アトルガン皇国から船に乗り、マイルスはナシュモへと渡ることにした。薄く霧がかる町に着いたのは夜がはじまった頃であった。
「ふぅ、なかなか遠いものですね・・・。海賊のアジトとは・・・。」
小言を言いながらも船を降りシャラトトの店主にもらった地図を頼りに『アラパゴ暗礁域』へ出発した。まずは『カダーバの浮沼』と言われる大沼沢地帯を抜けないといけないようだ。地形は複雑ではないもののマイルスは霧が深い沼とまわりに感じる人間ではない気配に、終始気を抜かず歩を進めていった。
そろそろ中腹かというときに、奥地から叫び声が聞こえてきた。
「うわぁー、助けてー!!」
あの少年だ!マイルスは慌てて声が聞こえた方に向きなおた。高い段差を長身を活かし軽々と越え、トンネルを抜けると少年と彼を襲うスケルトン族が目に飛び込んできた。
「またやっかいな奴に襲われてますね・・・。」
背負っていた大鎌を手にしてマイルスは相手の胴体を薙ぎ払った。しかし、大きく吹っ飛ばしたまではよかったがすぐに立ち上がり、こちらに向かってこようとしている。
「さすがに骨相手ではきびしいようですね・・・。君、すぐに立てますか?いまは逃げますよ!」
少年の手を取り、二人はアラパゴ暗礁域の方向へ走りだした。
草むらをかき分け、暗い洞窟を抜けると二人は拓けた場所にでた。そこには不気味なまでに静けさが漂っていた。どうやら目的の場所に着いたようだ。
「はぁはぁ・・・。お兄さん、さっきはありがとう!」
少年が息の切れた声でそう言うとマイルスはニコっと笑い
「どういたしまして。私はマイルス。君の名前は?」
と質問した。少年の名前は”ワスード”というらしい。
「私は君のお父さんとちょっとした知り合いでね。君たち兄弟の様子を見に来たんだ。」
するとワスードは少しムスっとした顔をしながら
「ボクは帰らないよ!クルタダさんの仲間に入れてもらうんだから。」
少年の意志は固そうだ、そう思ったマイルスは彼の気が済むまで付き合う事にした。
薄暗い入り江を見渡すといろいろな物が目に入った。あちこち壊れている大きい船やゆっくりとうごめく黒い影。そしてこちらの国ではおとなしいとされている海鳥、アプカル族が群生しているのも確認できた。魔物に注意をはらいながら少し歩を進めた時マイルスは少年に話しかけた。
「ところでワスード君。君は海賊のアジトを知っているのかぃ?クルタダという人物のことも気になるのですが。」
それを聞いた少年は目を丸くして聞き返してきた。
「お兄さんはクルタダさんを知らないの!?コルセア達が集う”海猫党”の船長だよ!兄ちゃんも尊敬しているけどクルタダさんにもすごく憧れてるんだ、ボク。」
マイルスはそのあまりの豹変ぶりに多少驚いたが、父親の反対を押し切ってこんな場所までくる理由がわかったような気がした。
廃船をぬけ魔物を避けながら横道の洞窟へ入ったとき、2人の目の前に鉄格子の扉が現れた。どうやらカギがかかっているらしい。開錠を行うような知識はマイルス自身持っていなく、無理やり開けることもできないような頑丈な扉だった。
「困りましたね・・・。どう見てもあやしい扉ではありますが・・・。」
悩んだ様子でそうワスードの方をむくと少年は得意げな顔でポケットから鍵を取り出した。
「へへっ。兄ちゃんからアジトの場所をコッソリ聞いたときにこの鍵も貰ったんだ!まさかボクがくるなんて思ってもいないんだろうね。」
ワスードは鍵を差し込み扉を開けた。マイルスはあっけにとられて思わずふきだしそうになりながら
「さすが未来のコルセア。有望な行動をしてくれますね。」
それを聞いたワスードはにっこりと笑いながらマイルスの手を引き、扉の中へと進んでいった。