やがて海霧の夜に翔ぶ -4ページ目

やがて海霧の夜に翔ぶ

FFXIケルベロス鯖にて活動しているエルヴァーンのブログです。



主にFFXIのオリジナル小説などを載せています(ネタバレも含みますので注意!)。


ワスード興味本意で壊れたヘキサガンを抱えながら入江の横穴へ進んでいった。少し進むとさきほど聞こえた声がさらに鮮明に響いてくる。どうやらラミアや死者のものではないようだ。

 「・・・・・様、クル・・・・・スパイ・・・・ようです。」

 横穴の奥が拓け、部屋のような空間が広がっていた。ワスードはその中心で話す人影にハッとした。

 「そうか・・・。では感づかれる前にやつらを騙し、まとめて処刑するとしよう・・・。」

 そこにいたのは皇国軍のヤズクールと暗礁域で出会ったガルカだった。ワスードは二人に気づかれぬように岩陰を伝い、近くで様子をみることにした。ガルカに顔がわれているため、少しでも音をたてたら迷子になりましたでは済まされないだろう。

 「では作戦を実行だ。ぬかるなよ、不滅隊ゴワム。」

 ゴワムはうなずくと入江の出口へと向かおうとした、しかし


 「はぁはぁ・・・、いやぁワスード君!こんなところにいたんですか。随分と探してしまいましたよ。」

 「マッ、マイルスさん!そんなに大きな声だしちゃ・・・!」

 最も悪いタイミングで死者達との戦闘でぼろぼろになったマイルスが合流してしまった。少年にとって人生ではじめて、うれしい事と悲しい事が同時にきた瞬間であった。

 「ふん。ネズミが二匹迷いこんできたようだな。少なくともガキのほうは話を聞いていたようだ、始末しろ。」

 ヤズクールがそう言うとゴワムは剣を抜き、ワスード目掛けて走り出す。マイルスも状況がつかめずにいたが少年の危機に鎌を構え、かばうようにガルカに立ちはだかった。

 「ふっ・・・、皇国軍さんよ。無駄な殺生は良くないぜ?。」

 剣をまじえるまさにその時、部屋の奥にある岩陰からクルタダがさっそうと飛び出してきた。残りの4人も後ろに立っている。

 「スパイを海猫党に仕込み俺らを一網打尽にしようとしたみたいだが・・・、そこのでかぶつ君よりうちのウキのほうが優秀な諜報部員だったみたいだな。ゴワムの足取りも皇国軍の作戦もこいつが全て調べてくれたよ。」

 後ろにいたミスラは少しテレた様子でクルタダを見た。ウキという名前らしい。


 「そして・・・、そっちの作戦は失敗だったみたいだが。”こっちの作戦”はもうすでに成功しているんだ。」

 「なんだと・・・?。」

 余裕の表情をみせるクルタダにワスードはいつも以上に目を輝かせた。そしてヤズクールは怒りを隠し切れない様子だ。

 「なぜ俺がこの地にワスードとマイルスを送ったか、それは興味があったのもあるがゴワムとお前が合流するのを遅らせるためだ。案の定、ゴワムは二人を避けるように遠回りをして別の洞窟から入江にきた。そしてその間に俺たちはこの空間に”罠”を張る時間を得たんだ。」

 クルタダはヘキサガンを取り出し、天井へむけて引き金を引いた。ドーンという大きな音とともに天井から炎が降り注ぐ。

 「くっ、ゴワム!そのガキをさっさと始末しろ!一時皇国へもどるぞ。」

 ヤズクールは皇国の動きと知ってしまった少年をこの事態になっても見逃さなかった。

 「ふふ、私を誰だと思っているんですか?サンドリア王国の名家デュランダル家の剣術を継ぐものです。元・・・ですがね。」

 そう言いながらマイルスは大鎌をゴワムへ投げつけ、ひるませたと同時に腰にさしていた鞘に手をやり剣を抜いた。その美しい深い青の刃は一瞬にして大柄のガルカを薙ぎ払った。

 「これは代々伝わる片手剣で、”決して錆びぬ鉱石”を使って名工が作り上げたものだそうです。血を流したくなければすぐに立ち去ることですね。」

 マイルスはにっこりと笑いながらヤズクールに剣先を向けた。想定外の状況に想定外の助っ人、ヤズクールにはもう成すすべがなく怒りの表情を見せつつもゴワムと一緒に入江の奥へと姿を消した。

 「さぁ、俺たちもそろそろ脱出だ。だいぶ火がまわってきたようだからな。ナシュモでおちあうことにしよう。」

 クルタダの声が聞こえたと思うと、火の奥で見えていた5つの影がふっと消えた。

 「私たちももどりましょう。目的のものは見つけられましたか?。」


 マイルスがワスードの方を向くと少年はうなずきながら抱えていたヘキサガンを見せた。


アラパゴ暗礁域から浮沼へもどり、ナシュモへとマイルスとワスードは向かっていた。

 「ふぅ・・・、そろそろ町へ到着ですね。ワスード君。」

 丸一日近く動き続けていたため、マイルスは疲労を隠し切れない様子であった。しかし、ワスードの真っ直ぐな眼差しは疲れをまったく感じさせる事はなくすでに今から行くことになるだろう「タラッカ入江」の事だけを考えているようだった。黙々と歩き続けた二人は無事にナシュモへ到着した。そこでマイルスは半日ほど町で体を休めようと提案した。ワスードも一度は反対したものの、どっと疲れがでたのかすぐに眠ってしまった。

 背負っていた大鎌と鞄を置き、寝ているワスードに毛布をかけた。瘴気のせいで衰退したナシュモの町には宿屋などあるはずもなく、二人はノマドモーグリの近くで野宿することとなった。


 時間の感覚を忘れさせるほど霧のかかるこの町でどれくらいの時間がたったのだろう、マイルスはうとうとしていたがなかなか寝付くことができずにいた。そのとき、とてつもない覇気ともいえる気配が彼を包んだ。意識もはっきりしていなかったためか、金縛りにでもあったかのように動けなくなってしまった。すると目の前に人影がかすかに見え、その人物はマイルスになにかを語りかけはじめた。

 「君のちか・・・・・・・いに、この・・・・・・宝じ・・・・みに。きっ・・・・になる。」

 マイルスの前に何かを置き、その影がスッと消えるとマイルスは意識がなくなった。

 「・・・・・さん・・・・・マイルスさん!。」

 ワスードの呼びかけでマイルスは目を覚ました。

 「もう・・・、そろそろ入江に行こうよ!早く見つけてクルタダさんを驚かせるんだから。あとこれ、ここに置いてあったけどマイルスさんのでしょ?無用心だなぁ。」

 ワスードが手に持っていたのは黒い石のアミュレットだった。それを受け取ったマイルスは首をかしげながらもそれを身につけた。

 「ああ、悪かったね。準備をしたらさっそく向かおうか。・・・・それにしても昨日のは夢じゃなかったのか・・・。」


 二人は支度をすませるとナシュモの西門から浮沼へ。そこには昨日通った場所とは思えないほど別格の不気味な雰囲気が漂っていた。少し歩いたところでワスードがマイルスに問いかけた。

 「ねぇマイルスさん。クルタダさんが言っていたコルセアに”必要なもの”ってなんだと思う?。」

 「さぁ・・・、私は今まで騎士の道を突き進んだりはずれたりしていただけですから。船長の名前すら知りませんでしたし。」

 「クルタダさんが持っていた派手な銃があるでしょ?ベテランのコルセアなら皆持ってる”ヘキサガン”っていうものなんだって兄ちゃんが言ってた。きっと入江でそれを見つけろって事なんだよ。」

 「ふむ・・・暗礁域にあれだけ廃船があったんですし、その銃も期待できそうですね。」

 にっこりとマイルスが笑うとワスードの顔もぱっと明るくなった。


 草むらをかきわけ、魔物を避け、沼をこえた先に大きな墓場が姿を現した。その後ろにはうっすらと洞窟のようなものが見える。

 「きっとあの奥がタラッカ入江だね。しかしまぁ・・・よくもここまでうようよと。」

 マイルスは失笑した。それもそのはずだ。墓場内には骨やら悪魔やらがうごめいていた。

 「どうしよう・・・。せっかくここまで来たのに・・・。」

 ワスードは顔色が一転、暗くなってしまった。するとマイルスは鞄から剣と盾を取り出し、

 「ここは私が奴らの注意を引きつけましょう。なに、心配は無用ですよ。さぁ行きなさい!。」

 少年は洞窟をひたすら走った。マイルスの事は心配だが彼の考えを無碍にしないために。走って走って・・・その先に光が射しているのに気がついた。ワスードの前に拓けた地形と廃船、いくつもの横穴があらわれた。廃船の中や入江の岩陰を何度も転びながら”目的のもの”を探し回った。すると横穴の近くにある廃材の下に薄く光る物を発見した。

 「はぁはぁ・・・きっとあれだ。やったよマイルスさん!」

 ワスードはそのあちこち汚れていて銃口が割れているヘキサガンを手に取り、後ろを向いた。しかし今まではそこに立っていた騎士の姿はなかった。すると横穴の奥から何か話し声が聞こえる。

 「なんだろう・・・こんな入江で・・・。まさかラミアじゃないだろうな・・・。」


 気になった少年は洞窟の奥へと進んでいった。

 

 

 「今だ、リーダーのラミアさえ倒せば死者は動けなくなるぞ。」

 クルタダの声で唖然としていたマイルスは我に返り、そして立ち上がろうとしている獣人へ一心不乱に斬りかかった。見事に決まった太刀筋はラミアを倒し、死者達の動きを止めた。

 「ふぅ・・・、あなたが来なかったらどうなっていた事か。助かりましたよ。」

 マイルスは笑顔でクルタダへ礼を言った。

 「ふっ、こんな事態でも笑顔なんてどうかしてるぜ・・・。あんたムティーブの弟の連れなんだろ?奴らはもうアジトへ行ってるはずだ、招待するぜ。」

 あきれた顔をしながらクルタダはそう言い放ち、歩き始めた。

 

 もうどれくらい歩いただろうか、目的地が分かっていながらもこんな奥地まで迷い込ませられるラミア族の幻術にマイルスは身震いした。あの時、ヤグードの話を思い出さなかったら・・・。道も随分と拓け、2人の前に見覚えのある扉が現れた。しかしここはカギを使わないで開けることができ、その奥は廃船へとつながっていた。

 「ここが俺らがアジトとしている場所だ。他の奴らももう着いてるみたいだな。」

 クルタダが甲板へ乗り込むと仲間と思われるコルセア達が集まってきた。パっと見る限りではワスードの兄ムティーブ、ついさきほど岩陰にいたミスラ、エルヴァーンの男女、真面目な出で立ちのガルカが確認できた。

 「どういうつもりだぃ?クルタダ。部外者を2人も連れ込むなんて。」

 エルヴァーンの女性が声を荒げた。

 「落ち着いてくださいよズィーハさん。ワスード君も悪気があってきたわけじゃなさそうですし。」

 エルヴァーンの男がズィーハをなだめ、クルタダのほうを向いた。

 「アズナーフの言うとおりだ。話くらいは聞いてやろうじゃないか。」

 クルタダは笑いながらワスードの肩をポンっと叩いた。するとオドオドしていたワスードの目つきが変わり、

 「ボクを海猫党に入れてほしいんだ!頼むよ、クルタダさん!ズィーハさん!。」 

 それを聞いたズィーハは大笑いした。ムティーブも少し困った顔をしているが、クルタダだけは違っていた。

 「そうか、じゃあコルセアにとって”必要なもの”を俺らに見せてみな。ナシュモの西門をでて浮沼を抜けた先にタラッカ入江という船の墓場みたいな場所がある。そこへ行ってみるんだな。その間に俺らもやらなきゃいけない事があるしな。」

 マイルスは話に聞き入っていたが、”タラッカ入江”という言葉のときにズィーハがクルタダへ何か言おうとしたのを見逃さなかった。そこには何があるというのだろうか、そんな事を考えているときにガルカが口を開いた。

 「クルタダさん、子供も相手もいいが例の件・・・やはりムティーブを助けに行くというのが先に皇国に知られていたようだ。」

 「やっぱりそうか。不滅隊に先回りをされたときにおかしいと思ったんだ。スパイが混じっている恐れがあるね。」

 ズィーハがそう続けた。


 「まぁその事は海猫党で解決しなきゃならないしな。ワスード、君は自分のやるべき事をやるんだ。」

 心配そうな顔をしていたワスードを見て、クルタダは彼にそう言った。少年はウンっとうなずくと駆け足で元来た道をもどっていった。

 「あの・・・マイルスさん。」

 今までだまって聞いていたムティーブがマイルスのほうへ近づいてきた。

 「あいつからいろいろと話は聞きました。もしよかったらワスードのそばにいてやってくれませんか?無理は十分承知しています。」

 それを聞いたマイルスはニッコリ微笑んで、

 「彼を無事皇国へ送り届けないと親父さんにシュトラッチをおごってもらえませんからね。安心してください、最後まで付き合うつもりですから。」

 そう言い残しワスードのあとを追ってマイルスは走り出した。

 「では私も引き続き調査に行ってきますので。」

 ガルカはクルタダに軽くおじぎをして船をあとにした。3人が見えなくなった後、クルタダは立ち上がりフゥっと一息ついて船員達へ問いた。

 「じゃあそろそろ・・・俺らも動くぞ。準備はいいな?」


 「はい!」