「今だ、リーダーのラミアさえ倒せば死者は動けなくなるぞ。」
クルタダの声で唖然としていたマイルスは我に返り、そして立ち上がろうとしている獣人へ一心不乱に斬りかかった。見事に決まった太刀筋はラミアを倒し、死者達の動きを止めた。
「ふぅ・・・、あなたが来なかったらどうなっていた事か。助かりましたよ。」
マイルスは笑顔でクルタダへ礼を言った。
「ふっ、こんな事態でも笑顔なんてどうかしてるぜ・・・。あんたムティーブの弟の連れなんだろ?奴らはもうアジトへ行ってるはずだ、招待するぜ。」
あきれた顔をしながらクルタダはそう言い放ち、歩き始めた。
もうどれくらい歩いただろうか、目的地が分かっていながらもこんな奥地まで迷い込ませられるラミア族の幻術にマイルスは身震いした。あの時、ヤグードの話を思い出さなかったら・・・。道も随分と拓け、2人の前に見覚えのある扉が現れた。しかしここはカギを使わないで開けることができ、その奥は廃船へとつながっていた。
「ここが俺らがアジトとしている場所だ。他の奴らももう着いてるみたいだな。」
クルタダが甲板へ乗り込むと仲間と思われるコルセア達が集まってきた。パっと見る限りではワスードの兄ムティーブ、ついさきほど岩陰にいたミスラ、エルヴァーンの男女、真面目な出で立ちのガルカが確認できた。
「どういうつもりだぃ?クルタダ。部外者を2人も連れ込むなんて。」
エルヴァーンの女性が声を荒げた。
「落ち着いてくださいよズィーハさん。ワスード君も悪気があってきたわけじゃなさそうですし。」
エルヴァーンの男がズィーハをなだめ、クルタダのほうを向いた。
「アズナーフの言うとおりだ。話くらいは聞いてやろうじゃないか。」
クルタダは笑いながらワスードの肩をポンっと叩いた。するとオドオドしていたワスードの目つきが変わり、
「ボクを海猫党に入れてほしいんだ!頼むよ、クルタダさん!ズィーハさん!。」
それを聞いたズィーハは大笑いした。ムティーブも少し困った顔をしているが、クルタダだけは違っていた。
「そうか、じゃあコルセアにとって”必要なもの”を俺らに見せてみな。ナシュモの西門をでて浮沼を抜けた先にタラッカ入江という船の墓場みたいな場所がある。そこへ行ってみるんだな。その間に俺らもやらなきゃいけない事があるしな。」
マイルスは話に聞き入っていたが、”タラッカ入江”という言葉のときにズィーハがクルタダへ何か言おうとしたのを見逃さなかった。そこには何があるというのだろうか、そんな事を考えているときにガルカが口を開いた。
「クルタダさん、子供も相手もいいが例の件・・・やはりムティーブを助けに行くというのが先に皇国に知られていたようだ。」
「やっぱりそうか。不滅隊に先回りをされたときにおかしいと思ったんだ。スパイが混じっている恐れがあるね。」
ズィーハがそう続けた。
「まぁその事は海猫党で解決しなきゃならないしな。ワスード、君は自分のやるべき事をやるんだ。」
心配そうな顔をしていたワスードを見て、クルタダは彼にそう言った。少年はウンっとうなずくと駆け足で元来た道をもどっていった。
「あの・・・マイルスさん。」
今までだまって聞いていたムティーブがマイルスのほうへ近づいてきた。
「あいつからいろいろと話は聞きました。もしよかったらワスードのそばにいてやってくれませんか?無理は十分承知しています。」
それを聞いたマイルスはニッコリ微笑んで、
「彼を無事皇国へ送り届けないと親父さんにシュトラッチをおごってもらえませんからね。安心してください、最後まで付き合うつもりですから。」
そう言い残しワスードのあとを追ってマイルスは走り出した。
「では私も引き続き調査に行ってきますので。」
ガルカはクルタダに軽くおじぎをして船をあとにした。3人が見えなくなった後、クルタダは立ち上がりフゥっと一息ついて船員達へ問いた。
「じゃあそろそろ・・・俺らも動くぞ。準備はいいな?」
「はい!」