかなか言いにくい。なので自粛して使う頻度が下がった。
他方でアコースティックギターとの組み合わせは使い方次第だった。アコギの倍音たっぷりの音にローファイなベースの音は曲を野暮ったくさせるけれどピアノトーンの6弦ベースはよく合う。なので後半の私は音域で選ぶのではなく、ネックの容積による倍音の量で4弦を使うか6弦を使うか決めていた。なので4弦を使っている日の方が音域が広いこともよくあったし、6弦ベースでルート弾きしかしない日もあった。
私が6弦ベースを使い続けて行き着いた境地はそこだった。
自分のバンドなら気兼ねなく6弦を使える、と思うのが普通じゃない。
けれど私の場合歌いながら弾かなくちゃいけなくて6弦ベースの正しいフォーム、すなわち胸の前に構え、胸を張り腹に力を入れながら弾くのは今度は歌の妨げになる。呼吸がしにくいし、見た目もなんだか歌手っぽくない。なので結局使う機会が少ない。
腰の位置で弾いたこともあったけれど6弦ベースの音色をコントロールするのに低い位置でのピッキングは精度に欠けて実用的じゃない。もちろんネックのふとさが左手の負担にもなる。
ちょっとまとめ切れないけれど23年も6弦ベースを弾いていると結構発見がある。6弦に挑戦してみたいと思っているベーシストや、仲間内に「6弦かっこ悪いからやめろよ」とか言われているベーシストがいたら話を聞いて的確にアドバイスができる気がする。
私の6弦ベースの使い方の最終形態はチェロの音域がついた楽器として捉えることだった。高い音を出すというより表現力のあるリードやオブリガードを弾ける、という感じで必要性と使い勝手を見出していた。あとは和音弾きと、高い音域をブライトな音で弾けるという利点。
音域が広いと言っても4度だけだし、弦が多いと言っても1本だし、この楽器の必要性は4弦ベースと禅問答を繰り広げたベーシストにしかわからないと思う。でも私は多くの人に使って欲しいと思うし、もっと名人が現れて欲しいとも思う。他方で早弾きなどは若手に負けてもこの楽器の可能性を引き出していることに関しては全然負ける気もしない、という自身もあったりしてまだ若さが抜けきってないと反省するところもある。
今日は本当に文字だけ。少なくともあの頃、東武東上線沿線で6弦ベース弾きは私くらいしか見かけなかったと言われたくらいだったよ(一人もいなかったということはないと思うけど私は年間100−150ステージやってたし)。ネットでしか6弦弾きに出会えず、わざわざみんなで2ヶ月先の予定で待ち合わせをして6弦ベーシストだらけのオフ会をやったこともあった。ベローチェに6弦ベース持った人が4人も集まって「弦何使ってます」とか「音量差はどのコンプ使ってる?」「ストラップすごい分厚いですね」とかそんな話ばかりしてた。懐かしいわ。