とんび 見て来ました
2022年 日本 139分 原作:重松 清1960年代から令和に至る、ある頑固者の父とその息子の物語広島県備後市を舞台に、彼ら親子と二人を取り巻く人情深い近隣の人たちとの心のふれあいを描いた感動作ここからネタバレ満載のあらすじと感想です父の名は運送業社に勤め配送を仕事としている市川安男喧嘩っ早くて後先考えず行動するお騒がせ男で、絶えず問題を起こしてはいるが、律儀で正義感が強く、皆から慕われている町内の人々からは愛情を込めて、「ヤス」と呼ばれるヤス/阿部寛ヤスは子供の頃に親と生き別れ、家族の愛を知らずに育っていたが、優しく美しい美佐子と結婚し、息子旭(アキラ)も生まれ、幸せな日々を送っていた息子アキラと妻美佐子/麻生久美子しかし、ある日落ちて来た積荷の下敷きになりかけたアキラを身を持って助けた久美子が、ヤスの目の前で帰らぬ人となるそこからヤスの男手一つでの子育てが始まる確かに大変な日々だったが、ヤスの周りにはアキラを実の子のように共に育ててくれる人々がいた薬師院住職 海雲/ 麿赤児ヤスにとっては親代わりのような人物、海雲和尚はアキラにとってはおじいちゃん代わりだアキラがわがままにならないようにと、和尚は優しくアキラを諭すヤスには「お前は海になれ」と説いた海は雨が降っても嵐が来ても全部受け入れて、何も無かったかのように存在しているお前もアキラにとって、そんな存在になれと美佐子がアキラを庇って亡くなったことをアキラに知られたくないヤスは、美佐子は自分を庇って死んだとアキラに嘘をついていたその真実をアキラに後に手紙により教えてくれたのも海雲和尚だった海雲がもう臨終が近いと言う時、それまで何度も見舞いに行くように父から言われていたアキラはやっと見舞いに訪れ、そこでもう眠るばかりの海雲の姿を見て、もっと早く見舞いに来れば良かったとアキラは後悔の涙を流す市川旭(アキラ)/北村拓海そんなアキラをヤスは慰める後悔の無い人なんていないと同じような後悔の念を持つ身として、ヤスのこの言葉は救われる思いがした忙しいのによく見舞いに来てくれたとアキラの見舞いを喜んでくれたのは、ヤスの一番の友人で海雲の一人息子照雲とその妻幸恵照雲/安田顕幸恵/大島優子彼らは子供がいないのもあるが、アキラの事を本当に我が子のように可愛がり育ててくれたアキラが不幸な出来事により母を幼くして亡くしていながら、素直に育ったのは、もちろんヤスの愛情もあるが、薬師院の一家の支えも大きいそれから小料理屋を営むたえ子もヤスとアキラにとって、とても有難い存在だたえ子/薬師丸ひろ子ヤスがなじみ客である事もあるが、アキラを本当によく可愛がってくれて、自身アキラのお母さんの真似事を出来て幸せだったと口にするたえ子には事情があり、生まれたばかりの娘を残したままで婚家を去った過去があった後にその娘泰子が結婚する前に一目お母さんに会いたいと、たえ子を訪ねて来た泰子は心優しい女性に育っていたこの母子の再会のシーンが美しくて、心打たれる素敵なエピソードで心に残るこんな良い子に育ててくれた元夫とその家族も素晴らしいと思う同じように子供のころに自分を捨てて、他に家庭を作った父が危篤だから会いに来てもらえないかと義弟から連絡をもらい、危篤状態の父に会いに行くヤスのエピソードも、涙なしでは見れなかった父に捨てられて苦労ばかりのヤスだったのに、意識も無い父にヤスは「生ませてくれてありがとう」と手を握りながら礼を言う義弟にも手土産持参で礼儀正しく対応するヤス一言の文句も言わず、父に感謝を述べるヤスヤスの心根の美しさがひしひしと伝わって来るシーンだった父がずっとヤスの事を気にしていたことを義母の連れ子である義弟から聞くヤス少しは気持が晴れただろうかヤスはアキラにはどうしても厳しくて、つい叱り過ぎたり手を出したりやり過ぎてしまうアキラに正しい道を歩いてもらいたいという思いが強いのだろうでもついやり過ぎて反省してはケーキを買ってくる父(笑)アキラは早稲田大学に晴れて合格二度と家には帰って来るなと故郷をあとにするアキラを突き放すヤスだが、誰よりもアキラの合格を喜んでいたのはヤスだったもっと素直に喜んであげたら良いのにそれがヤスなりのアキラへの励ましということはよく判るけどほとほと不器用な親父さんやがて編集社で働くようになったアキラに思い立って東京まで会いに行くヤスアキラは父が会いに来てくれたことを喜ぶが、その傍らには恋人の由美がいた由美と結婚したいと言うアキラだったが、由美は7歳も年上でバツイチ、おまけに前夫の息子も連れていたヤスは烈火の如く起こってその結婚を反対したそこでまたひと騒動あるのだが、結局親は子には勝てない照雲やたえ子達のフォローもあって、ヤスには新しい家族が増えることになるそして、幸せな年月を経て、ヤスも安らかに旅立つ日を迎えるアキラの妻となる由美/杏 息子健介原作もドラマも見てなくて、この映画が初見です良い人たちがたくさん出て来て、ストレスの無い温かなお話でしたヤスがトラックを運転しながら口ずさむ、昭和の流行り歌の数々歌い手の名前も顔もわからないけど、聞き覚えのある曲ばかりで、とても懐かしかったですちょっと長すぎたけど・・ここからは俳優さんたちについて書きたいと思います皆さんとても良い俳優さんたちで安心して見れました父親役を演じた阿部寛さんは破天荒な人物の設定ながら、阿部さんご自身の生真面目さが見え隠れするものの(笑)大熱演でした愛されキャラ感にあふれてました北村拓海君は声も綺麗で滑舌も良く、とてもセリフが聞き取りやすくて有難い良いお父さんではあるけれど、かなり難しいところのあるヤスに対する複雑な感情をよく表現されてました大好きな安田顕さん、やっぱりお上手さすがと思いました奥さん役の大島優子さんも、とても良かったです薬師丸ひろ子さんの演技はいつもほんと程好いお芝居ぶりで、心打たれます広沢さん役の濱田岳さん、いつもながら良い味出されてましたサイコー義弟役の田中哲司さんも良かったです最後にアキラの母親役を演じられた麻生久美子さんほんっとお綺麗で儚げで、美佐子さんにぴったりでした昭和の香り漂う、人情溢れる父と子の物語背景となる素晴らしい景色の数々にも癒される良い作品でした