ホテルオークラの香り(フレンチトースト) | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

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こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

ホテルオークラのフレンチトーストを食べにオーキッドルームを訪れた。
私にとってオークラのフレンチトーストの香りはホテルオークラそのものである。
これはホットケーキと言えば神田須田町万惣の店内で焼かれるホットケーキの香りを連想するのと同じだ。
昨日は昼下がりにオーキッドルームに着いた。
席に着いてからフレンチトーストは15分程で焼きあがる。
朝食だとフレンチトーストとフルーツサラダのセットになっているが、ティータイムのフレンチトーストは二切れが基本になっている。
フレンチトーストの一切れはかなりのボリュームがあるのだ。
アフターヌーンティーのセットも一緒にと考えたが、お店の方のアドバイスも聞いて紅茶だけお願いすることにした。
紅茶はイギリスの名門テイラーズ社の茶葉から好きなものを選ぶことができる。
究極のブレンドティー、アフリカの茶葉、単一エステート(農園)のもの等、魅力的なものがたくさんある。

薔薇の紅茶にしようか最後まで迷ったが、ミルクティーに合うということとフレンチトーストにヴァニラが入っているという理由からヴァニラの紅茶を選んだ。
当然ミルクティーの用意をしてもらう。


私はミルクティーの作り方になぜかこだわってしまう。
イギリスの上流階級のサロンではミルクを後に入れるだろうが、私はミルクを先に入れる庶民的な飲み方のほうが好きである。
それも常温の牛乳に限る。

温めたティーカップに常温の牛乳を適量注ぎ、その中に砂糖をスプーン二杯近く入れよくかき混ぜる。
その後に熱い紅茶を注ぎこめば美味しいミルクティーができあがる。
後にミルクを入れるのとは格段に味と香りが違ってくる。

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さて、テイラーズ社のヴァニラの紅茶でこのミルクティーを作り一口飲んでみる。
ヴァニラの香りに身も心も包まれる。
ミルクティーの色も理想的な色合いだ。


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あまりの美味しさにしばし陶然となる。
その上お店の方のサービスがたいへん素晴らしい。
紅茶ができるまでの手際のよさ、気配り、客の立場に立ったサービス、どれも心がこもっている。
さすがにオークラが日本一のサービスが受けられるホテルと外国人の宿泊客に言われるだけのことはある。
席に着いて紅茶を選んだ後すぐにセットされて紅茶を5分蒸らしてくれる。

フレンチトーストができるまでまだ間があるのでよろしければめしあがってくださいとサービスでデセールまで出してくれた。
茶葉も時間がたったらもう一度一から入れ直してくれ、カップも新しいものに替えてくれる。

さて、フレンチトーストが焼きあがった。
バターと卵とミルクと小麦の素晴らしい香りで辺りが満たされる。


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いつ見ても惚れ惚れするような焼きあがりだ。
フレンチトーストは大きな自家製の食パンを八等分にし、卵・牛乳・ヴァニラを溶いたものに一昼夜浸けておく。
それを客の顔を見てから焼くのである。
オークラのフレンチトーストには砂糖は入っていない。
別皿にメープルシロップとバターが盛られ、好みでそれをつけて食べる。

フレンチトーストの中身は硬めのプリンやクラフティのようにプルンとしている。
フランスではパン・ド・ベルビューなどがそのような状態であるが…
熱々のフレンチトーストにナイフを入れて食べる。

最初は何もつけずに、次にバターを少し添えて、最後にメープルシロップをたっぷりかけて食べる。


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至上の幸福を感じる。
その時、オーキッドルームの壁を隔ててすぐ隣のサロンでピアニストが酒と薔薇の日々を弾き始めた。
ワインが飲みたくなった。

そのことをお店の方に伝えるとソムリエがやってきた。
リストを見るとソーテルヌをグラスで出してくれるようだった。
グランクリュのシャトー・ラ・トゥール・ブランシュ1996も魅力的だったが迷わずシャトー・ド・マーユ1981をお願いした。


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オークラのワイン庫で30年以上寝かされたソーテルヌである。
色は濃い黄金色で味は品のいい甘さと酸のバランスがとてもいい。
先程食べ損ねたデセールに手をつける。


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赤や黒の果実がたっぷりと入った秀逸なデセールだった。
黒スグリ、赤スグリ、ブラックベリー、グリオットが一杯詰まっている。
下に敷かれているそれらを混ぜて作ったムースもジュレも絶品だった。
そこにこのソーテルヌである。


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至福の時がぐるぐると回っていく。
隣から聞こえてくるピアノの調べ、エリック・サティのジュ・テ・ヴとともに…