BABYMETALは日本的か(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日38日は、2017年、KORN6月からのアメリカ西海岸公演5日分に前座として参加することが発表された日DEATH

 

redditCensus 2019の回答者が67か国に及ぶことからわかるように、BABYMETALのファンは世界中に広がっている。

その中で、好きな曲No.1は「メギツネ」で、振り付けが好きな曲でも「メギツネ」は、「CMIYC」に次ぐ2位、MVが好きな曲でも「メギツネ」はダントツのNo.1だった。

1151名の回答者のうち日本人は13.4%だから、残りは日本語や日本文化を詳しく知らない方々である。

だから、BABYMETALのギミック「神」であるFOXGODが、日本の庶民の信仰を集めるお稲荷さんであるとか、その本名宇迦之御霊は御饌津(みけつ)の神で、三狐はBABYMETALそのものだとか、別名は伊勢神宮では天照大神に食事を捧げる外宮の豊受大御神にほかならず、伏見稲荷に祀られたお母さん神大市比売は、アメノウズメの後身で、音楽と舞踊の神であるであるとか、義理のお父さんが旅行と芸能の神、猿田彦であるといったことは当然知らないだろう。

そもそも、日本神道について、外国人はほとんど何も知らない。

日本人は、神道を自然信仰、アニミズム(多神教)の素朴な価値観だと思っているが、外国人は知識のある人でも、基本的には汎アジア的な祖先崇拝の宗教であり、第二次世界大戦では、サムライ、ハラキリの伝統の上に、天皇のために死ぬという狂信的な兵士を生み出すもととなったと思い込んでいる人が多い。

仏教は、戦前、鈴木大拙がアメリカへ渡り、『大乗起信論』英訳や英文の解説書『大乗仏教概論』など、禅に関する著作を出版して禅ブームを作ったし、国際連盟事務総長だった新渡戸稲造は『Bushido』で、武士の価値観を広く欧米に知らしめたが、神道については、包括的な解説書がなく、国家神道=「侵略戦争」をもたらした天皇崇拝のファシズムだというGHQによる思い込みだけが欧米に広まってしまっているからである。

その呪縛は1980年代ごろまで続き、日本人の中にさえ、GHQ的神道観が浸透していたが、さすがに現在は神社へ行くのは右翼だと考える奴はほとんどいないだろう。

また、来日した観光客が、日本の神社仏閣を訪れ、神社と仏教寺院の違いを知ったり、日本文化の根っこにある自然信仰を学んだりすることによって、徐々に中国文化や儒教文化と、日本神道が全く異なった価値観にあることを知るようになった。

そういうもろもろのことを含みつつ、2019年現在、BABYMETALで一番好きな曲は「メギツネ」であると考える海外ファンが多いのである。

これは、海外のファンがBABYMETALをイメージするとき、「日本的である」と考え、さらにそれを好んでいるという証拠だろう。

確かにBABYMETALはギミックとして「影絵のキツネさん」を「メタルの神」に設定したが、メジャーデビュー時までことさら「日本的」であろうとしたわけではない。

意図的に「日本的」なのは、今思えば海外進出を考え始めた2013年のメジャーセカンドシングルとしてリリースされた「メギツネ」だけであり、むしろ「日本的」なものから離れ、欧米メタル市場を目指した「アイドルとメタルの融合」だったのではなかったか。

それが、いつのまにかBABYMETALは「日本的」であり、「そこがいい」という評価になってしまった。

いったいどうしてなのか。

BABYMETALのどこが「日本的」なのか。

そもそも海外の人たちにとって「日本的」とは何なのか。

海外の人たちの日本のイメージは、かつての「サムライ、フジヤマ、スシ、ゲイシャ」ではなく、「ソニー、パナソニック、トヨタ、ホンダ、スズキ」のハイテクジャパンである、という話は、バブル期によく語られた。

ロボット的な官僚組織に管理される近未来社会としての日本のイメージは、ルディ・ラッカーらのサイバーパンクSFに投影され、欧米人の日本人への偏見は、かつてのオリエンタリズムではなく、テクノオリエンタリズムへと変わった。このイメージを代表して欧米で大人気になったアーティストがYMOだろう。

それが、バブル崩壊を経て2000年代になると、日本への肯定的なイメージは後退する。

2005年には、中国で反日デモが起こり、韓国ではソウル市内の中学生による、日本に爆弾を落としている絵、日本人を猿に見立てた絵、日の丸を焼いている絵が、地下鉄駅のプラットホームに展示されたこともあった。(Wikipedia「反日」の項)

しかし、隣国によるこのような日本=悪い国のキャンペーンは、韓国人による少女像設置などを除いて、欧米に広まることはなく、2010年代からは「クールジャパン」の名のもとに、再び日本文化に関する肯定的な評価が高まっていく。

そのイメージは、ハイテクイメージだけでなく、より伝統的なものづくりの姿勢や美的価値観にまで及ぶもので、2011311日の東日本大震災の際にも、暴動や略奪が行われず、整然と物資補給の行列に並ぶ日本人の姿が、かえって評価されることになった。

BABYMETALは、確かに欧米人にとって、現在の日本を代表するアーティストになっている。YMOが「日本的」であるという自意識がなかったと同じように、BABYMETALも、自意識とは裏腹に、日本代表であることは間違いないのである。

(つづく)