前回、黎明期の送受信機を考える前提として、安定電源の考え方を整理しました。ここでトランスが大きな課題であることを感じて、少しネットを検索してみました。
考えていた以上に真空管用電源トランスは種類が豊富で、想定に近い仕様の既製品がありました。調べたのは、秋葉原の老舗の東栄変成器、ゼネラルトランス販売(ノグチトランス)、春日無線変圧器の各社と、名古屋のエイトリックトランスフォーマーの4社です。
サンスイ、ラックス、タンゴ、アトム、菅野(SEL)など一世風靡したトランスメーカーが撤退し、ニッチな真空管オーディオ市場に向けて、直販中心で高級志向に特化して手掛けているようだ。
記載の価格は令和5年4月末現在
型番 | B電圧 | B電流 | A電圧 | A電流 | 税込単価 |
N-100 | 280V-250V-0-250V-280V | 100mA | 5V 5V-6.3V 6.3V | 2.0A 1.0A 1.0A | 13,200円 |
P-75N | 280V-250V-0-250V-280V | 75mA | 5V-6.3V 6.3V | 2.0A 3.0A | 9,100円 (特価) |
KmB110S | 280V-250V-0-250V-280V | 100mA | 5V-6.3V 5V-6.3V 6.3V | 2.0A 2.0A 2.5A | 17,270円 |
KmB280F | 280V-250V-0-250V-280V | 150mA | 5V 2.5V-6.3V 2.5V-6.3V 6.3V | 3.0A 3.0A 3.0A 2.0A | 14,300円 |
PMC-35E-B | 260V-230V-0-230V-260V | 30mA | 5V-6.3V 6.3V | 0.8A 2.0A | 6,200円 (特価) |
PMC-100M | 280V-240V-200V-0-200V-240V-280V | 100mA | 5V-6.3V 5V-6.3V 5V-6.3V | 2.0A 2.0A 2.0A | 9,650円 (特価) |
GS-115 | 280V-250V-0-250V-280V | 120mA | 5V-6.3V 5V-6.3V 5V-6.3V | 2.0A 1.5A 1.5A | 14,300円 |
センタータップ(CT)付のフィラメント回路のうち、送信回路は6.3V+6.3V=12.6V(CT=6.3V)、受信回路は5V+5V=10V(CT=5V)で、レギュレータ素子のドロップアウトを考慮しても問題ないでしょう。
送信用プレート(B)AC電圧は、最大260V~280V×2=520V~560Vになります。
受信用プレート(B)AC電圧は、CT(0)から片側の巻線を使って240V~250Vを得ます。
受信用B電源は必要な電流が4mA~5mAでで最大10mAまでなので片側の巻線だけでも、バランスが崩れる懸念は少ないと思います。
あとは最大送信出力を考慮すればB電流を決定でき、適当なトランスを選べるでしょう。ただし四極管以上の場合、スクリーングリッドで消費する電流も考慮する必要があるが、シングル(単球)であれば最大60mAもあれば良いでしょう。
最近のトランス事情について当局が無知だったのは確かだった。それにしてもトランス業界を含めた日本の部品屋さんの底力に感動を覚えた次第です。
今回はトランスの入手可能となり一安心。次回はフィラメント用トラッキング回路と高電圧安定化回路に入る予定です。
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