ピトレスクでクレープシュゼットを | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

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こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

その日の京都での宿泊先はホテルオークラ京都だった。
京都ホテル時代からこのホテル内にあるフランス料理店ピトレスクはワインの取り揃えといいサービスといい京都一だという評判を聞いていた。
その日は同行者の誕生日ということもあり夜予約をして訪れた。
あることを楽しみにしながら…



地上17階から京都の街並みを一望できるのは素晴らしかった。



まずは、ピノノワールの比率の高い濃厚で香り高いシャンパーニュをお願いする。



最初に鮎のフリットが出された。

ホクホクとしていて頭からいただいてしまう。



続いて米沢牛のローストにパルミジャーノがかけられた料理が出された。

肉が実に軟らかくジューシーで美味しかった。



そして、加茂茄子を使った夏らしい一皿が出され、



魚料理はスズキとハーブを効かせたグリーンのソースのものが出された。



肉料理は鴨を使った料理だった。

クラシックなソースも良かったが、なにしろ鴨自体が実に美味しい。



デセールはまずプラムのソルベを使ったチャーミングなものが小さなカップに入れられて提供された。



さて、これからが本日のメインイベントである。

クレープシュゼットだ。

クレープシュゼットは、元々フランス料理店で供される古典的なデセールである。

今や伝統的かつ本格的なレシピでクレープシュゼットを作ってくれるレストランは極めて少ないのではないだろうか。

昨年のクリスマスの時にトゥールダルジャンで本格的なクレープシュゼットをいただいてから私も同行者もその魅力に取り憑かれたのである。

以前から宮ノ下富士屋ホテルや富士急ハイランドリゾートにあったトップ・オブ・ジパング等でその心躍るパフォーマンスを何度も味わってきたのだが、トゥールダルジャンの見事なクレープシュゼットを味わってみて他のレストランでも味わえないかと考えていたのだ。

そのためにはまずそれを提供するメーテルドテル等の服装が大切である。

ホテルオークラ、ピトレスクのサービスマン奥西氏の服装がまさにそうだった。

その服装を見た瞬間、これはやってくれると確信した。

案の定、トゥールダルジャン以上のパフォーマンスを見せてくれたのである。

まず、銅製のフライパンにバターをたっぷり放り込む。

そして、角砂糖を2個取り出し、オレンジとレモンの表面を角砂糖でそれぞれゴシゴシ擦って香りを角砂糖に移す。

バターが溶けたら、コワントロー、グランマルニエ、キルシュヴァッサーの順に丁寧に入れて洋酒の香りを移す。



次に、そのフライパンの上でオレンジを螺旋状に剥き始める。



そして、他の客もいるのに、突然照明を消して、その螺旋状のオレンジの皮に温めたコニャックを注ぎかける。

すると、青い炎が走るのだ。



その後、空中でオレンジの実を切り、フライパンの中に入れていく。



最後にはそれをじっくり煮込み、



皿に盛りつけ、自家製の美味しいグラス・ヴァニーユを上に載せて、クレープシュゼットが完成するのだ。

このクレープシュゼットは飛び切り美味しかった。

あれ程洋酒を使っているのに、一切酒臭くないのた。

その味わいとそのパフォーマンスは、追随するものはないと思われたトゥールダルジャンのクレープシュゼットを抜き去ったのである。



その後、コーヒーとともに、



ミニャルディーズも楽しむ。



実に素敵な誕生日の夜となったのである。