こころなくして、そして | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


世の中には、善意の数だけ悪意も溢れている。
他人は信じられない言葉を発し、発しないまでも心のどこかでは歪んだ感情を持っている。
「ミッシング」


幼女が失踪する事件が発生。
母親は、ネット上で育児放棄と誹謗中傷される。
マスコミも面白可笑しく騒ぎ立てる。


幼女の両親は、娘が一刻も早く戻って来るよう手を尽くす。
だが、夫婦間でも意見は違い、衝突は絶えない。
最後に娘と一緒にいた、母親の弟にも疑いの目が向けられる。


マスコミや世間に振り回される家族。
嘘の情報や嫌がらせに失望しつつも、娘が戻って来ると信じて。
残酷に月日は流れるが、諦めたら終わり。


映画を観ている我々は、この家族の必死な様を目撃する傍観者となる。
観てて苦しかったり歯痒かったり、無茶な行動にイラッとしたり。
「空白」や「犬猿」、「愛しのアイリーン」の吉田恵輔監督が冷静に仕掛ける。


サスペンスというより、家族の物語。
狂わんばかりの石原さとみさんの演技も凄いが、森優作さん等、脇の俳優達もリアルだ。
何より、キャストの顔が普通でいい、監督が無料ワークショップを開いて選んだ面々だそう、なるほど納得。


人が、人により傷つけられ、心を壊してゆく。
小さな戦争がいくつもいくつも。
誰も得しない戦争により、人の人生が犠牲になる。