「シン・仮面ライダー」の熱もまだ冷めやらぬ。
今夜はデヴィッド・ボウイ。
興奮するぜ。
その前に。

随分昔の話だが。
インディーズ映画のオーディションを受け、ある役を得た。
もう嬉しくてね。
情夫の役で、暴力的で、女の娘に性的行為をする役だ。
その女の子が主人公で、大人になり、トラウマに苦しむ。
テーマもしっかりしていて、社会的メッセージ性もあり、本も良かった。
だが、直前でスポンサーが降り、映画は撮影すらされなかった。
そういう経験が何度かあり、映画がポシャって涙を飲んだ痛みは忘れられないものだ。
いつか監督から連絡が来るんじゃないかと待ち続けても、そこから撮影が始まった作品はない。
もちろん完成されない映画の補償なんてない。
「Winny」は、2002年にコンピューターソフトウェアWinnyを開発した金子勇氏が不当逮捕され、無罪を勝ち取るまでの戦いを記録した映画である。
この映画でも、有名な俳優さん達はたくさん出演しているが、潤沢な予算を使えているわけではない。
大手ではないインディペンデント映画である。
完成までに長い道のりをかけている。
そんな中、この映画には本物が宿っている。
実際の金子勇氏に重なるように18㎏増量した東出昌大さん。
実在の 弁護士を演じた三浦貴大さん。
登場シーンから他を圧倒する優秀な弁護士、吹越満さん。
それを1つにまとめた松本優作監督。
法廷シーンも実にリアルだ。
実際の当時の弁護士が、現場でリアルを追求した。
裁判を傍聴するお笑い芸人、エキストラの阿曽山大噴火さんの存在感も抜群。
前作「ぜんぶ、ボクのせい」も松本監督らしい力強い映画だったが、よりパワーアップ。
金子さん自身の私物も使用し、部屋のパソコンや書籍もリアルに拘ったという。
出る杭が打たれる社会。
天才開発者も、7年間の貴重な時間を不当に奪われた。
ある日、思わぬ形で人生が一変する。
袴田事件だって、奪われた歳月は57年だ。
その苦しみは、奪われた当人しか分からないだろう。
風化され、忘れられたWinny事件。
自分はコンピューターに詳しくないアナログ人間なので、何が正しくて何が間違いなのか、未だよく分かってない。
ただ、一人の人生が大きく狂わされたことは、事実だ。