アラパゴ暗礁域から浮沼へもどり、ナシュモへとマイルスとワスードは向かっていた。
「ふぅ・・・、そろそろ町へ到着ですね。ワスード君。」
丸一日近く動き続けていたため、マイルスは疲労を隠し切れない様子であった。しかし、ワスードの真っ直ぐな眼差しは疲れをまったく感じさせる事はなくすでに今から行くことになるだろう「タラッカ入江」の事だけを考えているようだった。黙々と歩き続けた二人は無事にナシュモへ到着した。そこでマイルスは半日ほど町で体を休めようと提案した。ワスードも一度は反対したものの、どっと疲れがでたのかすぐに眠ってしまった。
背負っていた大鎌と鞄を置き、寝ているワスードに毛布をかけた。瘴気のせいで衰退したナシュモの町には宿屋などあるはずもなく、二人はノマドモーグリの近くで野宿することとなった。
時間の感覚を忘れさせるほど霧のかかるこの町でどれくらいの時間がたったのだろう、マイルスはうとうとしていたがなかなか寝付くことができずにいた。そのとき、とてつもない覇気ともいえる気配が彼を包んだ。意識もはっきりしていなかったためか、金縛りにでもあったかのように動けなくなってしまった。すると目の前に人影がかすかに見え、その人物はマイルスになにかを語りかけはじめた。
「君のちか・・・・・・・いに、この・・・・・・宝じ・・・・みに。きっ・・・・になる。」
マイルスの前に何かを置き、その影がスッと消えるとマイルスは意識がなくなった。
「・・・・・さん・・・・・マイルスさん!。」
ワスードの呼びかけでマイルスは目を覚ました。
「もう・・・、そろそろ入江に行こうよ!早く見つけてクルタダさんを驚かせるんだから。あとこれ、ここに置いてあったけどマイルスさんのでしょ?無用心だなぁ。」
ワスードが手に持っていたのは黒い石のアミュレットだった。それを受け取ったマイルスは首をかしげながらもそれを身につけた。
「ああ、悪かったね。準備をしたらさっそく向かおうか。・・・・それにしても昨日のは夢じゃなかったのか・・・。」
二人は支度をすませるとナシュモの西門から浮沼へ。そこには昨日通った場所とは思えないほど別格の不気味な雰囲気が漂っていた。少し歩いたところでワスードがマイルスに問いかけた。
「ねぇマイルスさん。クルタダさんが言っていたコルセアに”必要なもの”ってなんだと思う?。」
「さぁ・・・、私は今まで騎士の道を突き進んだりはずれたりしていただけですから。船長の名前すら知りませんでしたし。」
「クルタダさんが持っていた派手な銃があるでしょ?ベテランのコルセアなら皆持ってる”ヘキサガン”っていうものなんだって兄ちゃんが言ってた。きっと入江でそれを見つけろって事なんだよ。」
「ふむ・・・暗礁域にあれだけ廃船があったんですし、その銃も期待できそうですね。」
にっこりとマイルスが笑うとワスードの顔もぱっと明るくなった。
草むらをかきわけ、魔物を避け、沼をこえた先に大きな墓場が姿を現した。その後ろにはうっすらと洞窟のようなものが見える。
「きっとあの奥がタラッカ入江だね。しかしまぁ・・・よくもここまでうようよと。」
マイルスは失笑した。それもそのはずだ。墓場内には骨やら悪魔やらがうごめいていた。
「どうしよう・・・。せっかくここまで来たのに・・・。」
ワスードは顔色が一転、暗くなってしまった。するとマイルスは鞄から剣と盾を取り出し、
「ここは私が奴らの注意を引きつけましょう。なに、心配は無用ですよ。さぁ行きなさい!。」
少年は洞窟をひたすら走った。マイルスの事は心配だが彼の考えを無碍にしないために。走って走って・・・その先に光が射しているのに気がついた。ワスードの前に拓けた地形と廃船、いくつもの横穴があらわれた。廃船の中や入江の岩陰を何度も転びながら”目的のもの”を探し回った。すると横穴の近くにある廃材の下に薄く光る物を発見した。
「はぁはぁ・・・きっとあれだ。やったよマイルスさん!」
ワスードはそのあちこち汚れていて銃口が割れているヘキサガンを手に取り、後ろを向いた。しかし今まではそこに立っていた騎士の姿はなかった。すると横穴の奥から何か話し声が聞こえる。
「なんだろう・・・こんな入江で・・・。まさかラミアじゃないだろうな・・・。」
気になった少年は洞窟の奥へと進んでいった。