ルーフタワーでKW(仮)

ルーフタワーでKW(仮)

再開局後、第一の目標だった1KW免許は無事にクリアしました。
今は、古い無線機のレストア?が面白くてたまりません。
こつこつ勉強し、失敗しながら少しずつ経験値を貯めています。
そんな過程を個人的な備忘録として記録していくブログです。

Amebaでブログを始めよう!

当時は憧れの的だったIC-71。
うちのローカルでもいくつかの局が使っていた。
もちろん、絶対数でいえば、ハンディ機(AM-3D、RJX-601、TR-1200などなど)の方が圧倒的に多かったはずだけど、なにしろ高嶺の花だったから強く印象に残っている。
金のない中学生同士で、「どこそこの何とか局は71使ってるで」「ホンマに?誰それもそうやで」という会話もよくしたけど、最後は「ええなあ~。欲しいなあ~。お年玉貯めて・・・も無理やなあ」で終わってたな。
当時でもAMで10W出せるリグは珍しく、大多数は出力が1~3Wのハンディ機だったから、IC-71を使ってる局の電波は飛びきり強く感じたものだった。

で、お察しの通り今回もなぜか手元にIC-71があるのだ。
「電源コードがないため動作確認できません。完全ジャンク扱いで」というもの。
「ジャンク」と「ジャンク扱い」では意味が違うし、「完全」が頭に付くともうわけが分からなくなる(^^;;
とにかく「不動品だと承知の上で入札してね!クレームは一切受け付けません!」ということなんだろう。
もちろんこちらはそんなこと百も承知だから、黙って入札。
他にそんなモノ好きもいなかったのか、送料を入れても「ひとけたの前半千円」でゲットすることができた。


届いたのはこちら。
IC71_front IC71_rear 
 

一見したところ、外観はまあ年代相応といった感じだけど、特に手荒に扱われた形跡はない。
大きな傷、へこみや塗装の剥がれなどは見当たらないし、ツマミが欠けていたり、あちこちにサビが浮いていたり、ということもなさそうだ。


あと、使い込まれた71によくあるのが、いわゆる「52の焼け」というもの。
71のメインダイヤルの上には、送受信のプリセレクターの表示板がある。
(プリセレクター自体は、「DRIVE」のツマミを回すと、送受信部のドライバー段のバリコンが機械的に連動して(糸掛け式のダイヤルだ)同調される仕組み)
この表示板は白色のプラスチック板でできていて、ちょうど「52MHz」の文字の裏あたりに、ダイヤル照明用のランプが取り付けられている。
長年使いこまれた71では、この照明ランプの熱でプラスチック板が焦げ、茶色に変色していることがあるのだ。
これを修理するのは至難の技で、基本的には表示板を何かで自作して交換するしかない。
ちょうどいい素材があればできなくはないけど、分厚すぎると光が透過しなくて暗くなっちゃうし、薄すぎるとすぐにまた焦げちゃうし。
交換作業自体も結構面倒だから、「52の焼け」がないものに越したことはない。
幸い、この71はそんなに使いこまれていたわけではないようで、表示板も十分きれいな状態だ。


ざっと見た限りでは、まずまず程度良好(外観の話ね)のモノに当たったようで、ラッキーだったかも。
さて中身は?

このブログ、読み返してみると、リグの話は6mのもの、それもAM用についてが圧倒的に多いなあ。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、やっぱり自分が開局した当時のリグ=自分がもっともワクワクドキドキしていた頃のリグの印象は、いつまでも忘れないのかもしれない。
まあ、それが今や完全に絶滅してしまっていて、QSOする相手がいるなどどこを探してもいない、というなら単なる昔話、思い出話にしかならないんだけど、6mのAMの場合は「かろうじて」今でも相手がいるからね。
たとえ週に一度のロールコールで、MC局と一言二言交わすだけのQSOだったとしても、実際にそのリグを使ってQSOができる、というだけで価値があると思うのだ。
だって、いくら新品同様にピカピカに整備され、完全に動作するリグだったとしても、コレクションとして棚の飾りになっているだけじゃ何の意味もない(少なくとも無線機としてはね)でしょ。


そういう意味で、6mのAM局が完全にいなくなってしまったら、そうしたリグを整備する意味もなくなってしまうのだ。
はてさて、この楽しみもあと何年続くことやら・・・。
とぼやいていても仕方がない。
それまでの間は、自分にできる方法で、6mのAMの灯を消さないよう少しでもお役にたつことだ。
例えば、こうして古い古いリグについて、今さらながらにブログで取り上げてみるとか。
あるいは、実際に自分で整備したリグを、活用していただける方にお譲りするとか。


ということで、今回のテーマは井上のIC-71です。
IC-71manual 

6mの黄金期を語る上で、絶対に忘れちゃいけないこのリグ。
まさに、今さら?って感じなんだけど、なぜかこのブログでは今までちゃんと取り上げてなかったな。
言わずと知れたベストセラー機で、当時の金のない中学生ハムにとっては憧れの的。
OMさんが使う「大人のリグ」で、自分には手が届かないもの、という風に思っていた。


ちなみに1969年発売で、当時の新品価格が52,500円だった。
大卒の初任給が32,400円(!)の時代だから、今なら30万円以上に相当するだろう。
中学生にとって高嶺の花だったのも当たり前だ。
余談だけど、自分が開局した1974年の初任給は67,400円で、たったの5年で倍以上になってるのに驚く。
その時のRJX-601の価格が34,000円だったから、今だと10万円弱か。
やっぱり、無線はお金のかかる趣味だったわけだ。


前振りだけでここまで引っ張ってしまいました。
71の話は次回から。

ということで、特にレストアらしい作業をするまでもなさそうなTR-1200。
当たり前だけど、「痛くない腹は探らない」のが鉄則だから、パネルのシルク印刷を消さないように(^^;;そっと汚れを取って、各端子類とリレーの接点を掃除してやれば完成だ。


そうそう、メインダイヤルの遊び、というかガタが多いのがちょっと気になっていたのだが、これはダイヤルの取り付けネジが緩んでいたのが原因だった。
このネジ(メインダイヤルの中心部分)はちょっと特殊なタイプで、スナップリング・プライヤーみたいな工具が必要だ。
注意して増し締めすると、ガタがなくなって操作感が格段に良くなった。
またまたRJX-601との比較になるけど、ことメインダイヤルのバックラッシュや操作感については、TR-1200の方が良好。
ギア比的には601の方が大きいので、微妙なチューニングがしやすそうなんだけど、いかんせんバックラッシュが多め。
メインダイヤル自体も、TR-1200の方が大型だしね。


あと、手を入れるとすると、VFOの発振周波数ずれくらいかな。
本来は36.0~38.5MHzのはずだけど、カウンターで確認すると若干低い方にずれていた。
これを合わせこむにはTC1とL9を調整すればいい。
低い方はコイル、高い方はトリマーで規定の周波数に合わせるだけなので、何度か繰り返してやればOK。
(アナログのAM/FM機、しかもポータブル機だから、トラッキングとか細かいことは気にしない)
まあ、6mの全盛期ならともかく、今現役復帰させたとしても、多少の周波数ずれなんて問題になるわけもないので、今回はパスすることにした。


以上でとりあえず作業は完了!
日本のアマチュア免許がアメリカのような包括免許だったら、早速このリグでロールコールにでも参加するところなんだけど。
TSSの保証認定を受けて、総通に変更申請をして・・・と考えると、どうしても面倒くささが先に立ってしまう(^^;;
やっぱり、どこか嫁ぎ先を探すしかないかな。


それはともかく、こうやって周りを暗くしてランプを付けると、緑色に浮かび上がる周波数表示が美しい。 
TR-1200_night 

以前書いた井上のAM-3DやIC-501もそうだけど、この頃のリグの照明やディスプレイには、アナログ的な暖かさと色づかいの妙が感じられて、今どきの味気ないディジタル表示とLED照明にはない魅力を感じてしまう。
ディジタル時計よりもアナログ時計が好きな自分にとって、単なる数字の点滅と羅列よりも、くるくる回転して、行ったり来たり上下する文字盤の方が性に合ってるのかもしれない。


それになにより、40年前、ワクワクしながらマイクを握り締め、リグにかじりついていた自分の姿が、アナログ・ディスプレイの向こう側に見えるような気がするのだ。

さて、送信部のチェックの続き。
残念ながら手元にTR-1200用に接続できるマイクがない。
回路図を見ると、通常の(ローインピーダンスの)ダイナミック・マイクでよさそうなんだけど、コネクターが3Pの特殊なタイプなのだ。
TR-1200_miccone 

オークション等では、このマイク端子を4Pの一般的なコネクターに交換してあるのを良く見かける。


ちょうど手元に4Pのコネクターがあったので、交換しちゃおうかな?とも思ったんだけど、せっかく無改造で程度の良い個体なので、できれば手を加えたくないなあ。
ということで、とりあえず変調がちゃんとかかっているか確認するために、自作の2トーン発振器を接続してみた。
ダミーロードにつないで送信し、FT-DX5000で受信すると、特に歪んだりすることもなくきれいに変調がかかっている。


万全を期すなら、マイク・アンプ部のケミコン(カップリング・コンデンサ)くらいは最低限交換しておきたいところだけど、実際にマイクを接続して音を聞いてみてからにしよう。
と思っていたところにヤフオクで見かけたのが、こちらのマイク。
TR-1200_mic 

実は、同じTRIOのTR-7100の付属品として出品されていたものだ。
本体は全くのジャンク品だし、今さら利用価値もないので、まさに「マイクに本体が付属してきた」という感じ(^^;;


このマイクを接続してモニターしてみたところ、ほんのわずか変調が浅めのような気もする(気もする程度)けど、了解度含め音質的には問題なさそうだ。
手持ちのRJX-601と比べてみると、どちらもきれいなAM変調ながら、TR-1200の方が少しおとなしめ?というかお上品な音に聞こえる。
ローカル・ラグチューなどには向いてそうだけど、弱い信号をぎりぎり拾うときなどは、601に少し分があるかもね。
まあ、601は出力も3Wだから、実戦ではもっと差がつくか。


そう思うと、1200は不運なリグだったとつくづく感じてしまう。
この業界では新参者の松下が、いきなり?殴りこんでこなければ、こちらがベストセラー機になっていてもおかしくなかったのにね。


ということで、ひと通りの動作確認は終了。
特に不具合もなく、年代物としては当時の性能や外観をよく保っている方だという印象を受けた。
何より、無改造なのがありがたい。
この状態ならほとんど手を入れる必要もなく、清掃さえきちんとしてやれば十分に現役復帰できるだろう。
問題は・・・QSOする相手がいないことかな(^^;;

TR-1200とRJX-601のスペック比較。


TR-1200
周波数:50~52.5MHz連続可変(VFO発振周波数:36~38.5MHz)
電波型式:AM/FM
変調方式:AM=励振段・終段コレクタ変調/FM=可変リアクタンス変調
終段/入力電力:2SC614/12.0V2W
送信出力:1W
不要輻射強度:不明
受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン
中間周波数:第1=14MHz・第2=455KHz
受信感度:AM=2uV時S/N比10dB以上 FM=2uV時S/N比20dB以上
選択度:AM=5kHz以上 FM=15kHz以上/-6dB
動作電圧:DC13.8V
消費電力:受信時?・送信時700mA
使用乾電池:単2形9本
内蔵アンテナ:ロッド式1/4λホイップ
外部アンテナ接続端子:M型接栓
JARL保証認定登録番号:T7
外形寸法:185(W)×64(H)×235mm(D)
重量:3Kg


RJX-601
周波数:50~54MHz連続可変(VFO発振周波数:29~33MHz)
電波型式:AM/FM
変調方式:AM=終段コレクタ変調/FM=可変リアクタンス変調
終段/入力電力:2SC1306/12.0V6W
送信出力:3W/1W(切換方式)
不要輻射強度:-60dB以上
受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン
中間周波数:第1=21MHz・第2=455KHz
受信感度:AM=1.5uV時S/N比10dB以上 FM=1uV時S/N比20dB以上
選択度:AM=5kHz以上 FM=30kHz以上/-6dB
動作電圧:基準DC13.5V(DC11-15V)
消費電力:受信時40mA・送信時700mA(3W)・550mA(1W)
使用乾電池:単2形9本
内蔵アンテナ:ロッド式1/4λホイップ
外部アンテナ接続端子:M型接栓
JARL保証認定登録番号:M1
外形寸法:190(W)×65(H)×230mm(D)
重量:2.2Kg(本体のみ)