天然痘と闘った実在の医師の物語 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


日本には勢いのある監督、溢れんばかりの才能を引っ提げて登場した未来ある映画監督がたくさんいる。
一方で、叩き上げで映画界の階段を着実に上がって監督になったベテランも存在する。
黒澤明監督の意志を受け継ぐ監督と言えば、小泉堯史監督である。


黒澤明監督の遺稿を映画化した 「雨あがる」でデビュー。
去年亡くなった親友も出演していた。
あれから10ヶ月が過ぎた。


寺尾聰さん演じる主人公は、物静かで穏やかだが、剣の達人。
その性格が災いして、出世出来ない。
それを支える妻との愛の物語である。


「雪の花~ともに在りて」
江戸時代に流行った天然痘と闘った実在の医師と妻の物語である。
どこか「雨あがる」と重なるではないか?


実際、主人公が我慢の限界を超え、剣を交えるシーンがある。
「雨あがる」の名シーンを思い出させる。
ところが、この映画、どうもしっくり転がっていかない。


困難にぶち当たって、それを乗り越える主人公。
人の命を救うために奔走する主人公。
それを見守り、支える妻。


それでも何か、観てるこちら側に刺さる瞬間がないのである。
小泉監督らしいゆったりした、人間を追求するドラマがやけに緩慢に見えて仕方ないのだ。
「雨あがる」のラスト、溜飲を下げたあの馬が疾走するシーン、そういうものが残念ながらこの映画にはなかった。