白石監督、囲碁を斬る! | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


白石和彌監督のファンである。
衝撃作や問題作を次々生み出すものの、作品の評価は高い。
稀有な存在だ。


「碁盤斬り」は、碁の達人の復讐劇である。
白石監督、初の時代劇。
碁という、決して映画的ではない地味な題材を監督がどう料理するのか、楽しみだった。


例えば阪本順治監督がかつて「王手」で将棋をアクション映画以上に、ハラハラさせたように。
和田誠監督が「麻雀放浪記」で、麻雀に絡む人間模様を描いて傑作にしてしまったように。
白石監督なら、囲碁をスペクタクルにしてくれるはず。


デビュー作「凶悪」から一貫して、ただならぬ人間の深い闇を見せてくれた。
「彼女がその名を知らない鳥たち」や「ひとよ」、「狐狼の血」、新作を発表する度に我々の心を抉り続けて来た。
作品のクオリティーは、師である若松孝二監督を遙かに超えたろう。


あの時代には恐らく生きていた、不器用で真っ直ぐで、それ故に辛酸を舐める主人公。
草彅剛さん演じる浪人を見ていると、白石監督の世界にはあまりお目にかかれない 登場人物。
昔ながらの時代劇ファンには、しっくり来るだろうが。


白石監督の毒々しさや激しさは影を潜めているので、物足りないと思う方もいるかもしれない。
展開も王道で分かり易く、面食らうかも。
その分、時代劇ドラマや映画で育ったオールドファンの期待には、十分応えてくれる。


囲碁に 馴染みのない方も多いだろう。
亡き父は、自分に囲碁を教えてくれた。
将棋はやれるようになったが、囲碁は理解出来なかった。


学んで指せるようになれば、晩年の父相手に親孝行が出来たかもしれない。
人と人が向かい合う空間が貴重だ。
そんなことを思った。