嗚呼 アルゼンチンタンゴの切なき馨り | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

ジャン=ピエールの霧の中の原風景

こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

北野通りを散策していたら興味深いお店の前を通りかかった。

よく見ると看板にはキタノサーカス・タンゴカフェと書いてある。


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蔦の絡まる建物の二階に上がり扉をあけるとダンディな男性がサーベルを握っていた。

店内には板張りのダンスフロアーがあり、あたかもエットーレ・スコラのル・パルの世界のようである。


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アルゼンチンタンゴの切ない調べが流れていた。


普通のカフェを営業している雰囲気ではない。

どうしてこのお店にいらっしゃったのとそのオーナーらしき方に質問された。

私の父がアルゼンチンタンゴが好きだったので、そのことを思い出し心惹かれて訪れたという旨の話をした。

そしたら、このお店のオーナー福野輝郎氏は、「そうですか。それは、ようこそいらっしゃいました。お話ししましょう。」とおっしゃってくれ歓待してくださった。


福野さんは時間をかけてびっくりするほど香り高く美味しいコーヒーを作ってくれた。

そして一緒にコーヒーを飲みながらいろいろな話をした。


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外国の都市の話。

フェリーニやヴィスコンティやファスビンダー等ヨーロッパの映画の話。

ジャンゴ・ラインハルトのジプシーギターやジプシーバイオリン等音楽の話。

イタリア未来派やロシア構成主義やドイツ表現主義等アートの話。

福野さんはアルゼンチンタンゴを教えているだけではなく、芸術家との親交も厚い。

モダンアートの有名な作家やブライアン・イーノ等の音楽関係者等と…

かつてここはアートギャラリーで様々な芸術家のアジトのような存在だったようだ。

奥にはクラシックな手作りの立派なピアノが置かれてあった。


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以前エリック・サティの最後の弟子に関係する女性のピアニストがここで演奏するために福野さんが買い揃えたそうである。


私の父の影響で私は幼い時からアルゼンチンタンゴを聞いていた。

その中でもラ・クンパルシータという曲は何回も聞いていて耳から離れない。

そのことを話したら、福野さんは最高の演奏者の演奏を聞かせてくれた。


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むせびなくように切ないが情熱的な演奏である。

しばし歓談した後、私に約束がこの後あったので、お名残り惜しかったがおいとました。


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福野さんは素晴らしい方だった。

またも今回の旅行でこんな素敵な方とお知り合いになれて私は幸せである。


そして、このお店キタノサーカスは神戸の異国情緒そのものを表象している空間であった。