タクシーの中、ワンシチュエーション | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


タクシー運転手を主人公にした映画は、数々ある。
マーティン・スコセッシの「タクシードライバー」やソン・ガンホ主演の「タクシー運転手~約束は海を越えて」、ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」等、優れた作品も多い。
日本映画にも、「月はどっちに出ている」や「ちょっと思い出しただけ」がある。


「ドライブ・イン・マンハッタン」は、そんな中でもかなりトライアルな作品だ。
何せほとんど全編、タクシーの中だからだ。
登場人物も二人だけ。


ワンシチュエーションの会話劇。
タクシーは動き続けるが、室内にそれほどの展開はない。
二人の心の変化を堪能する100分間だ。


ダコタ・ジョンソンがアート性のある映画を熱望し、プロデュースも兼ね、ショーン・ペンに声を掛けた。
俳優として積極的ではなかったショーン・ペンが、脚本を読んで承諾した。
二人の演技に集中する贅沢な映画が実現したのである。


「デッドマン・ウォーキング」や「ミスティック・リバー」、「ミルク」等で高い評価を得て来たショーン・ペンが、どこにでもいる運転手を演じる。
ダコタ・ジョンソン演じる客の心を開き、二人は少しずつ打ち解ける。
お互いの真実が明らかにされていく。


映画上級者向けの映画と言っていい。
ショーン・ペンもしくはダコタ・ジョンソンのファンか?
映画的展開は皆無、なかなかハードルが高いのだ。


大人のための映画。
こだわりの詰まった映画。
肩の力の抜けたショーン・ペンの極上の笑顔が見られる映画。