やがて海霧の夜に翔ぶ -5ページ目

やがて海霧の夜に翔ぶ

FFXIケルベロス鯖にて活動しているエルヴァーンのブログです。



主にFFXIのオリジナル小説などを載せています(ネタバレも含みますので注意!)。

 もうアラパゴへ着いてからどれほどの時間がたっただろうか。マイルスとワスードは長時間の移動と周囲への緊張ですっかり疲れきっていた。

 「ワスード君・・・。海賊のアジトへはまだかかりそうなのかぃ?さっきから似たような景色だけど・・・。」

 マイルスが重い口を開く。なにかしゃべっていないとそれだけで気がめいるような状態だった。

 「違うんだ・・・。霧で少し見えにくいけど、ムティーブ兄ちゃんに教えてもらった通りに歩いてるはずだよ。」

 サンドリアでナイトとしてきびしい訓練を積み、暗黒騎士として今まで鍛えてきたマイルスでさえ疲れているのだ。まだ子供のワスードの声は消え入りそうなほど小さくかすれていた。ついに二人は足を止め岩を背にしながら座り込んでしまっていた。マイルスはカバンから水と干し肉を取り出しワスードに分け与え、終始無言のまましばらく時が流れた。するとワスードが思い出したかのように話し始めた。


 「兄ちゃんがよく言ってた事があるんだ。アジトのある暗礁域には死者の軍団を操る”ラミア”と”メロー”っていう獣人が住み着いてるんだって。危険な場所だけどそのおかげで安全なアジトを作れたって。」

 「なるほど・・・。死者の軍団を操る・・・ですか。私の生まれた大陸でも高等な魔法と文化を持つ”ヤグード”という獣人がいましてね。死者を操るなんてものは聞いたことないですがいま人間が使っている魔法の大半は彼らが生み出したものらしいですね。」

 干し肉を少しずつ口に含みながらマイルスはそうつぶやいた。それと同時に急にハッとなり周囲を確認しはじめた。ワスードは彼の行動を不思議そうに見つめていた。


 「やはり・・・!ワスード君、すぐここを離れますよ!。」

 マイルスが気づいていたときにはすでに遅かった。まわりをスケルトン族に囲まれその後ろに青い肌をした獣人が見えたのだ。突然の事態にワスードは動揺を隠し切れなかった。

 「私達は道を間違っていたわけじゃなかったんです。ヤグードの本拠地オズトロヤ城では魔道士による”幻術”で大戦時の劣勢をきり抜けたと聞いたことがあります。あの青い獣人が魔法に卓越してるのであれば、この状況に納得がいきます。」

 少年を気遣い冷静さを装いながら、マイルスは大鎌を手に周囲へ向けて緊張をはりめぐらせた。

 「幻で獲物の体力を消耗させ狩る・・・、サンドリア周辺のオーク族に見習わせたいものです。術が切れている今、君ならお兄さんのところへ行けるはず。私が道を開きましょう・・・。」

 「でっ、でも!マイルスさ・・・むぐ。」

 ワスードの口を抑えながらマイルスは少年へにっこりと微笑んで見せた。そして深呼吸をし、一気に骨の軍勢へむけて走りこんだ。薙ぎ払うようにマイルスは前進を続け、ワスードはその後ろにぴったりをくっつき逃げる隙を探した。青き肌の獣人は二人の突然の行動に不意を衝かれたのか、まだ骨達へ攻撃の指示をだしきれていない。

 「思ったとおり死者は死者。術者の指示がないと動けないようですね!・・・漆黒の光・・・、我が魔力を用って邪を捕らえよ!」

 マイルスの手から放たれた光が敵を包みこみ、一瞬だけ動きが止まった。その隙にワスードは魔物の間を駆け抜け、円陣から脱出をする。そのとき奥の岩陰から声が聞こえてきた。

 「ワスード!こっちだ!。」

 そこにはムティーブと白門でみたミスラの姿があった。ワスードは夢中でムティーブの元へを走っていった。


 「ふぅ・・・これで彼は安心だ。さて、私もそろそろ逃げなくては・・・ぅぐっ!」

 少年をかばっていたマイルスにできた隙を死者達は見逃さなかった。薙ぎ払う鎌を越え、ついに敵の攻撃が直撃してしまったのだ。その場でよろめくマイルスに、さらに獣人が魔法の詠唱しはじめる。ここまでかと彼の頭を最悪の事態がよぎった。報酬のシュトラッチが食べられない・・・・・!。そう思ったそのときだった。

 「六銃口の烈風・・・、ウィンドショット!。」

 ブワっという音とともに辺りにいた骨達が吹き飛ばされた。さらに獣人の詠唱も止まっている。そして状況が把握できないマイルスの真後ろから声が聞こえた。

 「仲間の弟を助けてくれた恩人だ。今だけおまえに力を貸そう。」

 声に驚き振り向くとそこには特徴的な帽子をかぶり、見たことのない形状の銃を持ったエルヴァーンが立っていた。

 

 「俺の名はクルタダ。この暗礁をアジトとする海猫党のリーダーだ。」


 アトルガン皇国から船に乗り、マイルスはナシュモへと渡ることにした。薄く霧がかる町に着いたのは夜がはじまった頃であった。

 「ふぅ、なかなか遠いものですね・・・。海賊のアジトとは・・・。」

 小言を言いながらも船を降りシャラトトの店主にもらった地図を頼りに『アラパゴ暗礁域』へ出発した。まずは『カダーバの浮沼』と言われる大沼沢地帯を抜けないといけないようだ。地形は複雑ではないもののマイルスは霧が深い沼とまわりに感じる人間ではない気配に、終始気を抜かず歩を進めていった。


 そろそろ中腹かというときに、奥地から叫び声が聞こえてきた。

 「うわぁー、助けてー!!」

 あの少年だ!マイルスは慌てて声が聞こえた方に向きなおた。高い段差を長身を活かし軽々と越え、トンネルを抜けると少年と彼を襲うスケルトン族が目に飛び込んできた。

 「またやっかいな奴に襲われてますね・・・。」

 背負っていた大鎌を手にしてマイルスは相手の胴体を薙ぎ払った。しかし、大きく吹っ飛ばしたまではよかったがすぐに立ち上がり、こちらに向かってこようとしている。

 「さすがに骨相手ではきびしいようですね・・・。君、すぐに立てますか?いまは逃げますよ!」

 少年の手を取り、二人はアラパゴ暗礁域の方向へ走りだした。
草むらをかき分け、暗い洞窟を抜けると二人は拓けた場所にでた。そこには不気味なまでに静けさが漂っていた。どうやら目的の場所に着いたようだ。

 「はぁはぁ・・・。お兄さん、さっきはありがとう!」

 少年が息の切れた声でそう言うとマイルスはニコっと笑い

 「どういたしまして。私はマイルス。君の名前は?」

 と質問した。少年の名前は”ワスード”というらしい。

 「私は君のお父さんとちょっとした知り合いでね。君たち兄弟の様子を見に来たんだ。」

 するとワスードは少しムスっとした顔をしながら

 「ボクは帰らないよ!クルタダさんの仲間に入れてもらうんだから。」

 少年の意志は固そうだ、そう思ったマイルスは彼の気が済むまで付き合う事にした。


 薄暗い入り江を見渡すといろいろな物が目に入った。あちこち壊れている大きい船やゆっくりとうごめく黒い影。そしてこちらの国ではおとなしいとされている海鳥、アプカル族が群生しているのも確認できた。魔物に注意をはらいながら少し歩を進めた時マイルスは少年に話しかけた。

 「ところでワスード君。君は海賊のアジトを知っているのかぃ?クルタダという人物のことも気になるのですが。」

 それを聞いた少年は目を丸くして聞き返してきた。

 「お兄さんはクルタダさんを知らないの!?コルセア達が集う”海猫党”の船長だよ!兄ちゃんも尊敬しているけどクルタダさんにもすごく憧れてるんだ、ボク。」

 マイルスはそのあまりの豹変ぶりに多少驚いたが、父親の反対を押し切ってこんな場所までくる理由がわかったような気がした。


 廃船をぬけ魔物を避けながら横道の洞窟へ入ったとき、2人の目の前に鉄格子の扉が現れた。どうやらカギがかかっているらしい。開錠を行うような知識はマイルス自身持っていなく、無理やり開けることもできないような頑丈な扉だった。

 「困りましたね・・・。どう見てもあやしい扉ではありますが・・・。」

 悩んだ様子でそうワスードの方をむくと少年は得意げな顔でポケットから鍵を取り出した。

 「へへっ。兄ちゃんからアジトの場所をコッソリ聞いたときにこの鍵も貰ったんだ!まさかボクがくるなんて思ってもいないんだろうね。」

 ワスードは鍵を差し込み扉を開けた。マイルスはあっけにとられて思わずふきだしそうになりながら

 「さすが未来のコルセア。有望な行動をしてくれますね。」

 それを聞いたワスードはにっこりと笑いながらマイルスの手を引き、扉の中へと進んでいった。

 

 

入り江に響く声。

「登りつめてこい、高みまでな。」




 アトルガン皇国。この国とジュノの交易が開始されてから約一年が経とうとしていた。傭兵会社の関係や蛮族から国を守るということで、ジュノにいた冒険者達は海を超え拠点をアトルガン白門におく人が多くいた。

 「痛てて。」

 活気あふれる小国内を一人の暗黒騎士が傷を抑えながら歩く。熟練した冒険者達が皇国を囲む大森林や火山、洞窟などで強い敵を求め力をつけるなか、こうして周りになじめず一人で経験をつむ冒険者の姿も珍しくはなかった。この男はサンドリア出身のエルヴァーンであったが王国騎士の登用試験に落ち、ひらすらに暗黒騎士の道を進んできていた。

 「くそ・・・。どいつもこいつも暗黒騎士を毛嫌いして・・・。」

 ブツブツと文句を言いながら居住区へ向かう途中、白門の方でドンっと爆発音が鳴り響いた。驚いた男は疲れているのにもかかわらず音のほうへ走っていった。


 煙があがっているところへ着くと青い装束を身にまとったもの達と軽装な5人組が対峙していた。どうやら皇国に仕える「不滅隊」が海猫党のコルセア達を捕らえようとしているらしい。すると、帽子かぶったコルセアが口を開いた。

 「不滅隊か・・・。いまはお前たちにかまってる時間はないんだ。海鳥の西翼で落ち合おう!。」

 そう言いながら何かを地面へ叩きつけると辺りを突然光が覆う。視界がもどったときにはもうコルセア達の姿はなかった。

 「閃光玉かぁ!やっぱりコルセアはかっこいいなぁ!。」

 近くにいた子供がつぶやいた。


 男はモグハウスで休息をとり、騒ぎが治まった頃合いをみて「茶屋シャラトト」へ足をのばした。身を削って戦う彼にとってここで飲むアルザビコーヒーはアトルガン地方へ渡ってきた以来、もっとも心を落ち着かせる物であった。いつものようにコーヒーと暗黒騎士の風貌には不釣合いなお菓子シュトラッチを食べながら日が沈むのを楽しんでいると、店の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「どうして・・・・けなんだよ・・・・さん。」

 さきほどの騒ぎのときに近くにいた子供の声だ。どうやら誰かともめているらしい。

 「あ、おいっ。まちなさい!」

 と言いながら、茶屋の店主がとびだした男の子を追いかけるように奥からでてきた。店主が困り果てた顔をしているので男は声をかけた。茶屋へ通うようになって何度か会話をしたことがあっただけだが、店の重い空気に耐えられないのと今の喧嘩がさきほどの事件と何か関係してるのではと思い、男は話しかけた。


 「なにかあったんですか?」

 当然なにもない訳はないのだが、男はそっけない顔をわざと作って店主に聞いた。店主は少し戸惑いながらも

 「実はさっきの騒ぎのコルセア達は皇国へ捕まった私の息子を助けにきたんです。さっきのがその弟でして・・・。あいつには兄がコルセアということを隠していたのですが・・・、なにせ海賊に憧れちまってる息子に兄の事を話すのも気が引けましてね。なんで兄ちゃんだけと怒鳴られてしまいましたよ。」

 男は困った店主の顔を見かねてこう切り出した。

 「そうでしたか。それでしたら自分が二人の様子を見てきましょうか。報酬は・・・、シュトラッチ1週間分でどうでしょう。」 

 店主は男の言葉に一瞬あっ気にとられたがぜひにと”アラパゴ暗礁域”までの簡単な地図を書き記した。


 男が腰をあげ武器と地図を取り、出発しようとすると

 「あ、まだ名前も教えていただいてませんでしたね。」

 店主が聞くと、男は振り向きながら微笑んで答えた。


 「マイルス=デュランダル。騎士の名家を捨てたきまぐれのエルヴァーンです。」