№1 テナーを凶器に「極悪非道・殺人鬼」《スティーヴ・グロスマン(ts)》 | 壊滅的刺激的・体感できるジャズノート

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Jazz?! 『何を聴くか??』では無い。
 好きなモノを聴く。好きなアルバムを買う。コレでは勿体無い。
 例えば、1人のジャズマンのアドリブ変化をズ~~と追う。
Jazz『何を聴くか?』では無い。『どう聴くか!』が大事。 

追い詰められ、げ場を失った精神状態が・・・。

切羽詰った感情でテナーがえ続ける。

テナーを器にした「威嚇・暴力・殺人者」のように。
①『ボーン・アット・ザ・セイム・タイム』(77)
《Born At The Same Time/Steve Grossman》
スティーヴ・グロスマン(ts)、ミッシェル・グレイラー(p)、

パトリース・カラティーニ(b)、ダニエル・ハマー(ds)。

針を下すや、金属を破断するような鋭い音。
特に、高域の音には参った。鼓膜を激震させ、ピリピリと悲鳴を上げるのが分る。
グロスマンはテナーサックスを器にした殺人者。
あまりにも暴力的な音。り倒す音。
チェーンソーで肉体を切り刻む凄まじさ。

それは、鋭く太い音質とか、フレーズがどうの・という基準では計れない。
コルトレーン的、オーネット・コールマン、エリック・ドルフィー・・・、
誰とも比較は出来ない。一、グロスマンの音としか表現出来ない。

追い詰められ、げ場を失った精神状態を、感情をそのまま音に封じ込める。

そんな切羽詰った音のテナーがえ続ける。
間を空けることも無く、雪崩の如くフレーズが覆い被さる。
フュージョン界から脱却したグロスマンのこの1枚。
多くのアルバムの中でもこんな演奏は他に無い。
J.コルトレーン・スピリッツを継承する70年代・質ジャズがここにある。


ジャケットのツラ構えは、知的哲学者の風貌。だが、演奏はその真逆。
し、暴力、殺人鬼の看板を背負った極悪非道顔負けのテナーマン。
この1枚を聴き倒すには、度胸と強靭な精神力そして体力が要る。
そんな覚悟で望まないと、心身ともにロボロにされる。